1967年
中原ヘッドコーチの話は、まるで打撃担当のような口ぶりだった。「七回の2点とロバーツの一発がものをいったな。あれがなかったら予定がまるで狂ってしまうところだったヨ」七、八回の追加点は、追いすがる中日にとどめを刺した形。打撃コーチでもない中原ヘッドコーチがなぜ喜ぶのか。「石戸が完投勝ちしたら、巨人戦がラクになるやないか。これでローテーションがぐっと組みやすくなった」中原ヘッドコーチの目は四日からの対巨人戦(神宮球場)にむけられていた。巨人キラーの鈴木にはフル回転してもらわなければならない。もし、後半の追加点がとれなければ、石戸の完投は実現したかどうか・・・。「中日に勝って、その勢いを巨人にぶつける」という計算は予定通りになった。石戸は中日に強い。今季8勝のうち、4勝を中日からあげた。「バックが中日戦になると点をとってくれる。ピッチングがラクになるのさ」昨シーズンのニガ手を、今季はカモにしている石戸のセリフらしい。「この試合もそうだヨ。ウチが三回に4点とったら、中日はバントやヒットエンドランをしかけてこなくなった。そうすりゃこっちのものだヨ」最後の打者、広野を二塁ゴロにうちとってベンチにもどるなり、石戸はくずれるように長イスに腰をおろした。川小チーフマネジャーの差し出すライターで、うまそうにタバコを一息吸い込んで、「つかれた・・・」心底からそういったときの感じは、十分たったロッカールームではもうなかった。「シュートのキレがいいときは、絶対に打たれない。この試合も内角のタマが実によかった。疲れが、みえたのは、九回だけじゃないかな」女房役、岡本捕手の石戸評だ。完投勝利は四月十一日の広島戦いらい約四か月ぶり、オールスターゲーム明けの広島戦(七月三十日、神宮)には二回に一死もとれずKOされている。「シュートのできひとつできまるんだ。好不調の波をなくす必要が第一の課題」岡本捕手はめずらしく地味な表現で石戸をほめた。投球数143、9安打され、三者凡退に終わらせたのは三回表だけ。エラーが出たり、騒動があったりで、どこかすっきりしなかった完投勝ち、三回に右足太モモへ死球を小川にぶっつけられ、あやうくケンカになるーほどエキサイトした。「中日には四つも勝っているが、ほんとうは巨人のほうがやりいい。先に得点さえとってくれればね・・・」石戸は今季巨人からまだひとつも勝ち星をあげていない。それでもなお投げやすいと闘志を燃やす。対巨人4連戦でもう一度石戸の快投あみられそうだ。
サンケイ・飯田監督の話「石戸がいいピッチングをしてくれた。三回で小川を打ちくずしたこと、七回にも2点、それにロバーツの3ランホーマーと打線も効果的な点のとり方をしてくれた。この勢いで巨人戦も戦っていきたい」
中原ヘッドコーチの話は、まるで打撃担当のような口ぶりだった。「七回の2点とロバーツの一発がものをいったな。あれがなかったら予定がまるで狂ってしまうところだったヨ」七、八回の追加点は、追いすがる中日にとどめを刺した形。打撃コーチでもない中原ヘッドコーチがなぜ喜ぶのか。「石戸が完投勝ちしたら、巨人戦がラクになるやないか。これでローテーションがぐっと組みやすくなった」中原ヘッドコーチの目は四日からの対巨人戦(神宮球場)にむけられていた。巨人キラーの鈴木にはフル回転してもらわなければならない。もし、後半の追加点がとれなければ、石戸の完投は実現したかどうか・・・。「中日に勝って、その勢いを巨人にぶつける」という計算は予定通りになった。石戸は中日に強い。今季8勝のうち、4勝を中日からあげた。「バックが中日戦になると点をとってくれる。ピッチングがラクになるのさ」昨シーズンのニガ手を、今季はカモにしている石戸のセリフらしい。「この試合もそうだヨ。ウチが三回に4点とったら、中日はバントやヒットエンドランをしかけてこなくなった。そうすりゃこっちのものだヨ」最後の打者、広野を二塁ゴロにうちとってベンチにもどるなり、石戸はくずれるように長イスに腰をおろした。川小チーフマネジャーの差し出すライターで、うまそうにタバコを一息吸い込んで、「つかれた・・・」心底からそういったときの感じは、十分たったロッカールームではもうなかった。「シュートのキレがいいときは、絶対に打たれない。この試合も内角のタマが実によかった。疲れが、みえたのは、九回だけじゃないかな」女房役、岡本捕手の石戸評だ。完投勝利は四月十一日の広島戦いらい約四か月ぶり、オールスターゲーム明けの広島戦(七月三十日、神宮)には二回に一死もとれずKOされている。「シュートのできひとつできまるんだ。好不調の波をなくす必要が第一の課題」岡本捕手はめずらしく地味な表現で石戸をほめた。投球数143、9安打され、三者凡退に終わらせたのは三回表だけ。エラーが出たり、騒動があったりで、どこかすっきりしなかった完投勝ち、三回に右足太モモへ死球を小川にぶっつけられ、あやうくケンカになるーほどエキサイトした。「中日には四つも勝っているが、ほんとうは巨人のほうがやりいい。先に得点さえとってくれればね・・・」石戸は今季巨人からまだひとつも勝ち星をあげていない。それでもなお投げやすいと闘志を燃やす。対巨人4連戦でもう一度石戸の快投あみられそうだ。
サンケイ・飯田監督の話「石戸がいいピッチングをしてくれた。三回で小川を打ちくずしたこと、七回にも2点、それにロバーツの3ランホーマーと打線も効果的な点のとり方をしてくれた。この勢いで巨人戦も戦っていきたい」