そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

塩野七生氏へのインタビュー

2007-01-04 23:13:43 | Politcs
今日の日経新聞朝刊に、塩野七生氏へのインタビュー特集が載っていた。
テーマは日本の政治における国家論、指導者論。
全文引用したいくらい、とにかく面白いインタビューだったが、一部(といってもいっぱいだけど)引用したい。

-在任中の小泉氏には自己制御も感じました。
それはありますよ。知力はどうかなあ。説得力に関していえば、小泉さんは起承転結の「起」しか言わない。我々は彼が改革してくれるだろうと期待して「承転結」まで考えてあげていた。だから彼は言葉が少なくてもうまくいきました。

-安倍首相には説得力がありますか。
誠意はあります。安倍さんは答えればいいことの十倍の量、誠心誠意答えている。普通の人なら飽きてしまう。・・・

マキャヴェッリは「民衆は抽象的な問いかけをされると間違える場合があるけれども、具体的に示されれば相当な程度に正確な判断を下す」と言っています。小泉さんはそれをしました。安倍さんは誠実に答弁しているが、言っていることがだんだんわからなくなってしまう。

・・・国際会議の時に彼の言葉をいちいち翻訳していると、外国の人はわからないから、練達の通訳が必要です。安倍さんが言うことを半分に縮めてもらう。そうしないとわが国の国益に反します。

私はある時期、小沢さんを面白いと思っていました。しかし、彼は勝負しない人ですね。勝負するときに逃げてしまう。

私が日本人に少しだけ違和感を感じるのは「信じすぎ」だということです。民主主義も万全ではない。民主主義はしばしばデマゴーグに左右されるのです。

-政治家が小粒になったといわれます。
それは政治家を使い捨ての存在だと思っていないからです。使い捨てだと思えば、その人間の一番いいところはどこかを考えて使いますよ。権力は「必要悪」ではなくて、何かをやるために「必要」なんです。そういう議論は二十歳そこそこの女性が「このごろの男は面白くない」と言うのに似ています。

私が好きでないのは天国に行く道ばかり言う人です。一歩間違えれば地獄に行く可能性があるから我々は注意する必要があるのに「天国にお手てつないで行きましょう」と言って、地獄を忘れさせてしまう。これがいけないと思います。

私は日本の政治家はテレビの使い方が変だと思います。テレビの前で話すときは、カメラの向こうに何千万人がいると考えるのではなく、たった一人を相手にしていると考えればいいのです。・・・そこを小泉さんは分かっていた。一億人を前にしていると思えば「俺は死んでもいい」なんて言えますか。

米国の有識者はイラクをどうするか、まじめに討論しているけれど、イラク戦争は米国が始めたという視点が完全に欠けている。

-大英帝国ならどうでしょう。
歯を食いしばってやったでしょう。
-その違いはどこに。
英国人は自分たちのためだと思っているが、米国人はイラク人たちのためだと思っている。

日本はうそも言えないし、演出もできないからですね。口べたで結構だが、言ったことは必ず、実行しましょうと。「美しい国」とまでは言わなくても「いい国」にはなったほうがいい。そのためには具体的で小さなことを一つずつ解決していくべきでしょう。我々はそういうことは意外にうまいのですが、ときに狂ったように抽象的なことを言い出すから困るのです。

小泉と安倍の違い、日本人について、アメリカについて、普段漠然と感じていることをここまで鮮やかに言葉にされてしまうと脱帽である。
マキャヴェッリの引用や、最後の一言にある通り、「具体的」であることをもっとも重視していると感じた。
この点、自分も非常に共感する。

この人の書いた本、読んでみたくなったなあ。
「ローマ人の物語」読んでみるか・・・全部読むの数年かかりそうだけど。。
コメント (2)
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