歴史を考えるヒント (新潮文庫) | |
網野 善彦 | |
新潮社 |
網野さんの本を初めて読みました。
2001年に発刊された新潮選書が2012年に文庫化されたもの。
網野さんは2004年に亡くなっています。
歴史上「日本」という国名はいつから使われるようになったのか、という問いから話は始まります。
多くの日本人がその問いに答えることができないのは驚くべきことではないか、と。
そして、日本国の範囲の話、「関西」と「関東」の話。
我々が現代の感覚で捉えている日本という国の概念がけっして歴史上絶対のものではなかったという、考えてみれば当たり前のことが改めて思い知らされます。
本著のメインは「百姓=農民」という捉え方が誤解であることの解説。
江戸・明治以降に形作られた農本主義的な史観が、現代の歴史教育に根深い影響を与えている、と。
その他、被差別民に関する考察など、なかなか一般にはタブー視されてお目に懸らない論考にも触れることができるのが興味深いところ。
一般の人にとって歴史観というのは学校教育を通じてしか身につかないものなので、思い込みに基づいていても気がつかないもの。
もちろん、この本に書かれているのも史観の一つにしか過ぎないけど、相対的な視点を持つことは重要と思います。