1960年
飯尾対バルボンの二度にわたる対決がこの試合の勝敗の分かれ目となった。立ち上りの飯尾は外角を切るカーブで人見を三振にとった。しかしながら飯尾の調子は決してよくなかった。直球にもカーブにも切れがないのだ。飯尾の武器は外角への鋭いカーブである。このカーブにスピードがないときは直ちにリリーフを要することを意味する。立ち直る型の投手ではないからである。すべり出しから好調のときはそのままあざやかに九回を投げ切るが調子の悪いときはあっさりカブトを脱ぐ、ねばりが足りないのだ。一回2-0からバルボンにまん中のカーブを投げて三遊間を割られた。このときすでに今後に不安を感じさせた。不調であることはあきらかであるし、カウントが有利なだけにもう少し投球にくふうが必要ではなかったか、あっさり投げる飯尾の悪い面が出た場面である。この回2点の先行点をあげて阪急はきわめて有利となったがバルボンの一撃がその遠因となっていた。さらに五回勝敗の行方を明らかにしたのも、飯尾対バルボンの一投一打にあった。無死一、二塁、投手は当然内野ゴロ併殺をねらって低目に変化球を投げるのが常道である。飯尾がシンカーで内角低目を攻めたのはよいが、三球続けて同じボールを投げたのはどうしたことであろう。それもコーナー一ぱい低目をつくものであれば効果はある。スピードを落とした手ごろの高目球とあっては長打されるのも当然であろう。一回にカーブを打たれたからといって内角攻めにするのはピッチングの方針としても平凡である。いずれにしてもこの試合バルボンの2本の長短打で決まったといってもよかろう。