阿刀田高さんの本は20代頃によく読んだ。
正直短編は、あまり好みではない。気に入った本ならばずっとその中に浸っていたいと思う方なので…しかし阿刀田さん短編集は結構好きで、たくさん持っていたものだ。
ギリシャ神話や聖書を楽しく描いた短編集なども好きだった。
その中で、いつも思い出す短編があった。この人の書くものの特徴は、「奇妙な味」、ちょっと不思議な現象や、不気味な話も多い。テレビ番組の「世にも奇妙な物語」にも使われていることが多いのもわかる。
私の印象に残っていたのは、「味の幽霊」の話だ。最初の「糟糠の妻」が亡くなり、その後数年して成功した男性は若い美人の2度目の妻をもらい周りには羨ましがられている。ある日知り合いの人に招かれたパーティで、出てくる料理が覚えのあるものばかり、という体験をする。それは、苦労していた頃、前の妻がいろいろと工夫をして美味しく作ってくれた料理の味と同じだった、というもの。
断片的にしか覚えていなかったが、「奇妙な味」でありながらどこか、昔の妻に感謝している男性の暖かい話で、阿刀田さんの優しさ、のようなものが出ている気がして、気に入っていた小品だった。
しかしその短編のタイトルがわからない。どの短編集に入っていたのかも。
去年の夏帰省した時も全部調べてみたのだが、なかった。独り者になった時たくさん本を古本屋で処分したので、その時に一緒に持って行ってしまったのだろう。
思いついたのがネットで調べること。「阿刀田高 味 幽霊 亡くなった先妻」などのワードで検索をしてみるが、これがなかなかうまく行かない。そういうタイトルではなかったらしいがとにかく、覚えていないのでどうしようもない。考え付く限り検索し、阿刀田高の小説を沢山紹介しているWEBページがあって、やっとそれらしいものを見つけた。ちょっとだけあらすじが載っている部分でわかったのだ。短編集は「甘い闇」という名だった。
「奇談パーティ」・・・これじゃ全然わからなくても不思議じゃないな。「味」なんて言葉どこにも入っていないんだから。
早速Amazonで注文して読んでみる。
「奇談パーティ」は、今の妻と結婚した際の仲人の、昔の高校の恩師が「百物語」をするパーティを自宅で開く。そこで集まった人たちがひとつずつ、怖い話をし、ひとつずつ電気を消していく。最後の灯りが消えた時、列席者に関係ある幽霊が出る、などと恩師はいうのだが、そんなことはなくパーティは無事終わる。
しかし主人公は考える。幽霊はもう出ていたのでは、と。
パーティで恩師の娘さんが出してくれたオードブルやスープが美味しくて皆感心するが、それはすべて、亡くなった妻が作ってくれたものと同じメニュー、味であった。
美人でもなく今の妻とは比べ物にならない位冴えない妻だったが、お金をかけずに工夫する料理の味に関しては「私は自慢できるものがあるのよ」と言っているようだった。
そんな終わり方だった。
百物語のパーティだったことはすっかり忘れていたが、料理の内容まで覚えていたのでかなり印象に残った作品だったのだろう。
ニラを使った和風のような洋風のようなスープ、とか、納豆を使ったカナッペ、なんていうのは「変わってるけど美味しそう」と思って、ニラの洋風スープを作ってみたこともあった。
ニラなら中華風にするのが定番だろうけれど、洋風も確かに合うだろうな、と。
列席者の話の中には怖いものがあったが、この主人公の妻の幽霊は決して怖いものではなく、どちらかと言えば爽やかな感じがしたし、亡くなった妻を懐かしむ様子がいい「味」を出していて、四半世紀経って読んでみてもいい話だった。
こちらの「奇談パーティ」の方がずっと良い出来だと思うが、他に「香りの幽霊」と言うのもある。(これの後に思いついたのが「味の幽霊」だとご本人が書いていらしたはず)
時々、家に帰ってクローゼットに入ると、亡くなった母の香水の香りがする、と思う事がある。
むろんそれは、私の服が入っているのだから私の香りに決まっているのだが、同じフレグランスを使ったことはないのに同じ香りになるというのは、DNAのなせる技でも不思議な感覚がするもの。それも、香りがまったくしない、と言う事もあるのだ。ふつうは、自分の香りは感じないものではないだろうか。
母には、一人暮らしの父を見守ってほしいといつもお願いしているので、母は北海道に主にいるのだろうと思う。だが、時々私の様子も見に来てくれているのでは、と、香りを強く感じる時に考える事があるのだ。
