~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

田村響リサイタル

2008年10月10日 16時31分44秒 | ピアノ
昨晩、田村響氏のリサイタルを聴いてきました。

氏は1986年生まれ。お誕生日がきていれば22歳ですね。
数年前高校生でピティナの特級でグランプリを受賞されたことが記憶に残っていたのですが、昨年ロン・ティボー国際コンクール1位になられ、いよいよ世界に出ていかれたのだなあ・・と思っておりました。
テレビ等で拝見したことがあるのですけど、スケールの大きさを感じさせる演奏で、今回も期待しておりました。

プログラムは、当初は
バッハ「イタリア協奏曲」、ショパン「スケルツォ1番」、ベートーヴェン「テンペスト」、リスト「ダンテを読んで」、ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」
の予定だったのですけど、行ってみたら変更になってました。


<プログラム>

バッハ:イタリア協奏曲へ長調 BWV.971
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調作品31-2「テンペスト」
~~休憩~~
ショパン:スケルツォ第1番 ロ短調 作品20
リスト:<詩的で宗教的な調べ S.173>より 第3曲「孤独の中の神の祝福」
    <巡礼の年第2年「イタリア」 S.161>より第7曲 ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」

(アンコール)
メンデルスゾーン:無言歌集より「甘い思いで」
ショパン:子犬のワルツ
リスト:6つのポーランド歌曲 第5番「愛しい人」

『イタリア協奏曲』は小学校高学年ぐらいから割りによく弾かれる曲ですけど、いやもうこれは別モンでした。
これは「協奏曲」なのだ、とあらためて感じた次第。
1楽章はトゥッティ部分とソロ部分が見事に弾きわけられ、トゥッティといっても「せーの」でいっしょくたではなく印象的に内声が響かせられ、この規模の曲でここまで聴かせる力量にびっくりいたしました。
才能があるのは間違いのない事実ですけど、楽譜や時代への丁寧なアプローチ、(まだ若いのに)どこまでも音楽に真摯に仕える姿勢が伝わり、最初の印象は申し分なし。
2楽章というのは、演奏者の人間性が問われるところがあって、弾くほうにとっては大変こわい楽章なのですけれど、氏の真価はこういうスローな楽章でより発揮されるのではないかと思われる演奏。
ひとつひとつの音、休符、間、すべてに無駄がなく、無駄がないどころか、音のない時間により存在を大きく感じるという、まだ若いのに(・・・しつこいですね)巨匠の風格。・・・ほんとに大器です。すばらしい。

これならば、ベートーヴェンは期待です。楽しみすぎる・・

期待通りでした。
『テンペスト』の冒頭。このアルペジオってこんな音がでるのか、とめまいがしました。フォルテッシモで聴衆を脅したり、ピアニッシモで「どうだ!」と酔わせたりの作為もなく、バランスよく、楽譜に忠実に、しかし骨太に構成されたベートーヴェンでした。
『テンペスト』の2楽章って「う~ん、どんな曲だったっけ?」といまいち記憶に残ってなかったのですけど、昨夜の演奏で忘れられない楽章になりました。
暗い彷徨と希望の交錯するような世界・・・しつこいようですけど、田村氏は私の年齢のちょうど半分。私も老若男女プロアマさまざまなピアニストの演奏を聴いてきているので、「テクニックが凄い」くらいではたいして驚かないのですけど、こういう深い演奏に接すると、自分は今まできちんと精神年齢を重ねてきたのだろうか・・と自問せずにはいられません。
このレベルのピアニストになるには、子どもの頃から何時間もピアノを弾き続け、中学校くらいからは、本番と練習で学校に行く時間もないくらいピアノ漬けの日々を送っているはずなのですけど、ひとつのことを深く掘り下げて行く過程というのは、広く浅く知識を広げる、いわゆる「人間の幅をひろげる」以上の何かをもたらすのかもしれません。

昨夜は、転妻よしこさんとご一緒させていただいていたのですが、『イタリア協奏曲』ですでに隣席から「おお~~、すごい!いい!」という気が漂っており(笑)、休憩の時「よしこさん、こういう演奏お好きでしょ!私も好きですよ、いやあそれにしてもツボですよね」と声をかけたところ、はたしてよしこさんは大喜びされてました(爆)。ふたりしてさんざん盛り上がっていたら、前の席にすわっていた母娘連れが振り返って「・・・誰かと思ったら、仮装さんでしたか。おひさしぶりです」というオチまでついてしまいました。

後半プログラムは技巧的にも音楽的にも難易度の高いものだったのだけれど、技巧は当然としても、集中力とスケールの大きさにおいて圧倒的な演奏でした。
詳しくは・・ぜひ生で聴いてください、というところでしょうか。

田村氏は2月にはコンチェルトをされるようで、今日さっそくCMがテレビで流れてました。

それにしてもこの秋は「アタリ」の演奏会が続きます。夏に本番続きでヒーヒー言っていたごほうびだろうか、と勝手にうれしがってます・・・(笑)。