そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

「謎とき平清盛」 本郷和人

2011-12-25 22:02:05 | Books
謎とき平清盛 (文春新書)
本郷 和人
文藝春秋

今年の大河ドラマは視る気が微塵も起きなかったけど、来年の『平清盛』は今のところ視てみようかなという気になってます。
その予習も兼ねて、ということで手に取りました。
著者の本郷氏は、来年の大河の時代考証を務めている学者さんです。
『平清盛』の時代考証は2名が務めているそうで、本郷氏はセカンダリ。
プライマリ時代考証役の高橋昌明氏とは見解を異にする部分もあるらしく、そのあたりの裏話も本著の中で少し紹介されたりもします。
そのへんも含めて、系統だった歴史書というよりもエッセイっぽく書かれている感じです。

著者は、歴史を叙述する際の手順を以下の4つの位相で考えているとのこと。
 1.史実(歴史事実)
 2.史像(歴史像)
 3.史論(歴史理論)
 4.史観(歴史観)
このへんはなるほどなーと思わされました(十分に消化はできてないけど)。

大河ドラマの中でも大きなクライマックスになるであろう保元・平治の乱。
大学入試で日本史を学んで以来、すっかり忘れてしまってましたが、記憶が甦りました。
皇室・貴族・武士が二手に分かれ、血族同士が争い滅ぼし合った大内乱。
本著では、次のように評されます(第6章)。

保元の乱を語る際、「AとBが対立している、CとDが手を組んだ、Eがいつ、こんな行動に出て、Fはこれに対抗してこう動いた」と説明がされる。それは歴史を実証的に認識するために大切なことです。けれども、そうした小さな史実を漠然と積み重ねるだけで、史像が自然と形成されるわけではない。

ここで何に注目すべきかと言えば、それまでは陰謀とか暗躍とか、外の人間にはまるで分からぬ所謂「コップの中の嵐」として行われていた宮中の権力抗争が、「武力を駆使しての戦闘」という、誰の目にも明確なかたちで解決された、ということ。軍事力が政治をドラスティックに変革する時代が到来したのだ、ということです。これこそが平安時代末、朝廷の政治における史像になり得るのです。

ここで書かれていることこそが、この本が示唆している最大のポイントだと思います。
この後、七百年にわたり続くことになる「武士の時代」の端緒となるエポックメイカーとしての平清盛。
大河ドラマが楽しみになってきました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする