代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

給油継続できなければ内閣退陣だって? よし退陣してもらいましょう

2007年09月11日 | 政治経済(国際)
 安倍首相が、テロ対策特措法の延長、ないし新法を成立させて「対テロ戦争」に協力することができなければ退陣するという決意表明をしたそうです。おおすばらしい! 早々に退陣してもらいましょう。
 
 テロ対策特措法に変わる民主党のアフガン民生支援の代替案ですが、すばらしく良いプランだと思います。是非、民主党をはじめとする野党の皆様は、憎悪と報復の連鎖を生むだけのブッシュの「反テロ戦争」に加担するという泥沼の道ではない、真のテロ対策の代替案を提示して下さい。そして安倍内閣を早々に退陣に追い込んでもらいたいです。日本には「アフガン問題はイラク問題とは別なのでは」と考えている人々も多いので、彼らを説得できる内容の案を提示してもらいたいです。

 先日の日曜日にサンデープロジェクトをチラッと見たら、菅直人さんが、ペシャワール会の中村哲さんの著作を読んで勉強しながら、テロ対策特措法への対案を作成していると語っていました。テロを本当の意味で撲滅するために、アフガニスタンの教育・医療への支援、そして農業の復興など社会インフラの整備を行うというプランです。これこそが本当の意味でのテロ対策だと思います。「テロ対策特措法」に代わるべきは、「アフガン農村復興支援法」でしょう。

 私も昨年、中村哲さんの講演を聞いて衝撃を受けたものでした。中村さんはアフガニスタンで一面に広がるケシ畑の写真を見せながら、次のように語っていました。「アフガニスタンでは米軍の侵攻以来、一面のケシ畑が広がるようになりました。今では全世界のケシの90%がアフガニスタンで栽培されています。ちなみにタリバンの時代にはケシ畑などありませんでした・・・・」。
 タリバンはケシ栽培の撲滅に力を入れて、ほぼ撲滅に成功していた。それが今や世界の90%のケシがアフガンにある・・・。この一点を見ただけでも、米軍のアフガニスタン侵攻がもたらした負の側面の巨大さが分かろうものです。
 日本でも、イラク戦争は間違いだったが、アフガンでの戦争はやむを得なかったのではと考える人が多いようです。ケシ問題一つ取ってみても、その認識がいかに間違っているか分かります。

 アフガニスタンに関しても、紛争の一方の当事者に肩入れして、どちらかを叩こうという軍事行動に加担すべきではありません。それが日本の安全のためでもあります。
 アフガニスタンの今後の情勢がどうなるか、素人の私には分かりません。カルザイ政権が存続するのかも知れませんし、タリバンが政権を奪還するのかも知れません。
 しかし一つ言えることがあります。アフガニスタンで中村哲さんがやっているような、医療活動と水利・灌漑施設の建設という農村復興のプロジェクトであれば、カルザイ政権が存続しようが、タリバンが政権を奪還しようが、全く中立的で、誰からも評価を得られるプロジェクトだということです。
 アフガニスタンの内政がどう転ぼうが、どちらからも喜ばれますし、政権担当者が温和な政策を採用するのを助けるでしょう。農民がケシ栽培に依存せずとも生きていけるよう、農村を復興することこそ、「テロの根」を根絶する鍵になのです。
 国際社会は、報復の連鎖を生むだけの軍事行動に金を注ぐよりも、アフガニスタンの医療と教育と社会インフラの整備にこそ大きな資金を投じるべきでしょう。そうした行動こそ、仮にタリバンが政権を奪還することになったとしても、彼らが「テロ支援」などせず、より穏健な政策を採用するように促すことになるでしょう。

 日本政府は、中村哲さんの知恵を借りてアフガン復興のマスタープランを作成すべきではないでしょうか。中村さんほどアフガンの内情を知っている方は他にいないでしょうから。日本政府は今こそ在野にいる人材を活用して、従米思考停止外交ではない、ポスト米国覇権時代を見据えた、未来型外交の道を切り開くべきでしょう。
 自民党や読売新聞や産経新聞などは「日本が、アフガンやパキスタンでの対テロ戦争から撤退すれば国際社会の信頼は揺らぐ」と主張します。しかし現実には、アフガン農村の復興支援をやることの方が、よほど国際社会の尊敬を勝ち取れるでしょう。
   
 今朝の『毎日新聞』でノーム・チョムスキーのインタビュー記事が掲載されており、その中でアフガニスタン侵攻を戦争犯罪だと述べ、今のアフガンに必要なことを語っていました。その一部を引用させていただきます。

*****『毎日新聞』9月11日朝刊*******************
チョムスキー「アフガン侵攻も戦争犯罪だ。タリバンは米国に、9・11とビンラディンとの関係を示す証拠を出せと要求したが、米国はこれを拒否した。ビンラディンの引渡しを求める場合は証拠を出さねばならない。タリバン政権転覆のため米国が爆撃したことこそ国際テロの見本だ」
記者「米国はどう対処すべきだったか」
チョムスキー「テロ攻撃は犯罪であり、警察による捜査手続きが行われるべきだった。(中略)ビンラディンのような人物を暴力で攻撃すると、怒りを増大させるだけに終わる。証拠を積み上げ警察的な手法で解決するしかない」
(中略)
記者「日本では、アフガンでの米軍支援についての議論が盛んだ」
チョムスキー「アフガンに必要なのは戦争ではなく、開発と復興だ。アフガン人が麻薬の栽培を必要としないための支援をすべきだ」
***********(引用終わり)********************

 日本の民主党の見解は、チョムスキーとも一致していますね。
 民主党は他の野党と協調しつつ、ぜひこの魅力的な開発と復興の代替案を掲げて国民を説得し、読売や産経などの間違った論調を孤立させ、安倍政権を退陣に追い込んでください。

 日本が率先して国際社会をリードし、「反テロ戦争」などという名の実質的な「テロ拡大戦争」を一刻も早く終わらせるよう努力すべきでしょう。「国際社会がやるから日本もやる」のではなく、「国際社会が間違っているから、一刻も早く誤りを終わらせるよう日本は努力する。それが平和国家としての日本の使命だ」とならなければいけないと思います。


<前の記事の追記>
 前の記事で紹介した「その時歴史が動いた: 引き裂かれた村」の再放送日程を紹介しておきます。見逃した方、ぜひ見てくださりたく存じます。

(再放送) 平成19年9月21日(金)
0:20~1:03(木曜深夜) 総合 近畿のみ
平成19年9月21日(金)
1:40~2:23(木曜深夜) 総合 全国(近畿のぞく) 

 この番組に関して、今夏放映された戦争関連番組の中で一番よかったと述べている下記のような感想もありました。「その時歴史が」のスタッフの皆様を励ますためにも紹介しておきます。日本軍の虐殺事件を扱ったということでウヨクから脅迫電話も多いみたいです。嫌がらせに負けないで下さい。
 以下の記事をご参照ください。 
 http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2007/09/nhk_c914.html

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