代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

梯子を外される日本の従米右派 ―在日米軍なき日本を構想せよ

2016年05月07日 | 政治経済(国際)
 共和党の予備選でドナルド・トランプが勝利。
 本選が、トランプvsサンダースだったら私はサンダース支持だった。しかしどうやらトランプvsヒラリーになる。そうであれば私はトランプに勝ってほしい。理由は簡単で、トランプが勝てば、TPPが潰れること、辺野古新基地建設も潰れること、在日米軍の大幅削減が可能になること・・・・などである。

 しかし懸念はある。懸念というのは、アメリカではなく、日本がパニックに陥って、全体主義が復活してしまうことだ。(すでに復活している感じもするが・・・)。
 トランプ大統領が誕生した場合、アメリカは関税を引き上げて内にこもる。アメリカを支配するグローバル大企業は困るかもしれないが、アメリカの労働者から見れば、雇用は安定化するし、賃金も上昇するし、潤沢な関税収入を社会保障にも回すことができ、大学の学費を下げることも可能になり、今より幸せ度を増すことは間違いない。それでよいのだ。

 心配なのは日本の方であろう。日本の支配層がパニックに陥って、理性を失い、全体主義が復活してしまう可能性である。
 私たちが今から準備すべきことは、日米安保なき日本の将来構想を描き、対中国、対ロシアと関係を改善し、在日米軍撤退後の日本の準備を始めることである。

 
 「何が何でもアメリカ様についていきます、貢ぎ続けます!!」という決意だった日本の従米右派は梯子を外されていく。
 今回の大統領選ではヒラリーが勝って、いったんそれを回避したとしても、いずれはそうなることは明らかである。
 これはトランプのような排外主義的な大統領が誕生しても、左派的なサンダースのような大統領が誕生しても、同様に起こる現象である。右派も左派も、アメリカがグローバル資本主義を支配する経済面と軍事面での覇権国であり続けることを拒否し、大陸の中でつつましくやっていく「普通の国」になることを志向しているからだ。
 トランプとサンダースのどちらがよいかと言われれば、それはよりスマートなサンダースの方が良い。しかし、両者は、アメリカがグローバル資本主義の拡張路線を放棄し、強欲な1%の人々の支配を拒否し、モンロー主義に回帰していくという現象の、同じコインの表と裏の差異でしかない。
 
 日本は、パニックに陥ってはならない。トランプが大統領になって、在日米軍経費の全額を日本に支払えと要求するのであれば、「払えません!」と素直に表明して、在日米軍の縮小に舵を切るべきであろう。辺野古基地はもちろん不要になる。

 日本の支配層がトランプ現象に狼狽し、右往左往している今日の姿は、彼らが鳩山政権を潰した報いであり、自業自得だ。鳩山=小沢路線は、緩やかな離米の道を日本の主体的な意志で選択しようとしていた。その日本の選択を、官僚たちが潰し、アメリカに忠誠を誓ったがために、今日のように、アメリカの意志でいきなり梯子を外される可能性に直面して、パニックに陥るという醜悪な事態に陥っているわけだ。

 かつて小沢一郎氏は、「在日米軍は将来的には第7艦隊のみで十分だ」と発言し、鳩山首相も、米軍の思いやり予算の削減に動いた。日本の支配層である官僚機構は、「アメリカ様のご機嫌を損ねてしまう!」と戦々恐々とし、米国のジャパン・ハンドラーの意を受けて総力を挙げて鳩山政権を潰してしまった。
 鳩山=小沢路線で行っていれば、トランプ出現の今日の事態にも、日本の主体的な意志で適応することが可能だったはずである。今日のようなパニックに陥らずにすんだであろう。鳩山氏も小沢氏も、いずれアメリカがモンロー主義に回帰し、世界の警察であることを止めるという未来を見越して外交方針を立てていた。鳩山政権の誕生と、トランプ現象の発生の時期がズレてしまったために、不幸な事態に至ってしまった。


 トランプは在日米軍の駐留経費の日本への全額負担を求めている。在日米軍が第7艦隊のみになれば、その駐留経費の全額を日本が負担しても、現在の思いやり予算の総額よりも少なくてすむだろう。(これは正確な数字はにわかには出せないが・・・・)。アメリカが駐留経費を全額出せというのであれば、まずは第7艦隊のみに縮小するという小沢構想を復活させるべきである。
 
 それと同時に日本がすべきことは、まさに鳩山政権がやろうとしたように、TPPではなく、中国との関係を改善して東アジア共同体を構築し、その中で南沙や尖閣の問題に対処すること。また、日ロ関係を改善し、ロシアと平和条約を結ぶことである。

 折しも、今年の大河ドラマは真田丸。北条、徳川、上杉という三大国の対立をうまく利用しながら、三勢力のあいだを巧みに遊泳しつつ、独立を守り抜いた真田昌幸の姿勢から、日本が学ぶべき点は多い。あくまで「従属するのではなく利用する」という主体性を堅持すれば、日本は飲み込まれることなく生き抜いていける。
 
 

  


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2 コメント

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ほんとうにそのとおりです。長州お得意の「従属」と「従属による支配」に服するのではなく、米国と世界の99%の人びととともに歩みましょう。 (薩長公英陰謀論者)
2016-05-15 13:59:03

 関さん、大津行きご苦労さまでございました。関さんの問題提起が、現在の日本を動かしている「虚構によるからくり」を白日のもとにあばきだしたことと思います。ありがとうございました。

