そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「容疑者ケインズ」 小島寛之

2008-12-27 12:21:07 | Books
容疑者ケインズ (ピンポイント選書)
小島 寛之
プレジデント社

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推理小説っぽいタイトルですが、経済学の本です。
ケインズの『一般理論』の解説をベースに、バブルなどの経済現象をケインズの思想・理論との関係から論じています。
非常に平易に書かれていて分かりやすいのは分かりやすいんだけど、元々ブログにコラム的に書いたものを大幅加筆修正して出版したもののようなので、全体に論旨が体系だてられておらず、つまみ食い的にいろんな話題が散りばめられているので、新たな知見を得るという点ではかなり物足りなさを感じました。
入門書としてお勧めできるタイプの本でも無さそうなので、ある程度経済学の基礎知識がある人が気分転換や暇つぶしに読むのに適しているという感じでしょうか。

数学科出身の塾講師だった著者は、市民講座でケインズの理論に出会って衝撃を受け、大学院に入り直して経済学者になったという経歴の持ち主のようで、ケインズに対しては一方ならぬ思い入れがあるみたいですが、勿論ケインズ理論を無批判に信奉しているわけではありません。
経済学者の間では、ケインズ理論は既に「過去のもの」として否定するのが通説になっているようで、著者もそのことには同意をしています。
が、それでも著者はケインズの発想には魅力があると言います。
ケインズは、「緻密にすきのない論理体系を構築できる、というタイプの天才」ではないが、「反面、そのロジックには磨きがいのある夢やアイデアがふんだんに埋まっている」と評価しています。
確かに、学問的には否定されていながらも、半世紀以上経った現代においてもその影響力が残存している現実をみれば、著者の評価は当たっているようにも思えます。
その分、厄介な存在だ、とも言えそうですが。
コメント
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