そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「サッカーの見方は1日で変えられる」 木崎伸也

2010-10-16 15:18:56 | Books
スポーツライターである著者が、欧州を始めとするサッカー名指導者たちから得たヒントを基に、端的なチェックポイントによって、よいチーム、選手、監督の見極める方法を示そうとした試み。

いきなりですが、本書で挙げられているチェックポイントをメモ代わりに列挙してしまいましょう。

【いいチーム、悪いチームの見分け方】
・ボール保持者の周りで、アクションを起こしている選手がいるか?
・クロスに対して、飛び込む選手が何人いるか?
・DFからFWまでをコンパクトに保てているか(守備のスタートラインが決まっているか)?
・ゴール前中央を空けていないか?
・攻撃の布石として、ボールの後ろに素早く戻れているか?
・「守備は狭く、攻撃は広く」が実践できているか?
・各選手が2秒以内にプレーしているか?
・ボールを使った休憩(攻撃の緩急)ができているか?
・縦パスが入っているか?
・DFを下がらせながら攻撃できているか?

【いいFWの見分け方】
・「背中を取る動き」ができるか?
・反転してシュートが打てるか?

【いいMFの見分け方】
・走っている選手の足元にパスを合わせられるか?
・「止める」「運ぶ」「蹴る」がひとつの動作でできるか?
・ニアゾーンを使えているか(フリーランニング)?
・相手からボールを奪えるか?

【いいDFの見分け方】
<DFライン>
・DF同士が適切な距離を保っているか?
・DFラインの上げ下げの基本(相手がバックパスしたらラインを上げる、相手が前を向いてボールを持ったらラインを下げる準備をする。ロングボールにはCBの一人が競りにいき残りの三人は下がりながら中央に絞る。)ができているか?
・クロスの対応の基本(DFラインが弧を描く)ができているか?
<センターバック>
・シュートのブロックがうまいか(球際に強いか)?
・インターセプトができるか?
<サイドバック>
・虚を突いたロングパスが出せるか?
・斜めに切り込む動きをしているか?

【いいGKの見分け方】
・至近距離のシュートに対する反応(反射神経)
・クロスなどの高いボールの処理
・DFラインの裏に来たボールへの飛び出し(リベロとしての役割)

この他、「いい監督の見分け方」「プロスカウトはどこを見ているか」といったことにも触れられていますが、ここでは省略。

正直、そんなに画期的なことが書かれているわけではなく、想定された読者レベルは結構ビギナー寄りかなという気はしますが、こういうふうに端的に切り口をまとめてもらうと、これまでぼんやりとしか意識していなかったポイントが明確になりますね。
個人的には、チームでは「守備は狭く、攻撃は広く」「DFを下がらせながら攻撃できているか」「DFラインの上げ下げの基本」あたり、個々の選手では「背中を取る動き」(FW)、「走っている足元へパスを合わせる(MF)」あたりを今後意識して注目してみたいと思わされました。

サッカーの見方は1日で変えられる
木崎 伸也
東洋経済新報社
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「長期金利は上げるべき」

2010-10-16 14:42:02 | Economics
昨日(10月15日)付け日経新聞朝刊「経済教室」はゼロ金利復活を論じるシリーズの2回目、中前国際経済研究所の中前忠代表と斎藤朋子エコノミストの連名による稿。
ゼロ金利と量的緩和を中心とする日銀の政策パッケージは「百害あって一利なし」と強烈に切り捨てています。

曰く、超金融緩和政策はデフレ不況をむしろ促進させてきた、と。
論拠としては以下の点が挙げられています。

【1】銀行貸出の減少
・超金融緩和により、長期金利のほうが短期金利以上に大きく下がり、銀行の利ザヤが縮小するので、銀行が貸し出しリスクをとりづらくなる。
・銀行の余剰資金は積み上がり、リスクフリーの国債投資に向かうことで、国債利回り(長期金利)の一段の低下(国際価格の上昇)をもたらし、銀行の利ザヤがさらに縮小するという悪循環をもたらす。
・銀行貸し出しの縮小は中小企業に対し大きな打撃を与える。貸出の低迷が雇用の悪化をもたらし、不況・デフレを促進する。

【2】過剰供給力の温存
・銀行は、新規貸し出しは減らしても、本来市場から淘汰されるべき「ゾンビ企業」の倒産は望まない(不良債権を顕在化させるので)。銀行の融資姿勢は、大企業・ゾンビ企業には特に甘くなる。
・その結果、バブル期に積み上がった過剰設備の廃棄が進まず、供給力過多の状況が維持されてしまう。

【3】高齢者世帯の利子所得の減少
・高齢者世帯が退職後に備えて貯め込んだ貯蓄のリターンが超低金利のために消滅してしまった。
・人口が高齢化する中で、年金生活者の所得が予想以上に低下したために消費不況に陥った。

で、結論として、長期金利を下げるのではなく上げることが緊急の課題だと主張されています。
そうすることで、ゾンビ企業を市場から退出させ過剰供給力を解消し、中小企業への銀行貸し出しが増価することで非製造業中心の新たな成長産業が生まれ、高齢者世帯の利子所得が復活して消費も活発になる、と。

いきなり金利が上がったとした時の大混乱(連鎖倒産、株安、住宅ローン破産、etc)を考えると政治的にはかなり無理筋なような気がしますが、超低金利が不況を促進してきた、という指摘は重要なことであるように思います。

それにしても、前日の櫻川教授に続いて、世に喧伝される「常識」論からするとかなり過激に思えるこういった主張が「経済教室」を賑わすあたり、現状の行き詰まり感を象徴している感じですな。
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