苦役列車 | |
西村 賢太 | |
新潮社 |
著者の小説を読むのは「暗渠の宿」に続き二冊目。
前作は野間文芸新人賞受賞、そして本作はご存じのとおり芥川賞受賞作品であります。
正直、「暗渠の宿」に比べてイノベーションがあるかというと特に何も感じられません。
煩悩まみれの人生を自虐的に曝け出す作風は微動だにせず維持されており。
「暗渠の宿」収録の2作品が異性との交わりを題材にしていたのに対して、「苦役列車」は若き日の同性の友人との儚き友情を描いたもの。
異性に対しては虚勢、同性に対しては卑屈、いずれにしてもどうしようもない野郎です(笑)。
表題作の他、もう1作収録されている「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」は、中年になり作家として活動するようになってからの自身を描いたもの。
こちらもしみじみしていてなかなか乙なものであります。
いずれも実に面白いんだけど、しかし、ずっとこの芸風でいって、果たしてネタが持つのでしょうかね…心配になります。