 さて本記事にあります、不格好で卑猥で、魅力ゼロの日本のエスタブリッシュメントの「トランプ・ヒステリー」が懸念のタネである、というご指摘は正鵠を得すぎていて怖いくらいです。
 されば「従属による支配」しか知らないコンテンポラリー長州が、米国の思惑による日英同盟解消後、対日オレンジ作戦の注文どおり踊った兇悪でチンケなファシズム帝国、戦前日本に戻るためには、けだし「天皇制支配」に代わるものが必要であろうかと思います。

 オリンピック利権の邪魔立てをとの桝添つぶしを含む惨めな人心操作の果てに「ヨコスカ・コイズミ・フィーバー」を再現するには、某長州のオートマンはタマが悪すぎるのではないかと思えます。
 破れ太鼓を上貼りしてのアベノミクス成長神話や、対ロ接近とは平仄のあわない対中敵視それ自体は「天皇制支配」の代替にはなり得ず、電通はアタマをかかえているのではないでしょうか。
 モグラ叩きに陥るか、日本会議からヒロイン(ヒーロー?)を降臨させるか、まさかハシゲで騙せるか、大胆なちゃぶ台返しで秋篠宮・紀子夫妻をファシズムのシンボルに・・・きわめて難題です。

 このことはじつは、ノン・エスタブリッシュメントの人びとにとってネガをポジに裏返す絶好の機会であることを意味するのではないかと想像します。

 太平洋の向こうから・・・、サンダース米大統領候補の聞き続けてもけっしてあきない演説は、米国の99%の人びとに対して「真の意味で誇りに価する国をつくることができる」という激励であり、そして同時に、世界の99%の人びと、ヨーロッパやラテンアメリカ、パレスチナ、アフリカ、そして(おそらく)ロシアや中国の99%の人びとに、津波のように?海を越えて、響いているであろうと思います。じつにこれ自体が歴史的な「勝利」であると確信します。

 サンダース候補の呼びかけは1960年代のアメリカを髣髴とさせるものです。
 Wikipediaの受け売りで恐縮ながら、社会政策、公共投資、教育投資、人種差別の撤廃といった政策を公約し、「経済人の公益への責任」を訴えて、鉄鋼業界のカルテル値上げやタックス・ヘイヴンを利用した企業の課税逃避と対決しようとして暗殺されたジョン・F・ケネディ、そのあとを継いで、「偉大な社会(Great Society) 」を掲げて、「War on Poverty」(貧困に対する戦争)を宣言、「公民権法」による人種差別の撤廃をおこない、社会保障や福祉保険の拡大をめざした「経済機会法」、老人医療無料化を図った「医療法」、教育援助をうたった「初等・中等教育法」、家賃補助を定めた「住宅法」を1965年に、天才的と言われる議会操縦によって成立させ、高齢者の医療費を補助するメディケア、低所得者の食費を補助するフードスタンプ、低所得者の幼児の就学を支援するヘッドスタートという今日に至るプログラムを制度化したリンドン・B・ジョンソン大統領を。

 保立道久という歴史家のウェブログ記事に「サンダースの主張で注目すべきものはアメリカ大国意識がないことである。アメリカは世界の文明国のなかでも異様に問題のある国だというのを正面から述べていることである。これはある意味でトランプも同じことをいっている訳だが、トランプにはみずからの社会を内省し、反省するというのではなく、他国のおかげでアメリカは豊かでなくなってしまったという被害者意識のみが目立つ。これに対して、サンダースの主張は、なぜこんなことになってしまったのかという自省を含んでおり・・」という指摘があります。

  第一次世界大戦に至るまでの19世紀の「列強型政治経済システム」は、20世紀の二つの世界大戦と引き続く冷戦に代表される「二大ブロック型政治経済システム」に移行しました。つぎの21世紀は、核兵器の発達と拡散によって20世紀におけるような世界大戦が不可能になったもとで、(1)多極的政治経済システムになるか、または、(2)TPPによるグローバル企業覇権に典型的な、国民国家とは異なったかたちでの統合が出現するか、ということになるのでしょうか。
 今般の米国の大統領選挙において、トランプ候補は(1)を、クリントン候補は(2)を代表しているように思われます。

 しかし、いずれにせよ、保立道久氏の率直な指摘どおりであろうと思われる、ただただデュー・プロセスをあきあきするほど繰り返すのみで、公共の福祉、生存権を内容とする基本的人権の規定をいっさい持たない、各州植民地エリートの妥協で積み木細工のように作られ、老朽化してつぎはぎだらけだなった米国憲法が、サンダースの大統領選を活用した政治的理念的勝利によって、米国の99%の人びとの手で抜本的に改正されることを強く期待します(内政干渉?)。それこそが、(1)と(2)に対する弁証法的代替案を世界の人びととともにつくりだすであろうと。
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トランプの後を受けて? ()
2016-05-17 14:28:08
 核心を突く論評、まことにありがとうございました。

 サンダースは今回は逆転不可能な状況ですが、あの訴えを広範な人々に浸透させ、アメリカ国民(の若い層)の資本主義に対する嫌悪感を決定的にしたという点で、ご指摘の通り、サンダースは実質的に勝利したといってよいと思います。

 この次の選挙で、サンダースを引き継ぐ候補が(おそらくエリザベス・ウォーレンが出てくるのでしょうか)、サンダースの訴えていた「革命」を完成させるのではないでしょうか。
 トランプにとりあえずグローバル資本主義を破壊してもらって、その後の再建過程で左派に委ねるというのが妥当なのかも知れませんね。
 
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