しばらく忙しくしているうちに時事問題を全く書いておりませんでした。共謀罪のこと、米国産牛肉再開のこと、政府系金融機関のことなどは、他のブログでもよく書かれていますので譲ります。この間の出来事の中で、私にとって一番心配だったのは、WTOのドーハ・ラウンドで「農産物の上限関税を100%に設定しよう」という動きでした。こんなことをやったら日本の稲作農業は壊滅的打撃を受けるでしょう(既に半壊しているのに・・・)。絶対に認めてはならないことなのです。幸い、今回は上限関税の設定は見送られましたが、まだまだ予断は許しません。
とにかくマスコミ論調がひどいのです。郵政のときと同じです。マスコミの論調ときたら、「日本は貿易のおかげで豊かになった。農業のせいでドーハ・ラウンドが行き詰まったら大変だ。農民はわがままを言うな。上限関税を受け入れろ」。全てこんな調子で統一されておりました。あいも変わらずおバカなことですこと。
私に言わせれば、WTOの自由貿易体制こそ、世界的な失業率の高まり、世界的な総需要の減衰と過剰供給によるデフレの進行、そして環境破壊の根本的原因なのです。現行の「自由」貿易体制から、「持続可能で公正な」貿易体制へと転換しないことには、世界資本主義システムそのものが早晩、崩壊するでしょう。
マスコミの皆さんは、資本主義システムを守りたいのではないですか? だったらなおのことドーハ・ラウンドには「待った」をかけねばならないのです。
もっとも、今の自由貿易体制が何故いけないのかを書き出すと、かるく一冊の本になります。折を見て、これから少しずつ書いていきたいです。ただ、以下、マスコミが全く見ようとしていない諸点を箇条書きにしておきます。マスコミの皆さんは、以下の諸点をもう少し考えてから社説をお書きになって下さい。いい加減、小学生の作文レベルの社説からは卒業しなさい。
以下、自由貿易の問題を考えるにあたって、俗流経済学者がまったく考えようとしていない諸点を列挙いたします。
(1) 工業が収穫逓増産業であるのに対し、農業は収穫逓減産業であること。
(2) 農産物需要は、工業製品に比べて価格弾力性が低いこと。
(3) (1)と(2)の結果、農産物に特化した国の貿易条件は必ず不利になること。農業に競争力があり、工業に競争力のない米国の貿易赤字が破局的に膨張を続けることがその証左。
(4) 農産物の貿易の前提条件がそもそも不公正であること。米国農家が一戸あたり平均100ha以上の農地を所有しているのに対し、日本の農家は平均1ha、中国の農家にいたっては平均0.5haである。この「競争の前段階での不公平」をどう見るのか? せいぜい数百年前に新大陸を侵略し、先住民族を虐殺した上で土地を囲い込んで大規模経営を実現したのが、新大陸農業なのである。そんなものをどうやって真似るのか? どうやって競争するのか? そんなものが世界のモデルなのか? 新大陸型の農業というものは、歴史的には本来あってはならない異常な形態なのである。米国型農業を真似ろということは、「人を殺せ」ということを意味する。
(5) 「生産コスト」よりも「生産の持続可能性」の方が、21世紀においては優先されるべき価値観であること。米国農業は多くの場合、地下水で潅水している。米国のオガララ滞水層の地下水位などは急激に減少しており、今後20-30年しか持たないだろう。いずれは持続不可能。米国農業に比べて、アジアの稲作農業はコスト高でも持続可能性は高い。どちらが信頼できる農業なのか?
