そもそも論者の放言

ミもフタもない世間話とメモランダム

実効的な地方自治とは

2008-07-09 23:24:22 | Politcs
大阪市WTC再建断念 税金600億円投入も(朝日新聞) - goo ニュース

「今後、最大600億円の市民の税金が投入される可能性が出てきた。」

もちろん第一に責められるべきは行政の無能であるのは間違いないわけですが、無謀なハコモノ建設を判断した当時の首長・議員を選挙により選んだのは「市民」であるわけで、ある意味自業自得と言われても仕方のない面はあるかと思います。
が、ここでいう「市民」とは具体的に誰を指すのか、というのはなかなか難しい。
当然のことながら市民の流出・流入というのは常に在るわけで、当時の首長・議員を選んだ「市民」と、今後財政負担により行政サービスの低下などの不利益を被ることになる「市民」はイコールではない。
明らかに周辺市よりも行政サービスのレベルが下がるのであれば、引っ越しして大阪市民をやめてしまうことだって自由にできるわけです。
その意味で、地方自治体の住民の責任と負担のバランスをとることはなかなかに難しい、という気がします。

ところで、そのように比較的軽微な負担で自分の居住地を変えることができる人がいる一方で、なかなかそうはいかない人々もいると思います。
具体的には、地元に根差して商売をしている人など。
大阪市にはほとんどいないでしょうが、農業・林業や漁業で生計を立てているような世帯も、コストが大きすぎて居住地を変えることが事実上極めて難しいケースが多いと思われます。
いくら憲法で居住、移転の自由が保障されていたとしても、事実としての自由度には差があるわけです。
職業選択の自由が保障されてても、雇用の流動性がなければ事実上その権利を行使ししがたいケースが多いことと同じですね。

そのように考えていくと、ずっと昔からその地に住んでいて今後も動く可能性がきわめて低い住民と、腰かけで数年経てば即引っ越してしまうような住民が、地方選挙において同じ重みの一票を持っているということが果たして合理的なことなのか、という疑問もわいてきます。
(実際にはそのような「腰かけ市民」はあまり投票に行かないので、その意見が行政に反映されることもない、というメカニズムが働いてるのかもしれませんが)
といっても、何年も住み続ける約束した住民だけに投票権を与える、などというケータイの割引プランみたいな制度を設けるのは現実的ではないですね。

個人的には、町内会だとか自治会だとかもっと身近なレベルでのコミュニティの意思が地方行政に反映されるような仕組みがあってもいいのかなという気がします。
そういうコミュニティに積極的に参加する層というのは、その地域に深く根を下ろして暮らしている住民と重なるところが大きいように思えるので。
選挙民個人が投票を通じて地方政治に参加するよりも、そういったコミュニティでの議論を通じて得られた意見をより大きなレベルの地方行政に反映させるような、重層的な間接民主制のほうが、地方自治の実効性を上げられるのではないかと。
素人考えですが。
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第二関門通過

2008-07-07 23:10:46 | Society
三菱東京UFJ銀がATM一斉休止、システム完全統合へ(読売新聞) - goo ニュース

何にも報じられていないところをみると、どうやら成功裏に進んでいるようです。
わたしゃ三菱東京UFJ銀行に何の義理もありませんが、トラブルを期待して手ぐすね引いて待ってるマスコミを尻目に第二関門を乗り切ったとすれば天晴れと申し上げておきましょう。
しかしまあ、ちょっとでもトラブれば大騒ぎするくせに、ノートラブルだと全く触れもしないってんだから意地が悪い。

何度も書いてますが、日本人の完璧主義っていい面もあるけど、社会的なコストをかなり上げてるよなあと改めて思います。
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「暗流―米中日外交三国志」 秋田浩之

2008-07-04 23:16:06 | Books
暗流―米中日外交三国志
秋田 浩之
日本経済新聞出版社

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20世紀の覇権国家アメリカ、21世紀に入って急速に大国化する中国、二つの大国の狭間で翻弄される日本。
日経新聞の現役編集委員である筆者が、東アジアにおけるパワーポリティクスの過去・現在・未来を、米中日の要人のオフレコ・インタビューも交えながら骨太に語り切った一冊。
これは本当に面白かった。
300ページ近い大部ですが、一気に読んでしまった感じです。

ここで論じられているのは、筆者も書いている通り、感情的な反中・親中、反米・親米といった切り口ではなく、冷徹で冷酷な国際政治の現実。
経済的にも軍事的にもますます力をつけていく中国の台頭により、資源を持たず牙を抜かれた平和国家・日本のかじ取りは難しくなっていくばかり。
無謀な戦争に突入し、国際政治の無残な”敗者”となってしまった過去の過ちを再び繰り返してしまう危険が、実はそこかしこに転がっていることを実感させられます。

最も印象に残ったのは、元ブッシュ政権高官が語ったという次の一言。

「日本が長期的な対中戦略をきちんと説明し、米国に何をしてほしいのかを明確に伝えれば、米国はかなり応じられるはずだ。だが、日本側からはあまり満足のいく説明がない。」

長期的な対中戦略…
そんなことを考えている人物が、果たして日本に存在するんだろうか?
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落書き処罰のダブルスタンダード

2008-07-03 23:28:25 | Society
日本人の謝罪に「敬服」 修繕責任者、大聖堂落書きで(共同通信) - goo ニュース

大学生の停学や、高校野球の監督の解任(解雇ではないよね?)が「厳罰」なのかどうかはわかりませんが、自分が気持ち悪いなと思うのはこれらの処罰が明らかに「世間体を気にして」行われたものであるように思えるところです。
要するに、世間が騒いだから処罰したわけで、世間に知られないまま落書きの事実を学校が知ったとしてもこんな処罰など行われなかったに違いない。
これって明らかなダブルスタンダードだよね。
で、世間のほうもそういった処罰のやり方を支持しているところがある。
「見せしめ」が肯定的に受け取られているんですね。

自分も、落書きをする人間の気持はまったく理解できないし、こういった件を通じて西洋人と日本人の倫理感の違いが浮き彫りになったのは悪くなかったとも思うんだけど、それよりもむしろ上記したような「世間」の在り方のほうが個人的には気になってしまっている今日この頃です。
コメント (1)
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