志情(しなさき)の海へ

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3月15日、「創作舞踊の会」(第11回創作舞踊大賞入選作品)を観た。午前中雨で気になったが、興味深かった!

2025-03-17 00:56:16 | 琉球・沖縄芸能:組踊・沖縄芝居、他
創作舞踊に入選された方々の作品についての講評を読むと、審査員の方々がよく注意深く鑑賞し、選考したことがうかがえた。

 まず大賞の島尻紀希作「遊びくぐつ」は満を持した創作舞踊への取組みに思えるほど、踊り手の上原崇弘(くぐつ師・人形遣い)と堀川裕貴(くぐつ・人形)の創作舞踊(振付)は安定した出来栄えで、かつコミカル、面白かった。背の高い上原さんとまるで実物の人形のような愛らしい堀さんの所作(振り)が、リアルなくぐつとくぐつ遣いに見えた。
 作詞作曲は大城貴幸さんによる四曲構成ー「伊集揚口説節」「遊び柳節」「遊び人形節」「遊び美らさ」。
 大和で見てきた操り人形を国王の前で披露するという設定での創作。作品の構成が分かりやすく、音曲もチチグトゥ(聴事)だった。
 いわば文楽や操り人形などを観た琉球のユカッチュがその人形と人形遣いの芸を王の面前で披露するという筋書きである。
 いかにものクグツはリアルに見え、ゼンマイを巻く音も効果音として挿入され、人形が勝手に踊り出すのは演劇のようでもあり、単に創作舞踊を超えている。若い堀川さんは、まさに人形として演じ、踊った。
 「遊び美らさ」の終曲でくぐつ遣いとくぐつが一緒に踊るのだが、それは幻想領域だろうか。人形は人形だから、人形と人間の思いが一つになって踊ったのである。
 思うに、国王に実際の操り人形と人形遣いのやり取り(文楽など)を模倣してみせたというからくりでいいだろうか。人形を人間に演じさせてみせたというのは、コミカルではあったが、ある面不気味でもある。

 人形と言えば、以前島袋光祐氏の創作舞踊、人形をテーマにした作品を観たことがあるが、人形が独自にケースから出て踊るのである。フィクションとしても、幻想としてもありえる構想で、面白かったと記憶している。
 人形には人間の魂が宿るようなシュールさが伴っている。

新崎恵子さん、奨励賞の「音の響むまでぃ アー躍れ」は10人の女性舞踊家の登場で迫力がありにぎやかな群舞だった。闊達な動きに目が吸い取られた。講評で隊列の作り方は面白いが、演舞そのものの変化が乏しく単調になったとあり、共感した。入羽は踊りながら退場すると余韻が残ると示唆しているが、そのように修正されたこの作品の良さをまた観たい。

喜屋武愛香さん、奨励賞の「マブイ詩」は戦後80年を記念する「沖縄戦」をテーマにした作品、アイディア、構成は分かりやすく胸に迫ってきた。しかも戦後80年を象徴する老女の登場である。回想シーンに登場する4人の女性たちのうめき、戦時中の残酷さの場面は、難しい表現で、モダンダンスのような振付けにも見えた。例えば、ひめゆり舞台の少女たちのようにモンペ姿だったらどうだったのか、琉球舞踊の所作で苦しみを地獄を表象できるだろうか、などの疑問も浮かんだ。戦争を舞踊で表出することは、厳しい。ステージの上でのたうち回るわけにもいかないのか~。床に転がっても手の振りで奇怪さ、不条理を演出はできそうだが~。

その間に老女が蹲って両手で顔を頭を抱え込む手の動きに「ぞっと」した。両手のなまめかしさが苦悶する心、トラウマを表して余りある場面だった。あの光景は脳裏から離れない。喜屋武さんは創作組踊も作品として世に出した才能あふれる舞踊家だ。新たに練りなおした「マブイ詩」が観たい。
 最後の締めの場面(舞踊)は他界したかつての友たちとの楽しかった思い出だ。老女は若返って踊る。友と歓喜に満ちて過ごしたかつての思い出が生きる支えになる。友よありがとう。

大湾三瑠さんの佳作「露こころ」は、まず美しい衣装に魅了された。実際に筝曲を奏で、恋に身をやつす玉津の心情をテーマにしているが、創作舞踊の三部構成にもっと配慮したら良かった。「三曲の曲調が同じテンポで振り付けも単調で似通った」(講評)という点を配慮したらまた別の振付や曲調による物語の展開もありえるのかもしれない、などと感じた。

さて第二部の招待作品で最も目を見張ったのが、「老松」眞境名由苗作品だった。大胆な男性踊りの爽快さが感じられた。足遣いに個性があり、老松に例えられた眞境名由康のイメージがした。

 比嘉清子二代目家元の「仲島の浦」は、はじめて観た時のインパクトが強かった。仲島への哀愁が漂っている舞踊の良さは、丁寧な振り付けにあるのだと実感した。

〇 間 好子作 「うりずんの美童」は赤い手巾が印象的。
〇 眞境名佳子作「銭鳴りひゃー」は銭棒の音色がいいね。
〇 宇根新三郎作「胡蝶の舞」は6人の女性の群舞、演舞に工夫がほしい。

〇 玉城節子、金城美枝子両家元による「恋の花」は、民謡でも人気がある曲。
 士族男女の相思相愛の打組舞踊。80代の両家元に会場は温かいエールを送った。80代にして舞台に立つ厳しさも露呈していたが、身体芸術の老齢期の美とは~?



4
   ところで、ステージガイド3月号には不満がある。
解説では、創作舞踊のそれぞれの作品の歌詞が紹介されていない。
前回は、QRコードが提示され、そこから全作品の歌詞を確認することができた。今回は全くそうした配慮がない。舞踊は歌詞の中に作品のテーマが織り込まれている。ゆえに舞踊のテーマを理解する上でも必要だ。音曲と歌詞の兼ね合いも知りたい。創作舞踊に挑戦する上でも参考になりえる。


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