(6) リカードに始まる経済学の貿易論は、そもそも貿易黒字国も貿易赤字国も出ないという、「均衡」状態を前提に正当化されていること。現実は、貿易黒字国と貿易赤字国のあいだの不均衡が歯止めなく拡大しており、経済学の教科書的前提など存在していないこと。ケインズは、貿易黒字に対して「ペナルティとして課税せよ」と主張した。私は、このケインズの主張を支持する。
まだまだ他にもありますが、本日はこのくらいにしておきましょう。マスコミの皆様、少しは以上の論点を考えてみて下さいな。
とにかくマスコミ論調がひどいのです。郵政のときと同じです。マスコミの論調ときたら、「日本は貿易のおかげで豊かになった。農業のせいでドーハ・ラウンドが行き詰まったら大変だ。農民はわがままを言うな。上限関税を受け入れろ」。全てこんな調子で統一されておりました。あいも変わらずおバカなことですこと。
私に言わせれば、WTOの自由貿易体制こそ、世界的な失業率の高まり、世界的な総需要の減衰と過剰供給によるデフレの進行、そして環境破壊の根本的原因なのです。現行の「自由」貿易体制から、「持続可能で公正な」貿易体制へと転換しないことには、世界資本主義システムそのものが早晩、崩壊するでしょう。
マスコミの皆さんは、資本主義システムを守りたいのではないですか? だったらなおのことドーハ・ラウンドには「待った」をかけねばならないのです。
もっとも、今の自由貿易体制が何故いけないのかを書き出すと、かるく一冊の本になります。折を見て、これから少しずつ書いていきたいです。ただ、以下、マスコミが全く見ようとしていない諸点を箇条書きにしておきます。マスコミの皆さんは、以下の諸点をもう少し考えてから社説をお書きになって下さい。いい加減、小学生の作文レベルの社説からは卒業しなさい。
以下、自由貿易の問題を考えるにあたって、俗流経済学者がまったく考えようとしていない諸点を列挙いたします。
(1) 工業が収穫逓増産業であるのに対し、農業は収穫逓減産業であること。
(2) 農産物需要は、工業製品に比べて価格弾力性が低いこと。
(3) (1)と(2)の結果、農産物に特化した国の貿易条件は必ず不利になること。農業に競争力があり、工業に競争力のない米国の貿易赤字が破局的に膨張を続けることがその証左。
(4) 農産物の貿易の前提条件がそもそも不公正であること。米国農家が一戸あたり平均100ha以上の農地を所有しているのに対し、日本の農家は平均1ha、中国の農家にいたっては平均0.5haである。この「競争の前段階での不公平」をどう見るのか? せいぜい数百年前に新大陸を侵略し、先住民族を虐殺した上で土地を囲い込んで大規模経営を実現したのが、新大陸農業なのである。そんなものをどうやって真似るのか? どうやって競争するのか? そんなものが世界のモデルなのか? 新大陸型の農業というものは、歴史的には本来あってはならない異常な形態なのである。米国型農業を真似ろということは、「人を殺せ」ということを意味する。
(5) 「生産コスト」よりも「生産の持続可能性」の方が、21世紀においては優先されるべき価値観であること。米国農業は多くの場合、地下水で潅水している。米国のオガララ滞水層の地下水位などは急激に減少しており、今後20-30年しか持たないだろう。いずれは持続不可能。米国農業に比べて、アジアの稲作農業はコスト高でも持続可能性は高い。どちらが信頼できる農業なのか?
(6) リカードに始まる経済学の貿易論は、そもそも貿易黒字国も貿易赤字国も出ないという、「均衡」状態を前提に正当化されていること。現実は、貿易黒字国と貿易赤字国のあいだの不均衡が歯止めなく拡大しており、経済学の教科書的前提など存在していないこと。ケインズは、貿易黒字に対して「ペナルティとして課税せよ」と主張した。私は、このケインズの主張を支持する。
まだまだ他にもありますが、本日はこのくらいにしておきましょう。マスコミの皆様、少しは以上の論点を考えてみて下さいな。
まず、マスコミがよく言う「日本は自由貿易のおかげで繁栄した」という主張は、1985年のプラザ合意以前には当てはまっても、それ以降は当てはまらないと思います。
それ以降は、黒字が嫉妬の対象となり、ひたすら米国から日本破壊工作を受けることになり、私たちの生活の安定は脅かされるばかりですから。
この論理は、5番の詭弁でしょうか。疑いの余地のない真理であると、脅迫するように主張しているわけです。
それから、日本は農業で妥協しさえすれば、問題は解決するかのように言うマスコミが多いです。
それも事実に反します。日本の食糧自給率がゼロになって、すべて米国から輸入したとしても、なおかつ米国のっ貿易赤字は脹らみ、日本はなおかつ米国から黒字を得るでしょう。基本的に農業で儲けることは不可能なのです。(農業という産業の収穫逓減的性格による)。
それで、仮に農業を完全自由化したとしても、その後においても、米国の赤字は減らず、怨念に燃える米国はひたすら日本を叩きつづけるでしょう。
米国の赤字体質を生み出す、構造問題は、日本にあるのではなく、米国にあるのです。責任を他人に押し付けるのもいいかげんにしなさい、と言いたいです。
米国は、日本が「構造改革」しさえすれば、米国の対日貿易赤字は減少し、貿易摩擦はなくなるかのように主張し続けましたが、日本が米国に従って「構造改革」すればするほど、米国の貿易赤字は膨らんできました。「構造問題」は、日本にあるのではなく、米国にあるのです。
ですので、農業問題で日本が妥協すれば問題が解決するかのように述べるのは、3番の詭弁でしょうか。
>マスコミが全くの詭弁を弄しているので、
>声をあげないわけには行きません。
具体的には、何番の詭弁になりますか?
