1971年
ヤクルトがドラフト第十六位で指名した早大のエース・大木勝年投手(21)=1㍍74、74㌔、右投右打=成東高=の入団が十四日きまった。ヤクルト・浜田事務部長、塚本スカウトがこの日午後二時から千葉県東金市上谷の大木宅をたずね、父親・永好さん、祖父・勝次郎さん、伯父の大木成男さんをまじえて七度目の入団交渉。午後八時から大木側が再度親族会議を開いてプロ入りを承諾した。契約金は六百五十万円、年棒は百八十万円(いずれも推定)。正式契約は近日中に行なわれる入団発表の際にする。ヤクルトのドラフト指名選手の入団はこれで十二人となり、ねらった選手全部の獲得を終了した。
昨年十一月のドラフト会議で十二球団が指名したのは全部で百七選手。その四十七番目に名前があがったのがこの大木だった。ヤクルトを含めて、各チームが大木指名をちゅうちょした理由は、まず第一にプロで通用するかどうか疑問をもっていたこと、第二にはノンプロ東芝に早くから就職が内定していたことなどがあげられる。しかしエース格の石戸に期待が薄れてきたヤクルトは、横手投げのピッチング・フォームがよく似ている大木に目をつけ、獲得に乗り出した。初めは両親がこぞって「危険の伴うプロ入りに反対」したため話し合いはこじれた。ヤクルト側は昨年暮れからことしにかけて行なわれた早大と慶大との帯同遠征(台湾、沖縄)の前後に、中西ヘッド・コーチまで立てて説得につとめ、十三日の六度目の入団交渉でやっと本人の内諾を得、この日の七度目の話し合いの後、最終的なOKをとった。入団が決まった大木は、さすがにほっとした口ぶり。「一時はサラリーマンになる決心もしたのですが、やはり野球をやるならプロでという気持ちが強かった」と本当にうれしそう。「それなら、自信があるのかと聞かれても困るのですが、まあ内に秘めた自信は十分持っているつもりです」などと早大のエースらしい、なかなかしっかりした答えだった。しかし、三年生の秋までは小坂(早大-巨人)のカゲにかくれ、やっとエースといわれた昨シーズンも春2勝1敗、秋2勝3敗と勝ち星こそ少ないが、防御率は春が一位(0.77)秋が二位(1.07)と中身は濃い。「二年生の秋に慶大と京都に遠征し、メッタ打ちにあったことがあるんです。それですっかり自信をなくして、三年生のときもさっぱりだった。でも今度はプロですから必死にやります。まず体力を十分養ってスピードをつけることですね」早生まれのため、ことし三月まではまだ満二十一歳。選手名鑑などには22と書き込まれているそうだが「本当はもっと若いんです。だから人よりまだ伸びる可能性もあるんです」といって周囲を笑わせた。武器はシュートとカーブだが、ヤクルト・塚本スカウトは「あのシュートはプロでも通用する」と太鼓判を押している。そのうえ、やや変則的な投げ方なので「おもしろそうだ」とヤクルト首脳陣も、いまから大きな期待を寄せている。背番号は未定だが、二十日から始まる自主トレーニング(神宮第二球場)に初日から参加する。
ヤクルト・塚本スカウト「ウチの石戸、東映の高橋善とよく似た投げ方だが、シュートがとてもいいからかなりプロでも使えると思う。問題はスピードで、体力を十分つけることが大切だろう。即戦力で5勝くらいはするのではないかと期待している」
ヤクルトがドラフト第十六位で指名した早大のエース・大木勝年投手(21)=1㍍74、74㌔、右投右打=成東高=の入団が十四日きまった。ヤクルト・浜田事務部長、塚本スカウトがこの日午後二時から千葉県東金市上谷の大木宅をたずね、父親・永好さん、祖父・勝次郎さん、伯父の大木成男さんをまじえて七度目の入団交渉。午後八時から大木側が再度親族会議を開いてプロ入りを承諾した。契約金は六百五十万円、年棒は百八十万円(いずれも推定)。正式契約は近日中に行なわれる入団発表の際にする。ヤクルトのドラフト指名選手の入団はこれで十二人となり、ねらった選手全部の獲得を終了した。
昨年十一月のドラフト会議で十二球団が指名したのは全部で百七選手。その四十七番目に名前があがったのがこの大木だった。ヤクルトを含めて、各チームが大木指名をちゅうちょした理由は、まず第一にプロで通用するかどうか疑問をもっていたこと、第二にはノンプロ東芝に早くから就職が内定していたことなどがあげられる。しかしエース格の石戸に期待が薄れてきたヤクルトは、横手投げのピッチング・フォームがよく似ている大木に目をつけ、獲得に乗り出した。初めは両親がこぞって「危険の伴うプロ入りに反対」したため話し合いはこじれた。ヤクルト側は昨年暮れからことしにかけて行なわれた早大と慶大との帯同遠征(台湾、沖縄)の前後に、中西ヘッド・コーチまで立てて説得につとめ、十三日の六度目の入団交渉でやっと本人の内諾を得、この日の七度目の話し合いの後、最終的なOKをとった。入団が決まった大木は、さすがにほっとした口ぶり。「一時はサラリーマンになる決心もしたのですが、やはり野球をやるならプロでという気持ちが強かった」と本当にうれしそう。「それなら、自信があるのかと聞かれても困るのですが、まあ内に秘めた自信は十分持っているつもりです」などと早大のエースらしい、なかなかしっかりした答えだった。しかし、三年生の秋までは小坂(早大-巨人)のカゲにかくれ、やっとエースといわれた昨シーズンも春2勝1敗、秋2勝3敗と勝ち星こそ少ないが、防御率は春が一位(0.77)秋が二位(1.07)と中身は濃い。「二年生の秋に慶大と京都に遠征し、メッタ打ちにあったことがあるんです。それですっかり自信をなくして、三年生のときもさっぱりだった。でも今度はプロですから必死にやります。まず体力を十分養ってスピードをつけることですね」早生まれのため、ことし三月まではまだ満二十一歳。選手名鑑などには22と書き込まれているそうだが「本当はもっと若いんです。だから人よりまだ伸びる可能性もあるんです」といって周囲を笑わせた。武器はシュートとカーブだが、ヤクルト・塚本スカウトは「あのシュートはプロでも通用する」と太鼓判を押している。そのうえ、やや変則的な投げ方なので「おもしろそうだ」とヤクルト首脳陣も、いまから大きな期待を寄せている。背番号は未定だが、二十日から始まる自主トレーニング(神宮第二球場)に初日から参加する。
ヤクルト・塚本スカウト「ウチの石戸、東映の高橋善とよく似た投げ方だが、シュートがとてもいいからかなりプロでも使えると思う。問題はスピードで、体力を十分つけることが大切だろう。即戦力で5勝くらいはするのではないかと期待している」