お寺の経済学中島 隆信東洋経済新報社このアイテムの詳細を見る |
一般的な日本人にとって「お寺」「お坊さん」「仏教」といえば、「葬式」「法事」「お墓」といった連想が働くわけですが、これらは日本ローカルなもので、タイなどの他の仏教国では同じ発想は全く通用しない。
日本において、仏教と葬式やお墓が結び付いたのは、江戸時代に徳川幕府の統治体制に寺院が組み込まれ「檀家制度」として全国に行き渡ったことが起因している。
そのあたりの歴史を紐解きながら、現代のお寺・仏教を取り巻く状況を経済学的見地から眺めた一冊。
それにしても、オフィシャルな制度としての檀家制は明治以降存在しなくなったにも関わらず、現代においても寺壇関係というものが「文化」として社会に根を張っていることを考えるに、徳川幕府がこの制度をいかに強固にあまねく根付かせたかが痛感させられます。
まあ考えてみれば、明治以降まだ150年ほどしか経っていないわけで、徳川の260年はやっぱり日本人の生活のかなり深いところまで刻み込まれてるんだなあ、と。
同じ著者の「大相撲の経済学」に比べると、経済学的観点での掘り下げという意味ではやや物足りないところもあるんですが、雑学的にはなかなか面白かった。
特に、お寺と葬儀社・石材屋の関係を分析したあたりとか。