![]() | 西部戦線異状なし (新潮文庫 レ 1-1)レマルク新潮社このアイテムの詳細を見る |
ヘミングウェイの「武器よさらば」を読んだので、第一次大戦つながりでこちらも読んでみることにしました。
恥ずかしながら、この著名な小説の主人公がドイツ兵であることも、著者のレマルクがドイツ人であることも知らずに読み始めたのですが。
レマルクはジャーナリスト出身だそうですが、その出自に相応しいドキュメンタリータッチが特徴的です。
ストーリーらしいストーリーはなく、作劇を廃して、只管、戦場の現実と限界状態に置かれた若き兵士の心理が克明に書き連ねられていきます。
兵士たち同士の退廃的な会話などは、「武器よさらば」と共通するところもあったけど、ロマンチシズムの香り漂うヘミングウェイと比べるとこちらはおよそ文学的とは言い難いテイストで、逆にそれが小説に力を生んでいる印象です。
レマルク自身従軍経験があるとのことで、若き兵士たちの心理描写は克明で、且つ、説得力に溢れています。
自分たちの境遇を、職業や家庭を故郷に置いてきた年上の兵士たちとは異なるものと断じてみせるあたり、経験者にしか分からない繊細な心理が印象的に表現されていると感じました。
主人公が休暇で故郷に戻り、家族や銃後の人々とのコミュニケーションにおける違和感に悩まされるあたりは極めて痛切です。