代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

鶴見俊輔さんと岸信介首相

2015年08月04日 | 運動論
 りくにすさんと岸信介元首相の「サイレントマジョリティ論」と、先月にお亡くなりになった鶴見俊輔さんの「ファシズムに対抗できるのは欲望むき出し個人」という議論との関係について、以下のような対話がありました。鶴見俊輔さんの追悼をかねて紹介させていただきます。水色字がりくにすさんのコメントです。

>岸首相が「サイレント・マジョリティ」論を展開して甲子園球場で野球を観戦したり、銀座でショッピングしたりしている人々を岸首相は勝手に味方とみなしましたが、翌日「俺はプロ野球ファンだが安保には反対だ」とか「安保反対声なき声の会」といったプラカードが登場したそうです(井上静さんのツイートより)。
 で、60年安保当時に戻ると、野球を見たり銀座にいる人は「近代の呪い」にかかっていない、条件次第で敵にまわりかねない人々だ、という見方もできなくはない、と言えるのかなと変なところをぐるぐるまわっています。議事堂に人が集まるようなら「日本」はまだ見放されていないといえるかも。


 先日、お亡くなりになった鶴見俊輔さんの発言の中にに、これと関連する議論がありました。鶴見さんが、漫画の「がきデカ」を高く評価した論評をした際、「自分の欲望に従って生きようというがきデカが増えたことがファシズムの防波堤になる、と思う。簡単に、命令一下の体制に追い込むわけにはいかないですよ」とおっしゃっていたそうです。

 以下のサイト参照。
http://withnews.jp/article/f0150724004qq000000000000000G0010401qq000012291A 

 岸信介元首相と鶴見俊輔さんは、全く違う立場から、「国家に縛られない自由な個人」に期待していたわけです。これは興味深いかも。
 しかし、戦中にしても、国家には縛られない欲望大好き個人はたくさんいたと思いますが、赤紙が来れば否応なく「陛下の赤子」になって戦場で死んでいったわけです。所詮、「自由な個人」も強大な国家権力の前には無力だと思うと、この問題では岸信介の洞察の方に分がありそうに思えます


 鶴見俊輔と岸信介の違いは、「欲望」のなかに「政治」が含まれると思っているかどうかだと思います。
 「国家に縛られない欲望」の中に国家に物申すことが含まれるというのはアメリカ的だ、と思いますが、この国では政治が何とも特殊な事柄になっているのです。
 SEALDsの集会に行こうとする若者向けの「デモに行くと就職がなくなる」といった物言いなどにそれが現れます。
 つまり、大人たちが気に入らない事柄に口を出すと「わがまま」「生意気」と言われ、「政治に口を出すな」と言われてしまうのです。庶民には「政治は汚いものだ」と教えておきながら、自分たちは欲望で国や企業を好き勝手に動かしたりしている。そうやって抑圧的に育てられているから、普通の人はよほどのことがないと政治に物申すなど思いつきもしないでしょう。



 なるほど。さすが、りくにすさん。
 「国家に縛られない欲望」の中に「国家にモノ申すこと」ことを包含しているのが鶴見さんが期待する「ファシズムの防波堤になる欲望むき出しの諸個人」で、欲望に従いつつも国家には無抵抗なのが岸さんが味方と期待した「サイレントマジョリティ」というわけですね。ありがとうございました。

 鶴見俊輔さんの人生は、まさに「国家に縛られず、かつ国家にモノ申す自由人」としての生涯であったように思えます。しかしながら、私がどうしても腑に落ちない点が、その鶴見さんでさえ、第二次大戦中は日本の戦争に協力してしまっている点でした。鶴見さんは、ハーバード大学を卒業後、「アメリカで収容所送りになるか日本に送還されるか」という選択を迫られ「送還」を選び、なお帰国後は海軍軍属に志願しててジャワ島に派遣されて日本の戦争に協力してしまっています。徴兵されて前線に送られるよりは、海軍軍属であれば前線で人を殺さないですむということなのでしょうが、鶴見さんですら軍国主義にモノ申すことはできなかったわけです。やはり「国家に縛られない諸個人」がいくら増えても、それだけではファシズムに対抗するのは難しいのではないかと思います。

