代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

保育園の民営化

2006年05月26日 | 運動論
 5月22日に、横浜地裁が「横浜市の性急すぎる保育園民営化の手続きは違法」と判断し、保育園児の保護者一世帯あたりに10万円づつの賠償を認める判決が出ました。先月の4月20日には、やはり大阪高裁で、大東市の保育園民営化によって子供達が損害を受けたとして市に賠償を命じる判決が出ています。
 
 というのも、私の子供の通う保育園も民営化の対象になっていて、大揺れに揺れているのです。最近の一連の判決には、大いに勇気付けられました。大東市や横浜市で裁判を闘った原告の皆様に深く感謝いたします。

 公立保育園に通わせている途中なのに、いきなり民営化して保育士さんたちを総入れ替えしてしまうというのですからメチャクチャです。それまで馴染んできた先生たちがいきなり全員いなくなってしまって、子供たちは混乱し、精神的にも大きな打撃を受けてしまうケースもあるようです。
 
 私のつれ合いは、たまたま保育園の民営化計画が発覚した年、くじ引きで父母会の役員に当たってしまっていた関係で、神経をすり減らしています。つれ合いは、議員や行政との交渉で矢面に立つことになってしまって、一家だんらんの時間もすっかり減ってしまいました。

 つれ合いは、いま保守系の市議会議員を一生懸命回って、少しでも味方にしようとしています。なかなか大変みたいです。保守の一角を切り崩さない限り、運動は必ず負けてしまいます。

 保守系議員が民営化に賛成するのは、「労働組合憎し」という感情が全面的にあるようなのです。組合は、当然のことながら労働者の権利を守るために民営化に反対しています。要するに民営化によって組合を潰し、年配の保育士さんの首切りを容易にする。つまりは保育士の「使い捨て」化を進めて、人件費を削減しようというわけです。これじゃあ、保育の質も落ちますよ。
 
 保育園の父母会は、「子供を守るために」という立場で運動しているので、もちろん労働組合とは別行動です。ところが、父母会の立場で議員と交渉に行っているのに、いきなり「組合はわがままだから。利権集団だから」などとお説教されたりするとか。でも労働組合を「利権集団」呼ばわりする保守系の議員も、建設業界や農協なんかの「利権」は断固として守らないければならないと思っているみたいだからアラ不思議。
 保守系議員の中にも「アメリカ言いなりの小泉構造改革大反対」という議員は多いです。そういう人たちは是非味方になってもらわねばなりません。父母会が地道に活動していたら保守系の議員さんにも理解者は増えてきたそうなので、今回の裁判結果ともあわせて、少し希望が見えてきています。
 
 小泉改革によって脅かされる、地方の建設業界だって、農協だって、労働組合だって、みな社会の安定装置として機能してきました。前二者が保守政党支持で、後者が革新政党支持だからという理由で、前者は後者を叩き、後者は前者を叩き、お互いを潰し合っているのが現状です。その結果は、まさに市場原理主義者の思うツボ。
 それぞれ、利権集団化した側面は正さねばなりません。その上で、社会の安定装置としての本来の機能を取り戻さねばならないのだと思います。


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2 コメント

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TBありがとうございます (dr.stonefly)
2006-05-29 01:16:00
はじめまして、保育園の民営化反対運動お疲れさまです。

今、子育てが大変であろうなか、現実に闘われていて頭の下がる思いです。自分の子どもの権利を守ること、自分の保育園の子どもをことが、ニホン全体の子どもの権利を守ることに繋がり、「大人の責任」を果たすことだと思います。

ワタシの子どもは今春卒園しましたが、ワタシは「大人の責任」としてできることをしようと思っています。
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dr.stonefly様 ()
2006-05-30 06:04:31
 dr.stoneflyさまの緻密な分析に感心してTBさせていただいたのですが、ご丁寧にコメントまで下さってありがとうございます。



>自分の子どもの権利を守ること、自分の保育園の子

>どもをことが、ニホン全体の子どもの権利を守るこ

>とに繋がり



 本当におっしゃるとおりです。うちの保育園の父母会でも、「何とか自分の子供が卒園するまで民営化を先延ばしさせよう」といった条件闘争に持ち込もうとする意見も強くて・・・(苦笑)。

 保育士さんたちを「使い捨て」にしようという思いやりの欠如した保育行政の下で、子供たちに「思いやり」や「やさしさ」の精神が育まれるとは思えません。

 「競争」「蹴落とし」「自分さえ儲ければよい」「利潤最大化こそが・・・」といった意識が幼少の頃から埋め込まれていくようになってしまうでしょう。

 今後ともよろしくお願いいたします。
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