3月になりました。
もう10年以上前の3月のことですが、
私は、バイクで事故を起こした。
その日、業者の接待で酒を飲んだ。
前の会社では資材部だったので、
取引業者の接待がよくあった。
家に帰って、何かのことで女房とケンカをした。
いったん蒲団に寝たのに、
起きだしてバイクで出かけた。
ケンカのことが面白くなく、
友人に会いに行こうとした。
酔っぱらいはいやですね。
そんな時間に友人が起きてるわけないのに。
それで、路地から県道に出たところで
タクシーと激突した。
気がつくと、
防衛医大付属病院のベットの上。
まったく状況が分からなかった。
1週間で退院して松葉杖の暮らしが1ヶ月。
会社にはタクシーで通勤した。
会社のある場所は陸の孤島だった。
退院して、おまわりさんと現場検証をした。
彼の話だと、
タクシーとぶつかったバイクは、
タクシーを乗り越え大破し、
私は、タクシーの前方21メートルまで
跳ね飛ばされた。
見に来た野次馬たちは、
「この人、死んでる」といってたそうだ。
今こうして生きているのが、
不思議なくらいの事故だった。
身体障害者になっていてもおかしくなかった。
ヘルメットをしていたのがよかったようです。
深夜に警察から連絡を受けた女房は、
びっくりしただろう。
あのとき私の女房に対する立場は、
またひとつ弱くなった。
なにかあるごとに弱くなる私です。
女房の両親に詫び状を書いた。
子どもが小さいのに、
酔って事故を起こしてすみません。
もう2度としません。
なんてことを書いた記憶がある。
その事故で右足のすねの骨を折り、
膝の靱帯を切ってしまった。
私はふだん普通に歩いているが、
人がいないと右足を引きずるように歩いている。
そのほうが楽なんです。
ときどき右足がカタンと抜けるようなときがある。
靱帯がないせいでしょうか。
あの3月以後の私の人生は、
“おまけ”のようだと思うときがある。
私はあのとき死んでいた。
生きててよかった。