第120回 2016年3月15日 「変幻自在で心地よい~富山 高岡の金属製品~」リサーチャー: 吉木りさ
番組内容
金属なのに、紙のように薄くて柔らかいプレートが大人気。予約で2か月待ちのイッピンだ。手で簡単に曲げられ、サラダを盛る器や小物入れなど思い通りの形にできる。富山県高岡市で生まれた金属製品で、江戸時代半ばから盛んになった仏具作りの技が生かされている。さらに、仏具の素材の一つ真鍮(しんちゅう)で作られた抜群の手触り感のカトラリーなど、伝統を担いつつ、斬新なモノ作りに挑む高岡の職人たちに吉木りさが迫る。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201603151930001301000 より
富山県高岡市は400年の歴史を誇る金属加工業の街です。
高岡の金属加工業の中心は仏具作り。
江戸時代中期に加賀藩の奨励を受け、名工達が良質な仏具を生産。
江戸後期には全国に販路を広げました。
そして今、高岡では、仏具づくりの高い技術を活かして洒落た金属製品が続々登場しています。
斬新な発想が生み出す、高岡の不思議な金属製品の魅力に迫ります。
1.「すずがみ」(シマタニ昇龍工房)
「シマタニ昇龍工房」さんは明治42(1909)年創業した、鏧子(けいす)作り一筋の工房です。
「鏧子」(けいす)とは 読経の時など打ち鳴らす鉢型の梵音具で、布団状の敷物の上に置かれているものです。
一般の家庭にある「おりん」は小型の鏧子(けいす)です。
「鏧子」(けいす)は黄銅板を「金鎚で叩いて」、硬くなれば、焼き鈍して柔らかくし、また「金鎚で叩いて」焼き鈍し作業を数十回繰り返して作っていきます。
この「金鎚で叩く」技術により生まれたのが 「すずがみ」です。
高岡の金属加工業の中心は「仏具」作りでしたが、近年需要が減っているため、もっと一般的に使える新しい製品として開発されたのがこの変幻自在プレート「すずがみ」でした。
厚さ13㎜の錫板を何度も圧延機に入れ、少しずつ薄くしていきます。
0.8㎜まで薄くしたら、製品のサイズにカット。
しかしこれだけでは柔らか過ぎるので、金槌で繰り返し叩く「鍛金」をします。
錫の原子は本来、規則的に並んでいますが、叩くことで配列が乱れ、身動きが取れなくなり、繰り返し曲げることに耐えられる強さになるのです。
富山県工業技術センターで実験したところ、「鍛金」することにより、強度が1.15倍増していることが分かりました。
「すずがみ」はその名の通り、紙のように薄くて、折ったり、曲げたり、元通りに伸ばしたり、好きな形に、何度でも変えることの出来る錫商品です。
「ころ」という道具を使えば、縦や横、裏や表をコロコロと転がすだけで元の平らな状態に戻ります。
料理やお菓子を盛り付けたり、アクセサリートレイや花器としても利用できます。
シマタニ昇龍工房 富山県高岡市千石町4-2
2.「FUTAGAMI・鋳肌マドラー」(二上)
富山県高岡市は、全国の銅器生産の95%を占めます。
明治30(1897)年創業の真鍮鋳物メーカー「二上」(ふたがみ)が、「ジコン/JICON」や「高橋工芸」などでお馴染みのプロダクトデザイナー・大治将典(おおじまさのり)さんをデザイナーに迎え、平成21(2009)年に真鍮の生活用品ブランド「FUTAGAMI(フタガミ)」立ち上げました。
きっかけは、富山県総合デザインセンターが開催する金属のワークショップに大治さんが参加したことでした。
当時、大治さんは、デザイナー・山崎宏さんのイベント企画「センヌキ ビールバー」のための栓抜きのデザインを考えていました。
そこに技術指導に来ていた二上さんに相談をしたことが始まりです。
一方、これまで真鍮製の仏具を製造していた「二上」さん側でも、仏具の需要が減少し模索していたところでした。
大治さんは温もりを感じられる手触りにこだわったとおっしゃいます。
「真鍮」の製品は通常、研磨や着色によってピカピカに磨き上げるのが一般的ですが、鋳造(ちゅうぞう)したままのざらりとした質感の「鋳肌」(いはだ)を敢えてそのままの商品を作ることを提案。
但し、変色の可能性が高く、商品ごとに表情の差も出るためクレームのリスクが高くなる可能性があるため、産地ではタブー扱いされる製造方法でした。
「真鍮」(しんちゅう)
耐腐食性が強く、加工が比較的容易で、太古から建築金物、船舶金物、家具金物など、様々な分野で使用されてきました。
素材の持つ風合いが柔らかく、光沢も優雅で、美術工芸品や仏具などの素材としても長い歴史があります。
「真鍮」は使えば使うほど表面が酸化し、独特の味わいが出て、人と場所に馴染んでいく素材です。
「鋳肌カトラリー」の製造工程が紹介されました。
金属を型に入れて固める鋳造の技法で作ります。
まず「鋳型作り」では、原型を「珪砂」で包み込んで足で押し固めます。
一見、大雑把にも見えますが、力加減を細かく変えて、砂の密度を均一にしているそうです。
「珪砂」は細かな粒を使うことにこだわっています。
このことで、金属が冷えた後の「鋳肌」が繊細に仕上がのだそうです。
砂を固めたら一旦、型を開いて、砂を崩さないよう原型を真上に引き抜きます。
「鋳込み」の工程では、金属を溶かした1100度の「湯」を「トリベ」と呼ばれる工具を使って、4秒から5秒の一定の時間で型に注ぎ込みます。
成型したカトラリーの口に当たる部分を銀メッキして仕上げます。
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Toyama/TakaokaDouki_2 より
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