複数あれば複数答えてくれたらうれしいです
自由貿易推進論に関しては、マスコミが全くの詭弁を弄しているので、声をあげないわけには行きません。
詭弁の特徴15条
例:「犬ははたして哺乳類か」という議論をしている場合
あなたが「犬は哺乳類としての条件を満たしている」と言ったのに対して否定論者が…
1.事実に対して仮定を持ち出す
「犬は子供を産むが、もし卵を生む犬がいたらどうだろうか?」
2.ごくまれな反例をとりあげる
「だが、尻尾が2本ある犬が生まれることもある」
3.自分に有利な将来像を予想する
「何年か後、犬に羽が生えないという保証は誰にもできない」
4.主観で決め付ける
「犬自身が哺乳類であることを望むわけがない」
5.資料を示さず持論が支持されていると思わせる
「世界では、犬は哺乳類ではないという見方が一般的だ」
6.一見、関係がありそうで関係のない話を始める
「ところで、カモノハシは卵を産むのを知っているか?」
7.陰謀であると力説する
「それは、犬を哺乳類と認めると都合の良いアメリカが画策した陰謀だ」
8.知能障害を起こす
「何、犬ごときにマジになってやんの、バーカバーカ」
9.自分の見解を述べずに人格批判をする
「犬が哺乳類なんて言う奴は、社会に出てない証拠。現実をみてみろよ」
10.ありえない解決策を図る
「犬が卵を産めるようになれば良いって事でしょ」
11.レッテル貼りをする
「犬が哺乳類だなんて過去の概念にしがみつく右翼はイタイね」
12.決着した話を経緯を無視して蒸し返す
「ところで、犬がどうやったら哺乳類の条件をみたすんだ?」
13.勝利宣言をする
「犬が哺乳類だという論はすでに何年も前に論破されてる事なのだが」
14.細かい部分のミスを指摘し相手を無知と認識させる
「犬って言っても大型犬から小型犬までいる。もっと勉強しろよ」
15.新しい概念が全て正しいのだとミスリードする
「犬が哺乳類ではないと認めない限り生物学に進歩はない」
関さん更新楽しみにしています
1は今の国際情勢では難しいですね。いきなり各国が勝手にやり出すと、国際協調が損なわれますので。
2は、世界規模での生活保護政策ですが、貿易問題とは別にすぐにでもやって欲しいですね。
3はとっても面白いアイディアですね。WTOがあくまで関税はダメというなら、関税はゼロにしても、「炭素税」や「持続不能産業税」といった名目で徹底して徴税してやれば、関税以上の効果がありそうですね。
4は一番現実的ですね。日本の民主党は、直接所得保障で下駄をはかせて、後は原則自由市場という立場ですが、基本的にはこの路線といってよいでしょう。補助金というと評判が悪いので、直接所得保障と言い換えているわけですが…。
他の方策として、当面有効だと思うのは下記のやり方です。リチャード・ダンカン『ドル暴落から、世界不況が始まる』(日本経済新聞社、2004年)という本がありますが、著者はドル暴落による世界恐慌の危機を回避する方策として、以下の二つの政策を論じています。私は、当面の危機を回避するためには、これは相当に有効だと私は思います。
もっとも以下をやるには、国連の機能が強化され、世界政府としての側面を持つことが必要になりますが・・・。
(1)国際的最低賃金制度の導入
自由貿易の結果、「最低水準への競争」が始まって、賃金水準もどんどん低下しています。その一方で、貧しい途上国の購買力不足により、過剰供給のデフレスパイラルは深刻化しています。
この悪循環を断ち切るためには、途上国の賃金水準を世界統一基準によって上昇させ、世界規模での有効需要を高め、需給ギャップを解消させます。
(2)貿易赤字国と貿易黒字国への罰金制度の導入
これは貿易紛争を回避し、世界経済を安定化させるために、そもそもケインズが提起したアイディアです。
日本の農産物市場に対し、関税引き下げ圧力が強まるのは、要は、日本が貿易黒字で儲けすぎているからです。貿易黒字への罰金制度によって、黒字で儲けようとするインセンティブがなくなってしまえば、自然に貿易摩擦もおさまり、日本農業への風当たりも止むでしょう。
日本や中国ような大黒字国へは、国連が罰金を課し、その罰金は国連の自主財源にしてしまえばよいわけです。
1;各国に自由に保護関税を認める
2;水や生きるのに必要な食料は世界機関が情報公開を徹底して一元管理し、まず全員健康でいられるだけは配る(全員の生存保障は世界社会主義、それ以外は原則自由)
3;炭素税、持続不能産業税、生物濃縮性有害物質税をいやというほどとった上で自由貿易
4;各国が補助金で対応
さて、どれがいいでしょう?
P.S.「枕元の計算用紙」のミラーブログ開設しました。