「スクラップ・アンド・ビルド」(羽田圭介 著)を読み終えた。
文藝春秋9月号には、又吉直樹の「火花」も掲載されていたので買っていた。
この芥川賞を受賞した「火花」と「スクラップ・アンド・ビルド」、
私はどちらかというと「スクラップ・アンド・ビルド」のほうが好きです。
全体に一貫性があり、小説としての完成度が高いと思う。
カーディーラーを自己都合退職した健斗は、宅建の、その後は行政書士資格試験の勉強をしていた。
そして月に1、2度はそれらと無関係の中途採用選考を受けていた。
しかし新卒の就職も厳しい現状で、三流大学出身、
かつなんの潰しもきかない業種に5年も身をおいていた人間を雇ってくれれる企業はない。
その健斗と同居しているのは87歳になる要介護の祖父。
年齢から見たらほとんど健康体といってもいい祖父なのに、口癖は「もう死んだほうがよか」。
実際に服毒自殺を試みたこともある。
健斗も健斗の母もそんな祖父にあきれている。
その祖父を介護している健斗のことがこの小説の中心だ。
健斗は祖父に嫌気がさしつつ、甲斐甲斐しく介護をしているのだが、本当の目的は別のところにある。
祖父の社会復帰を「手厚く介護すること」により邪魔し、祖父を弱らせ、「自然な尊厳死」迎えるように企む。
この小説は最近読んだもののなかでは、私をうならせてくれたものだった。