1958年
土性骨のしっかりした投手。172㌢、70㌔の体は投手として上背にいささか不足だが幅のある肩、負けずぎらいな性格はタイガースぴったり。入団についての抱負も他の高校生と違っている。「生きるため、生活するためにこのきびしい勝負の世界を選んだ。もちろん野球は好きな道だが、自分の力がどこまで通用するかは未知だ。情け無用、実力のあるものもにが勝利者というプロの世界でだれにも負けない闘志と練習で力いっぱいやる」と語っている。生活のためと割り切っているのも立派だ。バク然とした気持や、あこがれ、あるいは取巻きにあおられてプロ入りする新人の多いなかで、彼のシンの強さを知るにふさわしいことばだ。小松(巨人)の去った高知商のマウンドを守った二年生の秋にはまだ技巧派といった投手だった彼が、厳しい練習による鍛錬でスピードをつけて力の投手に変わり、さらに落ちるタマをマスターしたことによって完成の城に近づいた。下手気味からの外角への速球、内角に食い込むシュートと落ちる球をこれに配して甲子園でも効果をあげたことは記憶に新しい。だからといってこの森光がプロの世界でそのまま通用すると考えるのは早計だ。下手投げ投手としてまだ腰の回転がスムーズでないこともその一つだし、いまのスピードだけではまだまだ物たりない。スライダーを覚えることも急務だろう。大友バリのピッチングだから、こうした先輩の長所をどしどし取り入れていくべき。南国土佐産だけに夏場に強いことは投手として条件がよい。土佐っぽい情熱と激しい闘志で精進すればタイガースとしては特異な下手投投手として成功するに違いない。(右投げ、右打ち、17歳)