このギターを買ったのは、ゴッホ展を見たあとだった。
お茶の水駅前まで行って中古ギターの店で買った。
19歳のとき、その楽器屋の新品を売る店で
今持っているクラシックギターは買ったのです。
弾かせてもらってなかなか鳴るギターだと思った。
35,000円だった。
しかし、買って女房の家に着いて弾いてみたら、
指板の第2弦の1フレットのC(ド)の音の所が磨り減っていた。
ここはどうしても押さえる頻度が高いからだろう。
フレットもへこんでいた。
私の心もへこんだ。
CやAmのコードを押さえるとき、
へこんでいる指板に第2弦を必死に押さえると第1弦に触れてしまう。
E(ミ)の音がくぐもった音になる。
私はこれまでクラシックギターを弾いてきた。
クラシックギターはナイロン弦です。
ナイロン弦は柔らかい。
ネックの指板が削れることはない。
しかし、アコースティックギターはスチール弦だ。
指板に使う堅い木材でも削れてしまうんですね。
そのことは知らなかった。
私は買うとき、ネックが曲がっていないか、ということには注意した。
でも、指板が磨り減っているとは考えもしなかった。
軽井沢に持ってきてそのギターを弾いていても楽しくない。
あんなにアコースティックギターが欲しくってやっと手に入れたのに…。
なので今日まで九想話にも書く気がしなかった。
先日、岩波ホールに行ったときその店に寄って、
私にギターを売った店員に指板とフレットが減っていたと文句をいった。
「持ってきてくれれば指板を削ります」という。
へこんだところに合わせてまわりを削るということだ。
「軽井沢にいるのでここまで持って来られない」というと、
「送って下さい」という。
「そうすると何週間か、かかるんだろう?」と訊くと、
「そうですね」とさらりという。
彼にとっては売ってしまったものだから、痛くも痒くもない。
「この店はあんなに指板が磨り減っているものでも売るんだ。
客が気がつかなければ売っちゃうんだね」
「………」
軽井沢からあのギターをお茶の水まで持ってくることを、
考えただけでも気が遠くなった。
その前に、アコギを買ったのは11月27日のパンカーラでの
「フォークソング祭り」で弾くためだ。
そのときに手元にないのでは意味がない。
私は指板を調整してもらうことは諦めた。
とりあえずはこのギターで練習して「フォークソング祭り」に出ます。
このアコースティックギター、音はなかなか良いです。
しかし、ちょっと心の重い九想です。