代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

水道民営化詐欺

2018年10月12日 | 政治経済(日本)
 現在、政府が推進している水道民営化がいかに詐欺的か。

水需要が減るから民営化という理屈は正しいのか?


 日本政府は、水道を民営化(自治体が施設は所有し、経営権を民間に委託する公設民営方式)する理由として以下の諸点を掲げている。

(1)人口減少に伴う水の需要の減少
(2)水道施設の老朽化
(3)深刻化する人材不足

 以上三つの課題を解決するために民営化が必要というのである。
 これは論理として成り立つだろうか?

 下の図は大阪市の水道民営化計画から取ったものである。図のように水需要は減少し、供給(施設能力)に対して需要(一日最大給水量)は減る一方。いまや最大需要は供給能力の半分程度になっている。
 そこで水道施設が過剰になってくるので、老朽化する浄水場や水道管などの施設を更新しながら、ダウンサイジング(適正規模への縮小)をする必要があるというのだ。
 
 そこまでは、全くその通りである。
 しかし、そのために民営化が必要というのは誤りである。民営化は、上記三つの問題を解決するための必要条件では全くない。むしろ民営化は、これらの課題を解決するためにはマイナス作用しか及ぼさないだろう。
 公営を維持したままで、老朽施設の更新など必要な措置は財政資金を投入して行えばよいだけである。
 


出所)大阪市水道局(2014)「水道事業民営化基本方針」第一部基本制度編
http://www.city.osaka.lg.jp/suido/cmsfiles/contents/0000261/261507/kihonhousin1.pdf


水需要は減る一方なのに、なぜかダム計画があると右肩上がりで上昇と予測される


 老朽水道施設更新のための費用はどこから転用すればよいのか?
 ムダに投じられている利水ダム予算を削減し、そこから転用すればよい。

 全国的に水需要は減少の一途をたどっているにもかかわらず、なぜかダム建設がある地域においては法外な水需要予測がなされ、そのもとでダムが強引に建設されている。
 以下の週刊「SPA!」の記事でも取り上げられている長崎県の石木ダム建設計画における水需要予測は以下のようなグラフである。
 水需要の実績値は右肩下がりで下がり続けるのに対し、佐世保市の水需要予測はなぜか右上がりで、だから石木ダムが必要という、メチャクチャなものである。
 しかも、ムダなダムは建設する一方で、老朽化する水道管は放置され、ボロボロになって漏水を起こしている。ダムを造るのではなく、その予算で水道管を更新し、漏水を減らせばよいだけなのだ。


週刊SPA! 2014年12月23日号

 
 佐世保地区の実際の水需要(黒)と佐世保市の水需要予測(赤)

出所)石木川守り隊HP
http://ishikigawa.jp/what/


ダム予算をなくせば、全国すべての老朽水道管を更新可能

 日本ではとてつもなく矛盾した事態が同時進行しているのだ。水需要の減少は全国一津の現象である。
 しかるに、水道を民営化したい自治体では、「水需要が減少するから民営化せねばならない」と主張し、前提は正しくとも、解決策がまったく解決にならないトンチンカンな主張をする。
 他方で、ダムを建設したい自治体では、水需要が増加するという、事実そのものも全くのデタラメ、ねつ造の予測をし、全くムダなダムに湯水のごとく予算を投じている。



出所)国交省資料より作図http://www.mlit.go.jp/river/basic_info/yosan/gaiyou/yosan/h28/h28damyosan.pdf


 上のグラフのように、安倍政権になってから、ダム建設予算は右肩上がりで上昇している。
 利水では全く不要であるのみならず、治水面においても、今年の西日本豪雨でも示されたように、温暖化時代の集中豪雨に対してはダムは無力。かえって緊急放水で被害を拡大させるような迷惑な構造物でしかない。

 ダムに投じられている年間2340憶円ものムダ金を、老朽水道施設の更新に転用すれば、問題は解決するのだ。民営化はもちろん解決策ではない。必要なのは、ムダなダムを造り続ける「官僚主義型公営」ではなく、市民の声を反映させた「市民参加型の公営事業」なのだ。人口減少時代の公営水道経営のために、必要なのは予算の組み替えである。



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