ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ | |
マーク・ジョンソン | |
阪急コミュニケーションズ |
ある企業の中核となる事業領域を「コアスペース」とした場合、その外側にある領域を「ホワイトスペース」と呼んでいます。
企業がビジネスモデルにイノベーションを起こし、ホワイトスペースに進出しようとする契機には、以下のようなパターンがある。
【1】内なるホワイトスペース
・競争の基準が変わって市場に新たな未解決なジョブが登場する。
競争の基準の変化:機能性→信頼性→利便性→価格(=コモディティ化)
・未解決のジョブが見落とされ続けてきた。
⇒既存企業にとって、飛躍的な成長と企業革新を実現する有望なチャンス
【2】かなたのホワイトスペース
・今、顧客でない層(=非消費者)を市場に取り込む。
・非消費者が消費者になることを妨げている障壁を打ち破る。
資金の障壁、技能の障壁、アクセスの障壁、時間の障壁
⇒自社の商品・サービスを「民主化」し、新しい市場を手にするチャンス
【3】はざまのホワイトスペース
・市場の需要に予測不能な、或いは劇的な変化が生じる。
・テクノロジーに予測不能な変化が生じる。
・ビジネス環境に関する政府の政策に劇的な変化が生じる。
⇒変化の前の世界と後の世界の間に、フロンティアが生まれるチャンス
そして、企業がこういったホワイトスペースに進むためには、ビジネスモデルの変革が必要になるわけですが、まず従来の自社におけるビジネスモデルとはどのようなものであったのか、そのことについて明確に理解している企業は多くないと著者は述べます。
「ビジネスモデル」とは一体何であるのか、その点について意識的でない限り、何をどう変えようとしているのかを理解することもできません。
その点が本著の肝であります。
著者は、「ビジネスモデル」という概念を4つの構成要素に分解します。
(1)顧客価値提案
顧客が抱えている未解決のジョブを見出し、それを解決するための商品・サービスを提供する。
(2)利益方程式
企業が如何に自社と株主のために価値を創り出すか。
4つの変数で構成される。
・収益モデル:価格×販売数量
・コスト構造:直接費と間接費(規模の経済を考慮)
・1単位当たりの目標利益率
・経営資源の回転率
(3)主要経営資源
顧客価値提案を実現するための資源
人材、テクノロジー、商品、設備、納入業者、流通経路、資金、ブランド…
(4)主要業務プロセス
持続・再現・拡張・管理可能な形で顧客価値提案を実現するための手段
こうしてまとめられると当たり前のように感じるわけですが、これらのうちのどの要素をどのように変えようとしているのかが分かってないと、ビジネスモデルの変革は的外れなものになる。
そして既存の企業にとって、長年培ってきた利益方程式や経営資源・業務プロセスにメスを入れることは極めて難しいことも指摘されます。
この点は実感としてよく分かります。
「これってうちの会社がやるべきビジネスじゃない」なんてセリフ、よく聴こえてきます。
そうなると最早現場だけではどうにもならず、経営の問題になってきます。
なるほどと思ったのはM&Aに触れた部分。
現実には、買収したビジネスを無理やり既存事業に組み込もうとして、そのビジネスの独自性を壊してしまう企業が非常に多い(そもそも、独自性に魅力を感じたからこそ、その企業を買収したはずなのだが)。
うーん、まったくその通りですなあ。