正直短編は、あまり好みではない。気に入った本ならばずっとその中に浸っていたいと思う方なので…しかし阿刀田さん短編集は結構好きで、たくさん持っていたものだ。
ギリシャ神話や聖書を楽しく描いた短編集なども好きだった。
その中で、いつも思い出す短編があった。この人の書くものの特徴は、「奇妙な味」、ちょっと不思議な現象や、不気味な話も多い。テレビ番組の「世にも奇妙な物語」にも使われていることが多いのもわかる。
私の印象に残っていたのは、「味の幽霊」の話だ。最初の「糟糠の妻」が亡くなり、その後数年して成功した男性は若い美人の2度目の妻をもらい周りには羨ましがられている。ある日知り合いの人に招かれたパーティで、出てくる料理が覚えのあるものばかり、という体験をする。それは、苦労していた頃、前の妻がいろいろと工夫をして美味しく作ってくれた料理の味と同じだった、というもの。
断片的にしか覚えていなかったが、「奇妙な味」でありながらどこか、昔の妻に感謝している男性の暖かい話で、阿刀田さんの優しさ、のようなものが出ている気がして、気に入っていた小品だった。
しかしその短編のタイトルがわからない。どの短編集に入っていたのかも。
去年の夏帰省した時も全部調べてみたのだが、なかった。独り者になった時たくさん本を古本屋で処分したので、その時に一緒に持って行ってしまったのだろう。
思いついたのがネットで調べること。「阿刀田高 味 幽霊 亡くなった先妻」などのワードで検索をしてみるが、これがなかなかうまく行かない。そういうタイトルではなかったらしいがとにかく、覚えていないのでどうしようもない。考え付く限り検索し、阿刀田高の小説を沢山紹介しているWEBページがあって、やっとそれらしいものを見つけた。ちょっとだけあらすじが載っている部分でわかったのだ。短編集は「甘い闇」という名だった。
「奇談パーティ」・・・これじゃ全然わからなくても不思議じゃないな。「味」なんて言葉どこにも入っていないんだから。
早速Amazonで注文して読んでみる。
「奇談パーティ」は、今の妻と結婚した際の仲人の、昔の高校の恩師が「百物語」をするパーティを自宅で開く。そこで集まった人たちがひとつずつ、怖い話をし、ひとつずつ電気を消していく。最後の灯りが消えた時、列席者に関係ある幽霊が出る、などと恩師はいうのだが、そんなことはなくパーティは無事終わる。
しかし主人公は考える。幽霊はもう出ていたのでは、と。
パーティで恩師の娘さんが出してくれたオードブルやスープが美味しくて皆感心するが、それはすべて、亡くなった妻が作ってくれたものと同じメニュー、味であった。
美人でもなく今の妻とは比べ物にならない位冴えない妻だったが、お金をかけずに工夫する料理の味に関しては「私は自慢できるものがあるのよ」と言っているようだった。
そんな終わり方だった。
百物語のパーティだったことはすっかり忘れていたが、料理の内容まで覚えていたのでかなり印象に残った作品だったのだろう。
ニラを使った和風のような洋風のようなスープ、とか、納豆を使ったカナッペ、なんていうのは「変わってるけど美味しそう」と思って、ニラの洋風スープを作ってみたこともあった。
ニラなら中華風にするのが定番だろうけれど、洋風も確かに合うだろうな、と。
列席者の話の中には怖いものがあったが、この主人公の妻の幽霊は決して怖いものではなく、どちらかと言えば爽やかな感じがしたし、亡くなった妻を懐かしむ様子がいい「味」を出していて、四半世紀経って読んでみてもいい話だった。
こちらの「奇談パーティ」の方がずっと良い出来だと思うが、他に「香りの幽霊」と言うのもある。(これの後に思いついたのが「味の幽霊」だとご本人が書いていらしたはず)
時々、家に帰ってクローゼットに入ると、亡くなった母の香水の香りがする、と思う事がある。
むろんそれは、私の服が入っているのだから私の香りに決まっているのだが、同じフレグランスを使ったことはないのに同じ香りになるというのは、DNAのなせる技でも不思議な感覚がするもの。それも、香りがまったくしない、と言う事もあるのだ。ふつうは、自分の香りは感じないものではないだろうか。
母には、一人暮らしの父を見守ってほしいといつもお願いしているので、母は北海道に主にいるのだろうと思う。だが、時々私の様子も見に来てくれているのでは、と、香りを強く感じる時に考える事があるのだ。