沈黙の町で | |
奥田英朗 | |
朝日新聞出版 |
久々に一気読みしてしまった上質ミステリ。
奥田英朗といえば、伊良部シリーズのようなコミカル系、東京物語のような甘酸っぱい青春系も素晴らしかったけど、それらとはまた違ったクールなテイスト。
圧倒的な筆力と読みやすい簡明さでページを繰る手が止まらなくなる。
不良でもオタクでもないごく普通の中学生集団に流れる空気の潮目が変わっていく様が、恐ろしいくらいナチュラルに描かれる。
そして、生徒たちの間に形成されゆくスクールカーストだけではなく、親や学校、警察、マスコミといった大人の組織エゴもリアルに描くことで物語が重層的な厚みを持つ。
敢えて言えば、閉鎖的な地域社会というテーゼにはあまり踏み込めていない印象。
また、転落死した少年の造型にやや露悪的というかご都合主義的なところがあり、小説全体の空恐ろしさを弱めてしまった感はある。