1962年
東映フライヤーズではこのほど甲府工の佐野嘉幸遊撃手(18)=1㍍71、63㌔、右投げ右打ち=の入団を内定、きょう(二十六日)塚本スカウトが山梨県南巨摩郡の実家をたずねて条件など最終的打ち合わせをすることになった。
佐野遊撃手は、一年生の春は外野を守り、三番を打っていたが、秋から遊撃手に転向、その後不動の四番打者として活躍、軽快なフットワークと長打力ははやくからプロ各球団の注目するところとなった。今夏の甲子園大会には西関東代表として甲府工を初出場させる原動力となった。佐野争奪戦は大洋藤井スカウトの甲府通いではじまったが、藤井スカウトは甲府工田名網監督を通じて進学をすすめて身をひいた。このあと乗り出したのが東映と大毎だった。九月一日本人が退部届けを出したころからこの両球団の争いはますます激しくなった。東映荒井スカウトは九月一日から三日間本人を追い回したが、結局会えず、これが理由で大毎(保坂スカウト)が一時有利とみられていた。しかし東映は荒井スカウトから塚本スカウトにバトンをタッチし、佐野遊撃手の相談役である実兄博司さん(22)=国際建設勤務=を積極的に説得、ついに内諾を得たもの。塚本スカウトがきょう(二十六日)甲府に向かい、条件に付いて最終的結論を出すことになっている。
佐野選手の話 チームとしては東映が好きだ。でも出場できるということを考えると大毎のほうが可能性があるので長い間迷っていた。今では気持ちもはっきりきまったが、近いうち両親や兄と相談して最終的な結論を出すつもりだ。
東映塚本スカウトの話 甲府から帰ってきたばかりだが、大体大丈夫だと思う。とにかく二十六日にもう一度実家へ行くことになっている。
大毎松浦代表の話 現在ウチは保坂スカウトが甲府に行っているが、相当条件が高くなっているらしい。正式にではないが、まず東映入りだという話は聞いている。