武器よさらば (新潮文庫)アーネスト ヘミングウェイ新潮社このアイテムの詳細を見る |
ヘミングウェイの初期の長編。
2006年に出た新訳で読みました。
文庫で500頁を超える大作。
それでも短いと感じた。
特に、主人公フレデリックと恋人キャサリンのロマンスは、説得力を持たされるまでの掘り下げられた描写が不足しているように思える。
が、それはこの小説の主眼が大河ロマンスを描くことに実は置かれていなかったからかもしれない。
この小説全編を通じて流れるのは、寄る辺なき虚無感。
多くの生命が身の回りで失われていく戦争、しかも遠くイタリアの戦地に紛れ込んだ米国人将校と英国人看護師という異国人であるがゆえに強く抱く虚無感。
この虚無感というフィルターを通してみれば彼らのロマンスにまた違った感慨が生まれるような気がします。
突き放したラストも含めて。
特に読み応えがあるのは、やはり主人公が前線から命からがら退却、そして逃亡するシークェンス。
そして恋人とともに手漕ぎボートでスイスに脱出するくだり。
ボートでの脱出シーンは、後の「老人と海」にも通ずる臨場感が在りました。