代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

米国特使の原爆投下正当化発言などについて

2007年07月06日 | 歴史
 米国のロバート・ジョゼフ特使が広島・長崎の原爆投下について「文字通り何百万もの日本人の命がさらに犠牲になるかもしれなかった戦争を終わらせたということに、ほとんどの歴史家は同意すると思う」と述べたことについて一言。
 
 ふざけるな!!! 
 
 その「ほとんどの歴史家」というのを連れてきて並べてみなさい。米国の右派歴史学者以外はあまり並ばないのではないでしょうか。(私は歴史学者でないので、詳しい事情は分かりませんが)

 事実は、原爆が落とされる前から日本はポツダム宣言を受け入れる準備をしていたのです。原爆など落とさずとも、いずれポツダム宣言を受諾するのは時間の問題だったでしょう。日本が敗戦を認める前にとっとと原爆の実験をしちゃおうと急いで落としたのじゃないですか? ソ連が参戦する前に、日本を単独占領しようと焦って落としたのじゃないですか?

 そもそもスターリンに「対日参戦してくれ」と懇願したのは誰ですか? 「北方領土をソ連にあげるから日ソ中立条約を破棄して日本に侵攻してくれ」とソ連に懇願したのはアメリカじゃないですか。自分たちでソ連に頼んで日本を攻めさせながら、ソ連参戦の前に原爆で決着をつけよう、というのはいったい何という「理屈」なのでしょう。落としたいから落としたという以外に説明がつきません。
 当初はソ連と協力しようと思ったが、やっぱり単独で日本を占領したいと気分が変わったから早く原爆落としちゃおう、日本降伏後の新たな敵となるであろうソ連に対し米国の原爆技術を見せつけてソ連を震え上がらせよう、ついでに人体実験もしよう・・・・・。このあたりがトルーマンのホンネとしか思えません。

 百歩譲って、あの時点で日本に本土決戦の意志が固く、簡単に降伏しそうにないので陸上戦の犠牲者を増やさぬよう原爆を使う必要性があった、という米帝国側の主張(捏造された論理)を受け入れてみましょう。

 それならば、どこかの無人島にでも落として、「今度は東京に落とすぞ」と脅せばいいだけじゃないですか。日本軍部は震え上がって、とっととポツダム宣言を受諾したでしょう。何で広島と長崎で、30万人もの、軍とは何の関係もない無辜の一般市民を大虐殺する必要があるのですか? 一体どのような破廉恥な人間が、この恐るべき戦争犯罪を、「人命救助」として正当化できるのでしょうか。ふざけるのもいい加減にしなさい。
    
 日本の右翼諸氏はこれで怒らなきゃウソですね。これでも「米国様のおしゃることに従います」という右翼は、明日から「愛国者」と名乗るのはやめなさい。あなた方は、日本の中心で「私はポチです」と叫んでいればいいのです。

 ついでに、先月の米国下院の外交委員会で従軍慰安婦問題の決議が出たことにも一言。中国や韓国に対してはあんなに威勢のいいポチウヨクたちは、この問題ではそれほど騒がないようですね。

 私は当事者の中国や韓国が日本を非難するのは当然だし、日本政府は謝罪すべきだと思います。(すでに村山首相などが謝罪していますが)
 しかし、米国に言われると非常に腹が立つのです。あなたたちは、他人を非難する前に、自分たちの胸に手を当てて、過去に犯した戦争犯罪の数々を想起してみなさい。あなた達は、過去に犯した、他国への侵略、クーデター、要人暗殺・・・・などなど数えきれない国家犯罪について、まず謝罪すべきなのです。
 
 私は、日本政府が従軍慰安婦問題について再度謝罪するのと引き換えに、米国政府に対し原爆投下が戦争犯罪であると正式に認めさせ、謝罪するよう要求すべきだと思います。ついでに米兵が過去に沖縄などで犯してきた数々のレイプ事件についても正式に謝罪させるというのはどうでしょう。

 日本のウヨクの論理のおかしいところは、中国のチベット問題などを上げ、「だからわれわれも謝罪しない」と開き直る点なのでです。本当に品のない恥ずかしい理屈です。悪いことはお互い謝罪していくのが、建設的な未来を構築するための鍵でしょう。
  


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4 コメント

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原爆投下と敗戦あれこれ ()
2007-07-06 11:16:25
 関さんは無人島に落として云々と書いていましたが、米軍も実際に東京湾の真ん中に落とすというプランがありました。当時の原爆の破壊力だと直接被害が出るのはプルトニウム型でも半径3キロメートル(放射能汚染はこの限りではありません)なので、これは日本政府に対する警告的な作戦になったでしょう。しかし、この提案は早々に葬られて都市への投下に決まりました。東京湾の真ん中だと破壊力を実験できなかったからでしょうね。
 ちなみに、当時のプロパガンダの中では日本人は人間扱いされていませんでした(サル、タコ(魔物)害虫など)。ドイツ人は冷酷であるにしても、人間として描かれていました。米兵の犠牲の方はともかく当時の感覚で日本人の命を救う気などさらさらなかったはずです。
 さらに天皇裕仁に「御聖断」を決断させたのは原爆投下ではなく8月9日早朝のソ連参戦です。これらは御前会議での議論の展開からほぼ明らかです。
 ついでに言えば軍部(陸軍)は原爆被害に対しても戦意はくじかれていません。人命を軽視すること米軍以上の軍部にとって重要なのは対応可能かどうかであって、地下壕に司令部を移せば問題なしとしていました。すでに各地に地下工場や地下大本営(松代)が建設されており、むしろやる気満々だったわけです。
 日米ともに手前に都合のよい歴史「物語」に依拠した妄言はもうやめてほしいものです。
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南さま ()
2007-07-06 23:01:48
 フォローして下さってありがとうございました。

>ついでに言えば軍部(陸軍)は原爆被害に対しても
>戦意はくじかれていません。

 もちろんそういう卑劣なアホたちは沢山いましたが、原爆投下がなくとも遠からず東郷茂徳のような理性派が天皇を説得してポツダム宣言を受諾させていたのではないでしょうか。まあ、この問題でやり合うのはやめましょう。歴史学者でないので責任とれません。
 
>地下大本営(松代)が建設されており、むしろやる
>気満々だったわけです。

 私の実家のすぐ近くのことなのでよーく知っています。松代は最近何かと話題の栗林忠道中将の生まれ故郷で、真田10万石の城下町。もしかしたら日本軍部は、最後の最後になって不敗神話を持つ真田の威光にすがろうとしたのでしょうか。合理的精神が皆無な、時代錯誤の精神主義者のおバカたちの考えそうなことですね。

 栗林中将の方は、本当の真田戦法を受け継いでいるので、もっと合理的でした。敵から身を隠して砦にこもって、罠を仕掛けた上で敵に攻めさせ、罠とゲリラ戦で敵をパニックに陥らせるという栗林中将の作戦は、真田昌幸が徳川軍に行ったのと同じ戦術です。あ、話がそれました。
 
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こんな本が ()
2007-08-01 10:58:35
 新刊で「世界を不幸にする原爆カード ヒロシマ・ナガサキが歴史を変えた」著者金子敦郎ISBN978-4-7503-2557-6 という本が出ました。コメントで書いた件のアメリカ側の事情が追いかけられています。公開された公文書やアメリカの歴史家たちが発掘した当事者たちの日記、メモがふんだんに引用されています。お忙しいそうですので読む暇はないかもしれませんが、とりあえず紹介だけ。
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南さま ()
2007-08-01 14:31:56
 本の紹介ありがとうございました。今度本屋で探してみます。
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