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風は東楡の木通りから

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映画 『RENT』

2006-05-07 01:12:11 | 映画・演劇
映画館は怖いな。このところ具合悪いし、もしパニック発作がおこったらどうしようとおもったけど、でも『RENT』は見たい!絶対見たい!
という事で、昨日、執念で映画『RENT』を見てきたよ~!

『RENT』はアメリカ在住のとき見に行ったブロードウェイミュージカルだ。それもロックミュージカル。見に行ったのはこれを映画化したものである。舞台はニューヨークのイーストビレッジ。貧困、ドラッグ、エイズ、孤独と闘いながら、愛、友情の中で夢を持って今日という日を精一杯生きていく若きアーティスト達の話。

このロックミュージカルを作ったジョナサン・ラーソンは本当に天才じゃないかと思う。ロック、タンゴ、ゴスペル風、グレゴリアンカント風と1つ1つの曲がまったく違う特徴があり、あきさせないからだ。私はロックはあまり聴かないが、ここに出てくる曲は本当にいい曲ばかりだと思う。それなのにジョナサン・ラーソンは初日の成功を見ないまま、しかもプレビューの前日に死んでしまうのである。ラーソンが生きていたらもっといい曲を聴けたのにと思うと残念!

話はオペラ『ラ・ボエーム』が元になっている。『ラ・ボエーム』も登場人物は芸術家である。名前もその頭文字からとっている。(ジョアンヌ、ベニー以外)
対比してみるとおもしろいよ。

登場人物
『ラ・ボエーム』      『RENT』
ロドルフォ(詩人)       ロジャー(ミュージシャン)
マルチェロ(画家)       マーク(ドキュメンタリー映像作家)
コッリーネ(哲学者)      コリンズ(哲学教授)
ミミ(お針子)         ミミ(ダンサー)
ミュゼッタ(女店員)      モリーン(パフォーマンスアーティスト)
(マルチェロの恋人)      (元マークの恋人、)
 
ショナール(音楽家)      エンジェル(ストリート・ドラマー)
アルチンドロ          ジョアンヌ
(ミュゼッタのパトロン)    (モリーンの恋人)
家主              ベニー(家主)

だが、決してパクリというわけでなく『ラ・ボエーム』の型の中にジョナサン・ラーソンのオリジナルがぎっしり詰まっているといった感じだ。
ゲイのエンジェルとコリンズが実にいい!ニューヨークメトロの電車の中でうたう「Santa Fe」でのパフォーマンス、多分アヴェニューAあたりで2人で歌う「I'll cover you」は特に良い!

また場面では登場人物たちが入れ替わり立ち代り入り乱れながら歌うのだが、それが圧巻だ。場面では家主のベニーが「芸術家は死んだのさ」といったのをマークがそれを茶化しながら「La Vie Boheme」を歌いだし、メンバー全員での大合唱になって、最後に「ヴィバ!ラ・ヴィ・ボエーム!ー芸術家よ、永遠なれ!」で終わる。かっこいい~!曲もアップテンポでのりがいい。ボエームとはフランス語のジプシーの事、英語ではボヘミアン、つまり売れない芸術家をジプシーとしてこうよんでいるそうだ。

あらすじ
80年代のイーストビレッジ、アルファベットシティ。芸術家たちがエイズ、貧困孤独、ドラッグに苦しみながら暮らしていた。家賃滞納で電気も暖房も止められたマーク、ロジャー、コリンズ。元マークの恋人パフォーマンスアーティストのモリーンは家主への抗議のライブを計画。今のモリーンの恋人ジョアンヌ、コリンズの恋人エンジェル。後にロジャーの恋人になるミミそれぞれが知り合い、いい仲間になっていく。

そんな仲の良い仲間たちだったのにエンジェルがエイズで死んでから心はばらばらになってしまう。ミミも次第にエイズとドラッグに体を蝕まれていく、それを受け入れられないロジャーはミミの元を離れ、モリーンとジョアンヌも仲たがい、やがて、ロジャー、マークは自分の夢を取り戻し始めたがミミは行方不明に。クリスマスイブの日瀕死のミミをモリーンとジョアンヌが見つける。ロジャーは自分の作った曲をミミの前で愛をこめて歌う。ミミは息絶えたように見えたが奇跡的に息を吹き返す。「エンジェルが私に、戻って彼の歌を聴きなさいといったのよ」といって。

オペラではミミが死んでしまうが、『RENT』のミミは生きる。テーマは『No day but todayーあるのは今日という日だけ ー 今日を大切にして生きる』だからだ。

映画化でオリジナルのイメージが壊れるかと思ったが、映画のキャストはジョアンヌとミミを抜かしてすべてミュージカルのときのオリジナルキャストのままだった。また舞台ではできない大人数でジョアンヌとマークのタンゴを彩るところも良かった。

イーストビレッジのアルファベットシティは行ったことがあるが、今はジュリアーニの功績なのか、とてもきれいで80年代の汚いとか、麻薬売人などの危険なイメージはない。
映画を見たら、ニューヨークの空気、騒音、すべてよみがえってきた。それだけニューヨークらしい風景が出てくる。芸術家(ミュージシャン)とニューヨーク好きな人にはぜひ見てもらいたい作品。でも、どちらかというと舞台のほうがいいかな。

いい映画なのに上映しているところが少ない。興行成績が見込めないのか一番小さな劇場でやっぱり客席はガラガラ状態だった。いい映画なのにな、もったいない。上映中、ところどころ苦しくてどうしようかと思ったけど、見てよかったよ。