アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

行く河の流れは…枯れることも…一寸先は闇

2012年10月08日 | Weblog
 311の津波の際、屋根だけが水面に出て沖へ流されている民家がありました。その屋根には、高校生が乗っておりました。映像が流される度、あの高校生どうなったかなと、気にしておりました。
 NHKが、その高校生(現在3年生)の生存を確かめ、インタビューしておりました。生きていてくれたのです。
 「流れてきた民家の屋根に登った。何度も振り落とされそうになったがしがみついて頑張った。流れてきた磯舟を見つけ、ガレキをステップし何度も海に転落しながら舟に乗り移った。やはり、屋根に乗って流されていた人を救助し、舟に乗せた。二人で励まし合いながら、火の海となった海上で炎を押しやった。そして、津波に襲われて6時間後、上陸することが出来た…」

 このニュースの時、「津波の映像が出ます」と、断ってから、屋根ごと流されていく高校生の姿が映し出されました。NHKは、そのような配慮をするようにしたのですね。良いと思います。

 311から、1年7か月が経過しました。津波のシーンは、何度見ても、ただただ恐ろしい。短い文章では形容することなど出来ません。次の文を読んでください。

 「山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地をひたせり。土裂けて水涌き出で、巌割れて谷にまろび入る」

 この短文に、「土砂崩れ」「大津波」「液状化の惨状」が見事に書き表されています。 誰の文章かって?御存知、「鴨長明(かものちょうめい)」。「方丈記」にある文章です。京都の大地震の様子を書いたもの。鴨長明の写生には、唖然とさせられます。
 方丈記の冒頭の、「行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」。高校生の頃は、「河の水?元の水でないのは当たり前だろう!」などと、突っ込みを入れておりました。
 読み返すと、「人や世の中がどう変わろうと、悩まずに勇気を出して生きよう」と、いうことだと分かります。美空ひばりの「川の流れのように」は、方丈記の冒頭を意識したものだということも分かります。
 屋根の上で漂流して生還した彼…彼の6時間の体験は正しく、「ゆく河の流…」。「よどみに浮かぶうたかた」と、「ガレキ」や「火がついたガレキ」がダブリます。

 先頃、「古事記」を読もうと呼び掛けたばかりですが、「方丈記」も読みましょうよ。なんでも、「方丈記」が書かれてから、今年がちょうど800年になるのだそうで…。