1997年
巨人から6位指名を受けた中村善之投手(新日鉄八幡)は、「プロは自分の夢だったので、前向きに考えたい」と喜びをかみしめた。身長182㌢、右の本格派。佐賀工時代は右ひじの故障に泣いたが、最高144㌔の直球と切れを増したフォークを武器に成長。全日本メンバーの候補に名前を連ねるまでになった。今月十五日に結婚式を挙げ、前日にハネムーンから帰ってきたばかり。新居に訪れたビッグニュースに、「早くゴールデンタイムに登場できるようになりたいですね」と笑った。
バランスの良いフォーム、回転のいいストレート、各種の変化球が魅力。
巨人が6位指名した新日鉄八幡の中村善之投手(23)=佐賀工出身、182㌢、70㌔、右投げ右打ち=の入団が三日、決まった。契約金六千万円、年棒八百四十万円。背番号は十八日、東京都内で行なわれる新人選手の入団発表で明らかになる。中村投手は、最高144㌔の直球と切れのある変化球が魅力の右の本格派。「腕の振りがいい。できるだけ早く一軍のマウンドに立ってほしい」と末次スカウト部長から激励を受けた。小さいころから巨人ファンという中村投手は、「あこがれだった桑田さんや清原さんと一緒にやれるなんて、思ってもみなかった」と笑みをこぼした。
「夢みたいですね。僕は甲子園で活躍する清原さんや桑田さんを見て育った。一緒のチームにまさか入団するなんて」中村はあこがれの巨人入りに、喜びを隠せない。江口孝義(元ダイエー)の剛速球に魅せられて佐賀工に進んだ。高校二年の秋、チームを県大会準優勝に導き、九州大会に出場。だが、この時の無理が響き右ひじを故障した。日々治療に終われ、高校最後の夏の大会は背番号「10」、1イニングだけの登板だった。「高校三年の思い出が全くない。これでは終われなかった」実績に乏しい中村だったが、九州社会人ナンバーワン新日鉄八幡の選考会で140㌔の復活の快投。荒削りだが、秘められた可能性に周囲はつばをのんだ。同期の十人が甲子園優勝投手の森尾(福岡・西短大付)ら、高校や大学の一流選手ばかりという厳しい競争の中、「社会人に進むからにはプロを目指す」と自らを奮い立たせた。そして、社会人五年目の今季、チームの中心投手に成長。自慢の直球に加え、決め球フォークはさらに切れを増した。全日本メンバーにも名を連ね、「来年は世界選手権で投げてみたい」と夢を膨らませていた矢先の巨人の指名だった。ドラフト1週間前に結婚。来年四月には第一子が誕生予定。家族への責任を背負ってのプロ入りとなる。高校時代は剣道部で活躍した妻の環さんは、「不安はありますが、プロは彼の小さいころからの目標でしたから」夢の共感者を伴りょに得て、巨人の星を目指す。
中村善之 最高144㌔の直球とフォークが武器の右の本格派。今年のドラフトで巨人が6位指名した。182㌢、70㌔。右投げ右打ち。佐賀工高ー新日鉄八幡。小城町出身、23歳。