代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

米国への構造改革要望書

2006年02月03日 | エコロジカル・ニューディール政策
 米国から提出される「年次改革要望書」の要求を忠実に遂行し続ける忠犬国家・日本は世界に名高いものとなりました。今や世界の笑いもので、私は外国に出るのが大変に恥ずかしくなっています。ところで、わが忠犬・日本国は米国にどんな「改革要望書」を出しているのでしょう? たしか「年次改革要望書」は双方の国が双方向的に提出しあうという約束のはずなのですが、日本は米国に何らかの要求を出し、米国がそれを受けて何らかの改革を行なったという話は、ついぞ聞いたことがありません。読者の中で誰か知っている人がいますか? 何か情報のある方は教えてください。

 さて、このブログでも論じている「エコロジカル・ニューディール政策」の提唱者である力石定一氏は、その「エコロジカル・ニューディール」路線にそって周辺諸国にじつに多くの「構造改革」提案を行い、実際に各国の研究者などを通して働きかけています。
 たとえば『発想<第3集>』(季節社、2001年)では「日本の周辺諸国 -アメリカ・ロシア・中国・朝鮮半島・台湾- への構造改革政策の提言」という論文を書いています。
 力石氏が個人として米国政府に要望した「構造改革」の提案は、以下のようなものでした。要望のいくつかを要約します。

(1)これまで日本政府は米国債を一生懸命に買い支えて米国を助けてきた。今度は日本の不足した財政資金を補うために、米国債1兆ドル(=120兆円)くらいを返してもらいたい。 

(2)米国の石油浪費文明は環境の壁にぶつかって身動きが取れなくなっている。中東への石油依存度を減らし、京都議定書に復帰し、エコロジーの原則にのっとって総合的で計画的な経済構造改革を実践せねばならない。

(3)まず米国は、自動車依存症という重い病気を治さねばならない。CO2を削減するために、東西両海岸に新幹線ネットワークを建設し、高速道路と旅客機の客を、新幹線にシフトさせよ。新幹線建設に必要な技術は、日本が提供しよう。
 都市部に関しては道路の地下に、地下鉄急行網を建設せよ。これも日本が技術協力を行なう。

(4)マイカー通勤を減らすために、公共バスを無料化せよ。(シアトルに実例あり)

(5)米国全土の公立学校の屋上に太陽電池パネルを取り付けて太陽光発電を推進するなど、新エネルギーの開発に力を入れよ。

(6)米国の行き過ぎた規制緩和の結果、航空会社は本来ならば耐用年数の切れた古い機体を使い回し、事故が増えた。そこで航空機の耐用年数は20年、発着回数は6万回までという安全規制を儲けよ。それを超えた航空機は有無を言わさずスクラップにせよ。これで利用客は安心できる。

(7)(6)の規制は、じつは米国が戦争依存症という重い病気から回復するために必要な治療の一つである。航空機の安全規制強化を実施するとじつは戦争が減る。なぜならば、航空機メーカーは民間航空機の需要不足を補うために、軍用機を製造し、たびたび戦争を起こして新たな需要を創り続けているからである。民間航空機の規制強化は、新たな航空機需要を喚起し、軍用機需要への依存度を減らすという効果をもたらす。

 とまあ、力石氏は、このくらいの「改革要望」を米政府に対して行なっています。どうですか、日本政府も取り入れてみては? 今度は、日本政府が米国政府に対して、その行き過ぎた市場原理主義を修正するための「ニューディール的構造改革」を要求する番だと思うのです。
 
 ところで、先日のブッシュ大統領の一般教書演説の内容を読んでちょっと驚きました。「米国は『石油中毒』状態にあるとして、中東からの石油輸入量を大幅削減する一方、エタノール燃料など安くクリーンなバイオマス・代替エネルギーの技術革新を強化する」というのです。

 おお、あのイカレ頭がこんなまともな発言をするとは!! ちょっと嬉しい驚きではありませんか。もしかしたら、力石氏の「年次改革要望」が届いたのか? 米帝国も少しは頭を冷やしはじめた兆候かも知れません。
 

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2 コメント

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まあ… (Chic Stone)
2006-02-05 00:15:31
トラックバックありがとうございました。



日本がアメリカの属国なら…米軍基地の場所を見れば否定しようがないのですが…余計に年次改革要望書や大統領の一般教書演説をきちんと報道、解説する必要があると思います。

知らしむべからずよらしむべし、でしょうか。



アメリカが京都議定書などに消極的なのには、単にアメリカは大企業の利益最優先で環境に関心がない、というだけでなく「環境危機をあおってはいけない(ビョルン・ロンボルグ)」「恐怖の存在(マイクル・クライトン)」などの影響もあるのかもしれません。

ただし、京都議定書を否定するなら人類全体の福祉と環境保全にそれ以上に貢献する代案を出して欲しかったですが。

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Chic Stoneさま ()
2006-02-10 11:16:06
 トウモロコシから採取するエタノール燃料の開発に関しては、GMやフォードの思惑が大きかったみたいですね。ハイブリッド車や燃料電池車で遅れをとっている分、エタノール車の技術で挽回しようということみたいです。

 でも、石油文明に固執して他の国の足を引っ張っていたのに比べると、とりあえずは前向きな変化ですので評価できます。



 米国もエタノール車の普及のために財政支出でバックアップするという「ニューディール」を選択したということです。

 日本も「小さな政府」「何もしない政府がよい政府」なんてアホなことを言っている場合じゃないです(何もしない政府のわりに、投機経済だけは煽り続けたくせに)。

 燃料電池、太陽光、天然ガス、木質バイオマス、植物性アルコール、ゴミ発電などなど、政府が戦略目標を立てて、積極的に支援すべき技術は山のようにありますから・・・。



 今後もこうした世論を喚起するために頑張りましょう。

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