アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

署名ではデパートを救えない

2009年02月07日 | Weblog
  より良い物をより安く

 デパートに恨みなどありません。
 2008年の全国百貨店売上高(7兆3813億円)は、12年連続で前年実績を割り込み、1986年以来22年ぶりの低水準に落ち込んだという。
 一方、コンビニエンスストアは、7兆円台後半の売上高が見込まれるという。デパートがついにコンビニに負けることが確実。象がアリに倒されるような…。

 なぜデパートの売り上げが12年連続で下降線をたどっているか。還暦パパに言わせると簡単です。なにしろ卒論は、「消費者志向に関する一考察」。小売りと消費者については…知ったかぶりできます。的を射ているかどうかは別として…

 デパートの売り上げが落ち始めた12年前って、何がありましたか?
消費税増税(3%から5%に)。ヤオハン倒産。三洋証券破綻(証券会社の倒産は、これが戦後初)。 北海道拓殖銀行破綻。 山一證券破綻…これらのような重大なことが起こっていたのです。

 消費者のサイフと密接な関係を持つデパートは、大手証券や都市銀行の破綻から、即座に対応策を講じなければならなかったのです。しかし、あぐらをかいたままだったのです。
 そして、10年ほど、売り上げが下降の一途をたどったところでようやく慌てだした。
 駅前のデパート、地方のデパートは経営が困難になってきた。大手デパートのみがブランドの力で何とか踏みとどまってきたが…。現在は、高島屋、三越、大丸、伊勢丹など大手デパートでさえ、明日はどうなるかわからないギリギリの状態になっています。
 最大手の三越伊勢丹ホールディングスは、定休日を増やし、営業時間を短縮する。20億円の節約になるのだそうです。マジスカ?…定休日を増やすと、人件費や光熱費はたしかに節約できるが、客は来ないんですよねー?「売る」というデパート本来の使命を放棄してしまったのかな?それほど大変な経営状態。トンネルの向こうに、「民事再生法」の文字がうっすらと見えてきているようです。

 ここ数年のデパートの動き
1 店舗の統合
2 商品構成の見直し(店舗の独自性を出す)
3 経営統合(西武とそごう、高島屋と阪急阪神、三越と伊勢丹、大丸と松坂屋など)
 1は、巻き返しというよりむしろ撤退。2は、商品の多様性、専門性を追求したとしても、特化した専門ショップの域に達しない。だから、売り上げが伸びない。3については、身辺警護(買収されないように)でしょう。売り上げを伸ばすことに繋がっていない。 

 現代の消費者の志向は…
1 いいものを買いたい
2 同等品なら安いほうを買いたい
3 いいものが安ければ是非買いたい
 デパートは、なぜ売れなくなったか?消費者志向に合致していないからです。簡単なことです。

 三越は今年中に4店舗の閉店を発表しています。ここのところ、地方のデパートの閉店が次々と発表されています。
 地方都市では…「無くなると寂しい」「地域のシンボルですから」「閉店しないで」という声が今更ながら上がり、駅前では、「署名活動」が行われています。「家族の名前、全部書きましたワ」という御婦人も…このいい加減さ…。集まった署名はデパートの社長へ渡し、存続をお願いするのだそうです。

 「署名をお願いしマース」と、街頭に立っておられる皆さん、いい顔をしています。「地域からデパートをなくさないために、自分たちは頑張っているんだ」という意気込みと、誇りが感じられます。しかし、署名が大きな成果を生み出す例はあるにはあるのですが、限られています。大半は…署名の束を受け取った側も始末に困る。燃やせるゴミに出すわけにもいかない。日の目を見ずに倉庫のかたすみで埃の下に。だからとっとと止めろというつもりもありません。やりたくてやってるわけですから、気が済むまでやればよい。私へかけられている迷惑は、「騒音」ぐらいのものですから、我慢できます。

 営業すると赤字がふくらむから閉店するのです。署名の束をもらって、「存続して」とお願いされて、何か問題が解決されますかね?「署名などいらないから、たくさん買い物してよ」ということでしょう!でも、デパートではあまり買い物をしない。
 民事再生法の適用申請をしたデパートに買い支えが起こり、一転、売り上げ好調というニュースが。いいと思います。一時的な特需ですけどね。なぜもっと早く買い支えてあげなかったの?消費者志向に合ってないからです。

 「品質差」が縮まった昨今、小売りは価格勝負です。「高級ですのよ」といったところで、売れなければ閉店するしかありません。その時には、その時の状況というものがあります。それは、どうしようもないこと、受け入れなければならないことです。デパートが、「より良いものを、より安く」となれば、客は戻ってきます。