ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

うさぎに芸をしこんだ能楽師(承前)

2009-02-13 00:38:19 | 能楽
いやはや、怒濤のような1週間でした。。と思ったら、あれ? 1週間ではなくてたった5日間だけだったの??

。。ぬえには1ヶ月ぐらいに感じたけれども、じつは数日のことだったようです。日曜に師家の師範の勉強会として催されている素謡会があり、その前後にはそれぞれ申合があり。そして火曜日と水曜日には幸清次郎先生のお会があり、ぬえは能『野宮』『杜若』『朝長』の地謡を勤めて参りました。この『朝長』が極重い習の「懺法」の小書付きでして、上演時間はなんと2時間半に及びました。秘伝の曲の上演の場に参加させて頂けるのはこの上ない光栄ではありましたが、なんせ足の痛かったこと。。

「懺法」は観音懺法という法要の雰囲気を作り出すために、またそれは同時に、それに引かれて冥界から現世までの道を歩んでくる朝長の魂の有様をも表現しているわけですが、それにしても囃子方が呼吸を計りながら、あれほど長大な間をとって最小限度の打音だけを響かせて、その静寂の間の中に表現を求めるというのは、なんとも日本的というか。。究極の演出法でしょうね。こういう精神に軸を置いた方法論は日本にしかないでしょう。

今年の中でも最も大きな催しの一つだと思うこの2日間を終えて、すぐまた翌日の水曜。。つまり今日は師家の稽古能の日でした。曲目が『六浦』『錦木』という、どちらも珍しい曲目のうえ、ぬえは『六浦』の地頭を任されていました。『錦木』の地謡(こちらは地頭ではなく末席)も謡ったうえでのことだったのですが、この多忙のさなかではありますが、まあ『六浦』はせっかく頂いた地頭の大役ですし、またもう一番の『錦木』も、珍しい曲であるからこそ、ここで暗記がおろそかで地謡を間違えたり、間を外すようでは いかにも平凡。そういう時、こういう曲だからこそ、以前からちゃあんと準備や研究をしておいて、それを発揮できるようにがんばりました~。まあ、結果は ほぼ。。の但し書きつきでしたが、一応の成果は出せたと思います。

さてこの数日の楽屋の中で、以前お話ししました うさぎにバンザイを教え込んだ囃子方の友人に会いまして、そしたら彼、「また新しい芸を教えました」とのこと(!)。今度の芸は「輪くぐり」なんだそうです。はあ。。ぴょ~んと輪を飛び抜けるのね~。。ぬえ家のマリモちゃんにはできないなあ。。

でもいろいろ彼と話をしていて、ぬえと違う点も発見しました。まず、彼のお迎えした うさぎさんは男の子なんだそうです。そうなのか。ぬえ家では過去にお迎えした子はみ~んな女の子~ (*^。^*)。

んで、彼の うさぎさんとのお付き合いの仕方が、「舎弟」「子分」として教育しているらしい。ん~、ぬえとずいぶん違う。ええっ??うさぎさんにマウンティングして、どっちがボスかわからせてから芸を仕込む。。?? んんん~~、ぬえ家では今のマリモちゃんも寒い夜は ぬえのおフトンの中にもぐりこんできて、一緒に寝ている、という感じのおつきあいの仕方なんだが。。

そんで彼の目標が。「いつか囃子を仕込んで、自分の代わりに申合に行かせたい」


それは無理だろう。。 (・_・、)