ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第22次支援活動<気仙沼市・登米市>(その7)~柳津虚空蔵尊さまで能楽ワークショップ

2014-06-20 11:34:59 | 能楽の心と癒しプロジェクト
【5月19日(月)】

さてこの日ワークショップを行わせて頂く予定になっている柳津虚空蔵尊さまですが、まず触れておかねばならないのは、お寺のシンボルとなっている大鳥居でしょう。同じ登米市の横山不動尊さまにも鳥居がありましたが、つい200年前までは普通だった神仏混淆の名残を色濃くとどめているのがお寺にある鳥居です。しかも柳津虚空蔵尊さまの大鳥居はあまりに巨大で一度見たら忘れられないほどです。あ~画像がない~

ご本尊であり、お寺の通称になっている(寺号は「宝性院」さま)伝行基作の虚空蔵菩薩像は秘仏で、なんと33年毎に開帳となるのだそうで、次回は再来年の平成28年だそうです。をを、再来年か。





虚空蔵菩薩像がご本尊というお寺は珍しいと思いますが、寺伝では大伴家持の言として同じく行基作と伝わる虚空蔵像はほかに福島と山口の2体があり、これらをして我が国の三大虚空蔵尊とした、とされています。

実際には福島の圓蔵寺の「福満虚空蔵尊」は寺伝で空海作と伝えられ、山口の湘江庵のそれはよくわかりませんでした。面白いのはこれらの三大虚空蔵尊を擁するお寺がある地名がそろって宮城県登米市津山町柳津、福島県柳津町、山口県柳井市にあることで、虚空蔵菩薩像が有名なお寺は茨城県東海村や三重県伊勢にもあり、また行基作の伝を持つ虚空蔵菩薩像は鎌倉や京都、新潟にもあるので、この家持が指摘したとされる三大虚空蔵尊への注目点は、むしろ「柳」という語にあるかもしれません。これは面白い発見があるのではないかと思いますね~。

さてこの日のワークショップは午後からで、お昼ご飯を「お寺cafe 夢想庵」で お蕎麦をご馳走になり(美味!)、さて準備に取りかかりました。

展示の装束は玄関前に飾り、床の間のあたりに面や楽器、扇などを並べます。今回も有料のワークショップなのでわざわざ衣桁を車に積んできましたが、やはり装束の展示は良いですね~





やがて開演。およそ40名ほどのお客さまが集まってくださいました。地元の登米市津山の方が多かったのですが石巻からも松島町、東松島市からもお客さまがお見えになった模様。またあとで聞けば仮設にお住まいの住民さんも何人か顔を見せてくださったそうです。

史さんのご挨拶に続いて笛のTさんの解説、能『羽衣』ダイジェスト版の上演、そうして能楽体験コーナーと続くのは仮設住宅でいつも行う方式です。











でもこの日は持参した面、装束、楽器の分量がかなり多めで、能を身近に感じて頂けたことと思います。





いつの間にか史さん、今日は笛に挑戦してました~



ちょっと時間は押し気味でしたが、最後にお客さまおひとりにモデルになって頂き、装束の着付け体験。仮設住宅での活動では、能の上演よりもむしろ体験コーナーに時間をとって、住民さんに1日遊んで頂くのですが、これまでいろいろな事を試してきましたが、ぬえの印象では装束の着付け体験が一番喜ばれますね。とくに仮設では震災で着物を流されてしまって、その後一度も着物に袖を通していない、という住民さんも多いですから。。





こうして今回も無事に活動を終えることができました。ミッション・コンプリート! 柳津虚空蔵尊さまでは秋頃にロマンチックな公演を行う計画が進行中です!

お土産買う時間が今回はなかったなー、というわけで、帰り道に石巻市の道の駅「上品の郷」(じょうぼんのさと)に立ち寄りました。ここは三陸道の「河北I.C」にほど近くて便利ですねー。農産物直売所やレストラン、コンビニのほか日帰り温泉や足湯まであるのです。石巻立町の仮設商店街に立ち寄れなかったのは残念でしたが、ここでお土産を買い込んで、夜あまり遅くならずに東京に帰り着くことができました~

                                  (この項 了)