私は暴力は嫌いです。
争いは出来るだけ避けます。
それはただ私が臆病なだけなのかも知れません。
映画やドラマを観ていても、そういう場面は苦手です。
そういう私が、51年前の秋にひとりの男を殴りました。
そのとき私は高校3年の18歳でした。
吹奏楽部の部長をしていた。
同じ中学校の吹奏楽部から一緒にやってきた高2の後輩が、
「吹奏楽部を辞める」と言った。
そのときの詳しい状況を、今の私は何も覚えていない。
(今日、高校3年のときの日記を読んだが、見つけられなかった)
その日の夜、私は彼の家に行っていた。
彼が、どうして吹奏楽部を辞めたいのか訊こうとして行ったのだと思う。
その理由を彼から聞いたのかどうなのか、それもはっきり覚えていない。
確実に覚えているのは、彼を殴ったことです。
「わがった、おめが吹奏楽部辞めんのはあぎらめる。でもおれの気がすまねぇ。
おれはおめを殴る」
そう言って、私は彼の頬を殴った。
他人(ひと)を殴ったことなどない私は、うまく殴れなかったと思う。
へたくそな殴りかただったでしょう。
先週、茨城の兄と電話で話したときに、
「亀屋のよっちゃんが、がんで死んだよ」と言った。
亀屋というのは屋号で、うちは伊勢屋という屋号だった。
昔、物を売る店をやっていたようです。
亀屋は宿(しゅく)の下(しも)で、伊勢屋は宿の上にあり500mほど離れていた。
よっちゃんというのは、私が高校3年のときに殴った後輩です。
今日は、よっちゃんの告別式でした。