 別件で、りくにすさんが気にしておられた「デモに行くと就職できなくなる」という言説が流布されている件です。私の周囲を見てもかなり効果的にデモを行くのを防止する機能をはたしているようです。「デモに行きたい」と言っていた学生も、それを聞いてけっこう尻込みしていますから。実際には企業の人事に、そこまで個々の学生をチェックする能力などあるわけないですし、まともな企業であれば、かりにそれを知ったとしても、能力がある学生ならばそんなこと気にせずに採用するものです。しかし、こうした言説が流布されるだけで委縮させる効果は結構あるようです。

 政府による国民監視体制が強まって、安倍長州的専制レジームが強化されれば、本当にデモに行くだけでさまざまな不利益を被る事態にまでなってしまうかも知れません。そうさせないためにこそ、いま声をあげなければならないと思います。

 またもう一つ気になるのが、反安倍政治の側の大人たちの中に、けっこうSEALDsの学生たちの主張を批判をしている人が多いことです。それを傍で見て幻滅してしまいます。誰がどのような主張をして運動しようが、それぞれで良いでしょう。そんなことにエネルギーを割くヒマがあったら、安倍政権の批判に費やすべきでしょう。SEALDsの学生たちを批判してみたところで、「ファシズムを防止する」という観点からは何の足しにもならないと思います。

 下の世代がすることに、ことごとく抑圧的に対処してしまう大人たちこそ恥ずかしい存在です。

 「自分の考えとちょっとでも違うとその差異を批判したくなる」というクセがある頭デッカチのインテリ左翼、実際には彼ら自身がファシズムの味方なのだと思います。彼らは、抵抗する人々の側を分断し、結果として権力を利しているだけですから。私自身、たまに日本共産党を批判するようなことを書いていますが、それはまさに彼らのその傾向に関してです。保守層や自民党の一部と手を握れた沖縄や大阪での経験を他地域でも広げてくれるのであれば、批判などする気は毛頭ありません。私は基本的に、権力者を批判すること以外には、いっさい余計なエネルギーを割きたくはありませんから。
  

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3 コメント

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「ポスト安倍総選挙」 (通りがけ)
2015-08-04 22:03:34
「エスカレーターで歩かないバカ者ども」nueq labさんへ投稿
http://nueq.exblog.jp/20276833/

さて、安倍とオバマが共同声明を出したことでわかるように、安倍はすでに吉田茂が世界の目を盗んで結んだ日米安保密約とまったく同じやり方で日米TPP密約にひそかに署名調印しています。なぜわかるかというと、日本のテレビは120%嘘八百しか放送しないから、交渉不調と報道すれば実は日米が合意したというのが真実なのです。簡単でしょ。
これで安倍晋三の役目はすべて終わったので、すぐに内閣総辞職衆参同時総選挙が行われます。
ここでイスラエル直轄スパイ総務省内乱罪憲法破壊テロ選挙でイスラエル悪魔王が総理に選出するのは橋下徹です。多くの小政党が乱立する大混戦を演出して、僅差で衆議院議員に出馬した橋下徹を党首とする維新の党が第一党になる猿芝居が予定されています。
この選挙で必ずイスラエルスパイ日本政府総務省はムサシとNHKを大車輪でフル回転させてきます。NHK解体はもう時間不足で間に合わないから、今度の選挙ではムサシを集中的に攻撃して使用不能にする作戦が良いでしょう。
そこでムサシを現場の選管が今後使えなくするために「幸せの和」を日本中に拡散しましょう。
http://image52.bannch.com/bbs/787532/img/0262596974.pdf
日本国憲法前文「正当な選挙」の具体的実施方法が詳しく書いてあります。これでフリーメーソンスパイ日本政府を完膚なきまでに叩いてこの地球から消滅させることができます。「神童の国」の日本人ならこどもでも幸せの和を見れば即座にこの世の悪魔イスラエル武器商人フリーメーソンを宇宙の外へ追い出すことができるのです。

「日本国憲法の正当な選挙」
http://08120715.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/post-d332.html

