代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

おんな城主直虎はおもしろい

2017年04月30日 | 歴史
 今年はブログがあまり更新できずに申し訳ございません。
 大河ドラマ「おんな城主直虎」、視聴率が低いなどと言われて、あちこちで dis られているようだが、私は名作だと思う。(少なくとも第17話まで見る限りにおいては)。登場人物たちの個性もはっきりしていて、生き生きと描かれている。小野政次など、その人の描き方の脚本も、それに応える役者の演技力もすばらしい。

 また時代背景の描写として、戦国期の百姓・商人・領主の日常の関係性を、ここまで描こうとした時代劇は初めてではないだろうか。隠田、逃散、徳政令、寺領寄進、戦乱による労働力不足、戦場での人身売買、百姓の識字率、綿花栽培・干鰯の普及・・・・・これまで劇中で扱われてきたトピックを並べてみても、これまでの戦国ドラマでは描かれてこなかった斬新な視点であろう。こうした「社会史」的な側面を掘り下げようとする姿勢は、合戦を中心に描いてきた従来の大河とは異なり、戦国ドラマとしてはエポックメーキング的な作品といえるのではなかろうか。合戦描写などなくても、これでお腹いっぱいである。

 戦国時代の領主(国衆)がもっとも恐れたのが百姓の逃散であること、人手不足が深刻で戦のたびに人身売買が行われていたこと・・・など、領主側、百姓側、また商人側のそれぞれの目線で、戦国期の社会を深く掘り下げようとしている。 戦国時代の百姓たちの領主への抵抗から、新技術への取り組みまで、「支配される民衆」というステレオタイプを超え、領主と駆け引きを繰り広げつつ、したたかに生きる人々のたくましさを描いている。

 戦国期の三河・尾張は、綿花栽培の先進地域であり、それがかの地域から天下人が出たことと何か因果関係があるのかも知れない。しかし、そうした新技術の地域社会への普及過程が描かれたドラマなど、これまで見たことがなかった。

 昨年の「真田丸」、百姓・地侍・領主の関係性をもう少し深く掘り下げてほしかったと、じつは、そこだけ少し残念に思っていた。戦国期の村落社会の描写としては、真田丸では、第3回の真田郷の入会権紛争や、第12回の春日山城下の入漁権をめぐる鉄火起請裁判のエピソードがあった。しかし全編を通してもその程度で、せっかく百姓代表キャラとして堀田作兵衛なども登場していたのに、百姓と領主の関係はあまり深く掘り下げられなかった。前作で消化不良気味だった部分を、本作は見事に描き切っている。

 


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2 コメント

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「直虎」いいですよね! ()
2017-07-27 23:02:43
 歴史小説ではなく、歴史学が好きな人の支持は厚いように思います。網野史学以来の歴史学の成果をこのようにしっかりとエンターテイメントにまとめ上げているのが素晴らしい。
 NHKでは大河ではありませんが、タイムスクープハンターもよかった。
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南さま ()
2017-08-23 23:18:54
 同感です。脚本の森下佳子さんの力量に負うところが大きいと思います。大河史上に残る名作ではないかと思います。
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