代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

本の紹介:森林環境研究会編『森林環境2006 世界の森林はいま』朝日新聞社

2006年02月08日 | 自分の研究のことなど
 森林環境研究会編『森林環境2006 世界の森林はいま』(朝日新聞社)という本が発売されました(2000円)。私も著者の一人です。私は、「中国・退耕還林の光と陰」(16-22頁)というエッセイを寄稿しています。私が今やっている中国の植林政策に関する研究を、ごく簡単に紹介したものです。興味のある方がおりましたら、読んで下さると嬉しく存じます。

 私が担当した章では、中国の植林現場において、農民たちが直面する苦悩を描写しています。中国の人工林面積はこの5年間で1500万ヘクタール以上増大したと報告されています。これは、わずか5年で日本の総面積の40%以上も森林が増えたということを意味します。にわかには信じがたい、すさまじい数字で、中国の植林活動の急激な進展ぶりは世界中を驚かしているのです。

 写真は、私が調査していた村の植林地の写真です(植栽後3年)。樹木のあいだに小麦を間作するというアグロフォレストリーの手法を用いて、樹木も順調に生育しています。しかし、じつはこれが、政府と農民の対立の原因になっているのです……。詳しくは、本を読んで下さると嬉しいです。
 また、中国が国内の森林を保護すると国外で違法伐採が増えるというジレンマを、WTO問題とも絡めて論じました。自由貿易体制は見直す必要があるということもはっきりと書いてあります。

 朝日新聞社から発売された本ですので、「朝日新聞」社説の、「感情的で、残酷で、(ときに無力ではない)」自由貿易礼賛論にキッチリと釘をさすつもりで書かせていただきました。コトバはときに人間たちを集団ヒステリー状態に導きますが、私は人間の理性のチカラを信じますから……。

 この本では、中国の他には、ロシア、ドイツ、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、エチオピア、ブラジル、アメリカ、カナダなど世界の森林を取り巻く最新情報が、自然科学と社会科学の双方の著者たちの多様な視点で分かりやすく解説されています。

 

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