日本国総務省選管が所轄するすべての公職選挙住民国民投票審査の投票場で、日本国憲法主権者国民のあなたの投じた「大切な一票」を、選管の役人と公務員が徒に損なわないように監視する方法が書いてあります。今後すべての投票権の行使を行う機会には、投票場へこの文書または最後に記載した参考文書「幸せの和」pdfを印刷してご持参になって、公明正大な日本国民であるあなた様の清き一票の投票という日本国最強の国民主権の行使を済ませておいでください。
____________________________________________

 日本国憲法前文「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」にある通り、日本国憲法国民主権の根幹は公正で不正のない国会議員選挙である。

 しかるに2012年12月16日衆議院選挙は総務省選管と総務省NHK共犯で不正な選挙管理が行われた日本国憲法違反の重大刑事犯罪内乱罪選挙であった。

 日本国憲法を誠実に遵守する我々国民は憲法が主権者国民に保障する基本的人権直接参政権を行使してすべての公職選挙を以下の如く監視し選管行政執行において日本国公務員による違憲な犯罪不正行為がないよう投開票場現場で日本国君主である国民が下僕公務員を直接監視監督監査する。

--------------------------
◎2012年12.16投票場の鉛筆は選管の投票妨害という憲法違反犯行だった。 鉛筆文字は最高のセキュリティロックがかかった公文書投票用紙には不適切の極致である。選管に鉛筆記入強要犯罪を止めさせてすべての投票場に油性(ボール)ペンを用意させよ。

◎期日前投票箱は期間中午後8時から翌朝8時まで指紋認証電子ロックで封印して所轄警察署長室金庫に保管せよ。投票日には夜8時まで警察で保管すること。

◎開票仕分け計数機の導入は総務省の随意契約談合公金横領汚職犯罪であるから選挙での計数機使用を違法行為として厳禁し、もし各地選管で開票仕分けにムサシ等の票自動仕分け機械を使用すれば総務省の憲法違反と汚職を現行犯で警察へ告発する。

◎仮に開票仕分け機を使用したならば、必ず公務員の手作業で機械仕分け後の全票目視確認検査を立会人の監視ビデオ全録画のもとで公明正大に行え。 この全票手作業目視検査票最終確認を省略すればただちに当該開票場の憲法99条違反選挙妨害罪公務員全員を刑訴法現行犯逮捕し、主権者国民が直接参政権を行使してすべての開票目視検票確認作業をDVD全録画記録のもとに現場で警官へ命じて緊急代行させる。

◎投票および開票は同一会場で市民の立ち会い監視全経過ビデオ記録のもとに各会場毎すべて公務員の手作業で行え。

◎各開票所の集計結果を中央選管にファックス送信して中央で全体集計し開票率100%で初めて当選者確定発表せよ。 全開票終了当選確定前の途中経過情報には厳重な公務員守秘義務がかかっていることをすべての日本国公務員は忘れるべからず。

◎臆測流布(風評被害)当確速報報道を全テレビ局に対して絶対禁止とし、抜け駆け当確速報報道があればそれは中央選管公務員守秘義務違反リーク犯行の証明である。その場合直ちに全集計場で開票作業停止中断、それまでの集計結果を破棄し、全開票場で最初から全票公開手作業で徹夜で再計数とする。違法な当確速報したテレビ局は守秘義務違反の刑事犯罪で逮捕し、即座に放送免許取消処分に付す。

◎各投開票場で投票時間の恣意的な短縮又は場外に投票者の列があるのに定刻で投票場を閉鎖すれば、公僕公務員による主権者国民に対する日本国最強の主権行使である投票行為を妨害する憲法99条違反犯罪(内乱罪)であるから、妨害行為を行った公務員を全員現行犯逮捕したうえですべての来場主権者国民に憲法主権の行使である投票行為を時間延長を行っても完全に完了せしめよ。これが一票の重みの平等である。

◎国政選挙国民審査実施においては選管はすべての投票用紙に不正流用防止のため日本銀行券と同様に1番から2億番までの機械読み取り通し番号を印刷しなければ、偽札作りと同等の内乱罪である。必ず通し番号印刷せよ。通し番号シリアル番号印刷の無い投票用紙は無効であり、それを用いた選管は全員内乱罪で逮捕し、すべての選挙はやり直しとする。

