ここちよげに、ここちよげに、冬の大空を一片の白い綿雲がふんわりふくらんで流れていく。
*
下から仰いで見ている老爺の目には、それがいかにもここちよげに見えている。
*
そう見ることで、老爺の目もまたここちよげになって細くなっている。
*
雲をここちよげに見たら、それで人間の目がここちよげにもなる、そこがまた不思議だ。
*
だったら、ここちよげになることは簡単なことだ、じつにシンプルなことだ。この手に乗らないでなるものか、と思う。
*
ふんわりふわり大空に浮かんでいた白い雲は、さて、何処を目指して行ったのだろう。
雲のヤツ、歓を尽くしたと感じて、中途ですんなり消えてしまったのかも知れない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます