お天気は少々ぐずつき気味ですが、かなり暖かい日曜日、山形市のテルサホールで、山形交響楽団第291回定期演奏会を聴きました。少し早めに出かけたのだけれど、近隣の駐車場は満車で入れず、日曜の午後ということでかなり人出が多そうです。ダメ元でテルサホールの駐車場に行ったらまだまだ空いていて、ラッキー(*1)!
開演前、しばらくぶりに音楽総監督の飯森範親さんのトークを聞きました。印象的だったのは、日本ではこうやって演奏会を開催できていますが、これは世界的にみても珍しいのだそうな。欧米では感染者数が多く演奏会がなかなか開けないうえ、入国して2週間、さらに帰国して2週間の隔離期間がありますので、海外での演奏会は行かないようにしているのだそうです。たしかに、指揮者がテレワークというニュースは聞いたことがないかも(^o^)/
さて、本日のプログラムは、
- モーツァルト:3つの行進曲 K.408
- ハイドン:ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII:11
- ブルックナー:交響曲 第0番 ニ短調 WAB 100
飯森範親 指揮、山形交響楽団、三原未紗子(Pf)
というものです。
1曲め、モーツァルトの「3つの行進曲」。ステージ上には小さめの編成で椅子が並び、左から第1ヴァイオリン(6)、第2ヴァイオリン(6)、ヴィオラ(4)、チェロ(4)、右後方にコントラバス(2)、正面奥に前列がフルート(2)、オーボエ(2)、その後方にホルン(2)、ファゴット(2)、さらにその後方にバロック・ティンパニとトランペット(2)という配置です。編成が小さい分、演奏には小気味良い切れ味の良さが感じられ、楽しいものです。特に、第2曲と第3曲ではティンパニの連打から始まりますが、なるほど行進曲だと納得。でも響きは威勢のよいミリタリー調ではありませんで、ホルンやトランペットはナチュラルタイプのまろやかな響きですし、弦楽の軽やかさと優雅さが印象的なものでした。
2曲め、ハイドンのピアノ協奏曲は、正面にピアノ、指揮者を囲んで左から 6-6-4-4-2 の弦楽5部に Hrn(2) と Ob(2) が加わるのみ。いたってシンプルな楽器編成です。
今回のソリスト三原未紗子さんは、深い赤色のドレスで登場。第1楽章:ヴィヴァーチェ、第2楽章:ウン・ポコ・アダージョ、第3楽章:ハンガリー風ロンド、アレグロ・アッサイ。ハイドンがエステルハージ候の楽長として働いた最後の10年間に作曲された充実した作品の一つということですが、飯森さんの話では、ハイドンがモーツァルトと親交があった時期に書かれたもので、おそらくは彼の人気のあるピアノ協奏曲を承知の上での作品だろうとのことでした。なるほど、そう言われると、当時としてはこういう音楽がもてはやされていたということもあるでしょうが、いかにも軽快で明るい音楽です。
聴衆の盛大な拍手の中でも、「ブラヴォー・タオル」を掲げている人が目立ったらしく、三原さんも嬉しそうでした。アンコールは、シューベルト(リスト編曲)「糸を紡ぐグレートヒェン」。これも良かった〜!
ここで20分の休憩です。
定期演奏会の後半は、ブルックナーの交響曲第0番。
楽器編成と配置は、10-8-6-6-4 の弦楽5部、正面奥に、Fl(2), Ob(2), その奥に Hrn(4), Cl(2), Fg(2), 最奥部に Timp. と Tp(2), Tb(3) というものです。今回はライブ録音も行っているようで、目立たないように配慮されてはいますが、興味がある人には録音マイクが立っているのがわかります。
第1楽章:アレグロ。弦の細かな刻みに始まり、低弦やホルンなどすでにブルックナーらしさが満載です。拡大された編成もあって、800席ほどのホールを埋めるような音の洪水です。そしてブルックナー休止、その後の厳粛な総奏。
第2楽章:アンダンテ。弦と木管が交互に奏され、響きが優しい。木管のアンサンブルもいいなあ。例えば Hrn とVcにVnとCbが加わるように、音色と高低の対比が印象的ですが、もしかしたらオルガンのストップのような効果でしょうか。独特の響きは、必ずしも満たされていない響きに別の楽器が加わることにより、十全さを感じさせる効果があるようです。長い全休止の後に、静かな弦のゆっくりした終わり。
第3楽章:スケルツォ、プレスト〜トリオ、緩やかに、かつ穏やかに。金管も加わり、速いテンポで駆け回るようなスケルツォ。全休止の後の、ゆるやかな優しい表情がいいなあ。再び冒頭に戻るように主部が反復されます。
第4楽章:フィナーレ、モデラート〜アレグロ・ヴィヴァーチェ。序奏の後に主部が奏されますが、この楽章に限らず、強奏ー全休止ー弱音で優しい響きというスタイルが共通です。ブルックナーはこのパターンが好きだったのかも。確かに、これはオルガンでは難しい。弱音で優しい響きというのは、オルガンにはできない、オーケストラという楽器が奏でる喜びであり、楽しさ、嬉しさがあったのかもしれません。Timp. の強打の後に続く、弦が細かく繰り広げる音型は、奏者には負担が大きいのでしょうが、実に豊かなものに感じます。終楽章らしい盛り上がり、高揚感よりも、むしろ「ああ、いいブルックナーを聴いたぞ!」という満足感のほうが大きい演奏会でした。
考えてみると、飯森さんと山響によるブルックナーをずっと聴き続けてきて、第0番まで来たことになります。ミサ曲も聴いたし、詩篇も聴きました。CDも、飯森+山響のブルックナーの交響曲録音は全部手元に揃っています。今回の録音も、発表されるのが今から楽しみです。
(あとは大編成を要求されるナンバーのものですが、これも権利関係の問題を解決し例えば仙台フィルと合同するなどして、ぜひ録音してほしいものです。)
(*1):駐車料金は800円でした。近隣駐車場の料金水準よりも高めなので、よそに流れているのかもしれません。