≪憲法99条違反内乱罪選管NHK共犯不正選出憲法違反外患誘致罪国賊総理安倍を憲法70条懲戒罷免せよ!≫
≪99条違反内乱罪選管1216同日最高裁裁判官国民審査も不正審査である。直ちに再審査せよ!≫
≪最高裁裁判官国民審査の投票において主権者国民はすべての裁判官を油性ペンでオール×印記入し全員不信任懲戒審査全員罷免せよ!≫

以上、日本国君主主権者勤労納税国民が直接参政権を行使してすべての日本国公務員公僕に対し、選挙で上記の日本国憲法違反内乱罪を塵ひとつも起こさぬよう厳重に警告する。

---附記:日本国憲法第10章 最高法規---

第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
 2 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。


以上、出典元は幸せの和FAXを参考にした。
http://image52.bannch.com/bbs/787532/img/0262596974.pdf
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<ここもとの弊投稿が高頻度であることを心苦しく思いつつ>  ほんとうにそうです! まさかあの「アクト・オブ・キリング」が、ゆめゆめ日本で起きることがないように。 (薩長公英陰謀論者)
2015-08-08 03:07:58
 関さん、「ノーマン取りかかり報告」を記事に取り上げていただいて望外の幸いに思います。
 松平忠固、赤松小三郎、それに小林一茶、かのハーバート・ノーマンと、期せずして信州にゆかりのある人々の名前が並びましたこと、不思議な感じがいたします。

 ノーマンを手がかりにして、あらためて維新近代化と現代(現在)について蝸牛の歩みで考え、何らかの報告に至るまでは鳴りを潜めるつもりでした。
 しかし、「・・・皆殺し」という手書きプラカードが登場した旭日旗デモによるものでしょうか、日本の社会が「アクト・オブ・キリング」化してゆきつつあるとツィートされたことに胸を突かれて(参照:山崎雅弘氏ツィート@8月5日 )つい本投稿に至りました。

 2015年08月06日付記事「アメリカが盗聴を止めないのであればTPP交渉から離脱すべきである」非常に有益でした。お礼を申し上げます。

 日本の円安操作と一体の異様な金融緩和は、金融緩和余力がなくなったアメリカ筋の指示によるものかと思っておりましたら、TPPで為替操作禁止が真っ向から持ち出されるとはやはり、と・・・円安反対の米自動車業界の差し金によるものか、むしろ為替投機を自由にやりたい金融筋の思惑なのか・・・TPPをめぐって米国サイドにおいてかなりの齟齬があるのではないかと見受けます。

 すでに情報操作と言う以外のものではなく、せいぜい逆読みするしかないマス・メディアの報道では覆い隠される実情を早速お伝えいただきありがとうございました。なるほどTPP昏迷・・・まさかそこから、戦争法案と同期して「日米FTA」に一気に飛ぶとか。

     ☆☆☆

 りくにすさまと関さんのやりとりを拝読して、はるかむかし、10代の終わり頃に、新緑の溢れる教養部の小さな教室で、痩せぎすの疳の強そうな憲法の先生から聴いたやに思える言葉がアタマを横切りました。

 「国家からの自由(= ジョン・ロック風「 liberty 」)」と「国家への自由(= ルソー風「 liberte 」)」です。

 りくにすさまの言われる、国政に対して公然と発言して意見を反映させようとすることの自由、おそらく、反ナチス・レジスタンスを闘った詩人、ポール・エリュアールが歌った有名な「リベルテ」、これなくして国家の専横抑圧からの解放=「リバティ」が結実することはない、と膝を打ちました。

 一見、正反対のように見える「国家からの自由」と「国家への自由」は、この二つの自由の弁証法的な統合運動のなかでのみ成立しうる、ということかと理解しました。
 ほんとうにそうです!これを「自由に関する、りくにすさん原理」と名づけてはいかがでしょう。

 思いますに、甲子園球場で熱狂する観客たち、銀座をショッピングに歩く人々、・・・岸信介氏の鋭い目には「国家からの自由を行使している人々」には映っていなかったのではないかと思います。
 おそらく「注文どおりに嬉々として嵌められた人々」に見えていたのでは。スポーツを含めてあらゆる勝負ごとが苦手で、自ら足を運ぶ銀座は「七丁目ライオン」のみの、不器用な偏屈からの凡なやっかみでしょうか。

