「遠山かぶの粕汁」
主な伝承地域 米沢市
主な使用食材 遠山かぶ、打ち豆、各種野菜
歴史・由来・関連行事
「遠山かぶ」は、米沢市を発祥とする山形県の伝統野菜。その名前は米沢市遠山地区に由来しており、慶長5年(1600年)に上杉家が米沢市にやってきた時に持参した野菜。1800年ごろに上杉鷹山公が地元の産業を盛り上げるための策の一つとして、「だいこんは東の梓山(ずさやま)に、かぶは西山につくり、秋かぶは遠山に」とお触れを出しことから遠山で栽培がはじまった。
「藤沢かぶ」や「最上かぶ」など、県内には在来のかぶが数種あるが、白くて丸い品種は遠山かぶのみ。一般のかぶよりも風味と甘みが強く、肉質がかたいので煮崩れしにくいという特徴がある。一時は衰退の危機にさらされるも、この味を守りたいという有志が集まり、最後の種を持つただ一人の生産者を見つけ出したというエピソードがある。現在でも遠山かぶは「山形おきたま伝統野菜」の一つとして認定され、地元の生産組合がその種を守ろうと生産と普及に取り組んでいる。
「遠山かぶの粕汁」は、遠山かぶと雪深い米沢市ならではの食材である「打ち豆」が入った汁物であり、酒粕が入っているため、まろやかで身体もあたたまる。打ち豆は、さっと水に浸した大豆を木づちで打って平たくしたもの。乾燥させた豆は長期保存することができるが、火が通りにくいため平たくして調理しやすくしている。
ちなみに、同じく米沢市の伝統野菜の雪菜(ゆきな)は、遠山かぶと長岡菜などとの交配種の花茎といわれ、そのためいまでも年配者は雪菜のことを「かぶのとう」と呼ぶ。
食習の機会や時季
遠山かぶの収穫期は10月末から11月初旬で、「遠山かぶの粕汁」は寒い冬に食べるのが定番。ひと昔前、大豆の収穫時期になると家々の軒先で打ち豆をつくるのが習慣だったという。
飲食方法
遠山かぶと打ち豆を味噌汁仕立てにして、仕上げに酒粕を加えていただく。酒粕の量は、好みによって調整すると良い。
遠山かぶは実がかたい品種なので、冬も保存が可能である一方、そのかたさゆえに包丁できれいに切るのは難しい。そのため、包丁の角を使って、ひっかくようにして小さくするが、それを地元では“ぶっかく”という。通常のかぶと異なり、加熱にも時間がかかり、味も染みないため、前日の晩につくっておき、翌朝あたため直して、少し煮崩れる状態が一番美味しいという。
保存・継承の取組(伝承者の概要、保存会、SNSの活用、商品化等現代的な取組等について)
地元の飲食店では現在も「遠山かぶの粕汁」を提供している。いまでも各家庭でつくられており、遠山かぶは秋ごろから初春ごろまで八百屋で購入することができる。
*https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/toyamakabukasujiru_yamagata.html より
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