私は6月になってから、
毎朝7時前には仕事をしている。
親会社から納品される素板(ガラス)の
受け入れをしているのです。
フォークリフトで細心の注意をはらって
重い素板の載ったパレットを
大型トラックから降ろしていると、
Nさんが7時15分ぐらいに出勤してくる。
知らなかった。
うちの会社の始業時間は8時15分です。
1時間も早く出勤してるのを知って私は驚いた。
Nさんが、4月で定年退職して、
現在はアルバイトとして勤めていると最近知った。
うちの定年は60歳です。
いつからだろう、
Nさんは、私のことを気に入ってくれていて、
会社で会うといろいろ話しかけてくれる。
私も、Nさんを見つけると、
近づいて話しかけるようになった。
先日も第1工場に用事があったとき、
Nさんの作業台によった。
「上の者がバカばっかりでどうしょうもないですよ」
「そうね。いくらなんでもこの会社はひどすぎる。
Oさん、でも我慢しようね。
この歳になったら、余所じゃ働けないもんね」
そんなことをいいながらも
Nさんの笑顔は素敵です。
何年か前、忘年会か慰安旅行かで
Nさんと少し話した。
Nさんは、40歳前後の頃ご主人を病気でなくし、
それから“このひどい会社”で働き、
2人のお子さんを育ててきたそうだ。
子どもは社会人になり、孫もいるという。
見るからに工場で労働するという感じはなく、
何も知らないでNさんを見たら、
ちょっといい家庭の奥さんという雰囲気だ。
会社の他の女性からも慕われていて、
“ボス的”というのとは少しニュアンスが違うが、
実質、会社のおばさんたちをまとめている。
この会社の女性たちは、
ほんとうによく仕事をする。
1日中立ちっぱなしで、
成形されたウィンドウガラスの樹脂のバリを取り、
ガラスを磨き、製品にしている。
これからの熱い夏、
スポットクーラーの片寄った冷気に当たり、
体をおかしくさせながらも働かなければならない。
Nさんの温かい笑顔に会うと、
がんばろうと自然に思える私です。