 「国家」が荒れ狂うとき、その風に媚びず、身にあったやり方で「それなりに」支配に立ち向かい自由を脇の下に抱え持つことこと、その一つの例を永井荷風が示していると思っておりました。

 しかしいま、議事堂前で声をあげる人々は、国家が国民(つまり、国)から乖離して、その対立物となってしまったことを一人ひとり全身で弾劾することによって「国家への自由」が行使できることを示しています。

 それによって、国家が人に人を殺させること、つまり外では殺戮と破壊の「戦争」をすること、内ではあの「アクト・オブ・キリング化」することを精一杯の声をあげて防ごうとしています。永井荷風ができなかったことを。
 
 しかも、個人があくまでそれぞれ個人でありながら、その力をあわせてそうすることができること、これを若者たちが突然に、湧き出る躍動によって示してしまいました。そして、波がミドル、オールズ、むろんレディーズへと。偉大なことではないでしょうか。

 緑から漏れてくる光を抱く友たちに囲まれていたつもりだった頃の記憶に戻り、立憲主義こそ、民(国民=ネィション=民族)の「国家への自由」の決定的で唯一の平和的な武器だったということを思い出しました。

 専横的権力は、自分たちをチェックし制約する規範・ルールを打毀したいがために憲法を否定し立憲主義を排斥します。
 そして民に対して守るべき約束というのは存在しない、自分たちの恣意以外に正義は存在しない、つまり法的安定性を意に介さないと、まるで、自分たちが武器を取って力ずくで権力を獲得したかのような「覇者幻想」に惑溺して言いつのるわけです。自分たちより強いものには、「超憲法的存在」として拝跪しながら。

 SEALDsのアピール「憲法守れ!」の射程の深さに気が遠くなります。

 ここで、ガメ・オベール氏のウェブログの「初めて立てられた柱のそばで August 4, 2015 」https://gamayauber1001.wordpress.com から抜粋引用します:

「 日本社会は20年の停滞と、覆えなくなった衰退の苦しみを通じて、おおきく変わりつつある。遠くから見ていて、最も顕著な変化はいままでの攻撃的糾弾的な口調が疎まれだして、古く感じられて、『議論をしたい』『自分の意見を聞いてもらいたい』という自由社会ができあがっていくには絶対に必須の姿勢が若い世代を中心に生まれてきたことだとおもう。

  これだけたくさんの、急進的右翼、体制側、反体制側、リベラル・・・あらゆる階層の「ガミガミおっちゃん」「皮肉屋おじさん」「軍人口調の軍師気取りおやじ」たちに囲まれながら、まっすぐに自分が保持している自由の主張に向かった若いひとびとの魂は、他国、とりわけアジアの若い世代のなかにおおきな共感を呼んでいる」

 「『日本人は苦しいときだから、嫌韓や反中の、少しヘンな方向に向かってしまったのは仕方がないんだよ、ガメ、わたしたち中国人や韓国人の学生は、まだもう少し様子を見るべきだと思ってる。日本人は、バカじゃない。必ず判ってくれるときがくる』と述べたアジア系学生たちの言葉は、おどろくべきことに真実だった。若い人達は、まだ香港や北京、京城の学生たちと初対面で顔をあわせる前なのに、すでにお互いになくてはならないほど気持ちを通いあわせてしまっている」

 「 民主制が壊れてしまうのが先か、かろうじて踏みとどまって、民主制という容れものが戦後70年間、『国民的情緒』として湛(たた)えてきた澱んだ全体主義に、自由主義の新しい、冷たく透明な水がいれかわっていくか、時間との競争で、はらはらするような気持ちで見ています」

 ・・・と。

 土地勘のないところで、高校生レベルの「歴史的知識」にすぎないことを白状して、たしかスターリンに覆された「反ファシズム統一戦線」を今こそ、と身の程知らずに思います。むろんガメ・オベール氏の示唆する国際的連帯のもとに、そして国内では、自民党内のリベラル派を含めてはどうかと。

 と、考えていたところ、SEALDsの中心メンバーの一人の発言に驚愕しました。「とりあえず、『自民党内で』安倍首相ともっとも対立している人に首相になってほしい」と(参照:2015年7月29日、東京新聞「こちら特報部」『誰にも任せられぬ』)。

 まちがいなく政治音痴だの「やっぱり右翼」だの何のかんのとひどく叩かれたであろう、この左翼OBにはまさに「失望的」だった、この発言の高度で洗練された政略的聡明さに舌を巻き、低頭してシャッポをぬぎました。逆立ちしようがかないません。

 この路線のさまざまな意味での現実的威力はさることながら、何はさておき、りくにすさまご懸念の「デモに行くと就職できなくなる」という学生たちの杞憂を吹き飛ばすものではないでしょうか。

 関さん、たしかに日本共産党のピグマリオン・コンプレックスには思わず焦慮に駆られます。

 時として「共産党の人たちは、まさか世の中の不幸を、自分たち(だけ)が正しいということを立証するものだと考えているのではないだろうね」とか
 「何はともかく世の不幸に対して闘う、というのではなく、何にせよ『自分たちの正しさ』のために闘う、ということにはなっていないよね」と、つぶやきたくなるときがあります。

 それはそれとして、考えてみれば他の勢力が日本共産党に継続的共闘をはたらきかけたことがあるでしょうか。つねに仲間はずれにされる(共産党だけは、と差別にさらされる)がゆえに、頑強に自分たちの殻に閉じこもるのはむしろ当然のことのように思います。
 見ておりますと、SEALDsはそこを軽々と乗り越えてしまったのではないでしょうか。

 そうです。自民党内の反戦平和勢力に瞼をあげてもらい、へたをすれば経済界にまで輪を拡げるということ(おそらくこれがキィかと推察します。第一、これで就職の心配は霧消しますね)これが「未来によって誰よりも愛されている」素敵な若者たちには可能ではないかと思えます。
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デモと選挙の雑感 (りくにす)
2015-08-09 23:31:39
恐れ入ります。ルソーの「一般意思」の説明もうまくできませんのに。
まず、「デモに行くと就職できなくなる」についてですが、
・人事課は応募者がデモに行ったか確認できるほど暇ではない。
・公安警察がデモ参加者の写真を撮るのは、過去に捕まえた過激派がいるかどうか確認するためで、すべての参加者を把握・照会できるようにはなっていないらしい。(委縮させる効果は狙っているが)
・デモに参加するような学生を嫌うのはブラック企業だから、そんな会社に嫌われるならむしろいいことだ。
・自分だったら「就職できなくなる」と言われてデモに行くのをやめるような学生は取らない。
などの意見がツイッター上に流れております。

SELDsのメンバーについてはいろいろ中傷というか憶測がされていますが、「どこかの回し者」であるかどうかよりも、将来ヘンなのにとっつかまらないか、の方が心配です。自民党からだってスカウトが来そうです。奥田さんレベルは引っかからないと思いますが、3.11以降、国会や経産省まわりでデモがあると「顕正新聞」を配る人が必ず現れるようになりました。日蓮宗系の「顕正会」というカルトですが、「北朝鮮が攻めてくる」などと主張するようなタカ派で、入信すると自由な時間を布教のために使うことを求めてきます。不安でやむにやまれずやってきた人が受け取ると危険です。

また、不人気な政策を強行した後も選挙では投票率が上がらない、または自民党が一定の議席をとる、という不思議な現象もあり、昔ながらの革新政党の悩みの種になっています。政権交代があればあったで官僚とアメリカが協力しないので成功しないようになっているらしい。だからと言って官僚を攻撃すると小泉純一郎の郵政民営化論と同一視されそうです。産業界より官僚の方が難物ではないでしょうか。

ガメ・オベールさんがアジア系学生の声を紹介してくださいましたが、私は世界中の日系市民の目が母なる国をどう見ているのか気になっています。国会で中国を「仮想敵国」としていたことがばれた翌日に原発へのミサイル攻撃への備えが想定さえされていなかったことが分かったり、オリンピック準備のドタバタぶりなど、どう思われているのでしょう。
ガメさんのお友達は日本を買い被ってます。今までの日本は運がよかっただけと思った方がいいかも。



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