代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

京大教授、不正引用と嫌がらせで懲戒処分

2005年12月26日 | その他
 本年11月16日の記事「日本がアメリカ化したら最も困るのは竹中平蔵?」の中で、私の所属する学会で起きた論文の不正引用事件について触れました。某教授が、同じ講座の助手の研究成果を出所を示さず不正引用をした事件です。さらに反省することなく、当の助手の方を逆恨みして、さまざまな嫌がらせをして精神的に追い込んでいくというハラスメントを繰り返したのです。結果、学会では、その教授に対して「退会勧告」という処分を下しました。その事件の続報です。

 学会が処分を出したのに、大学の教授会の側で処分が出せずにいるのはどうしてだと、私は以前のブログ記事で苦言を呈したのでした。さて、先週の12月20日になって、その大学の教授会は、その教授に対し、懲戒停職3ヶ月という処分を出しました。

 もう新聞などで報道されましたので実名を出しますと、その大学とは京都大学のことでした。学部は農学部です。『毎日新聞』は、この事件について、野上哲記者の署名入りで以下のように報道しています。


<引用開始>
 京都大は20日、大学院農学研究科の男性教授(60)が、女性助手の研究成果を不正に引用して自らの単独論文として学会誌に発表したほか、同じ助手に対して論文作成の妨害や精神的嫌がらせを続けたとして、教授を同日付で停職3カ月とする懲戒処分を発表した。
 問題の論文は、教授が02年3月、林業経済学会の学会誌「林業経済研究」に自らの名前で発表した「日本に林業は必要か――国民と森林との関係からのアプローチ」。学会内で「盗用ではないか」と問題になり、農学研究科が中心になり03年5月から調査した。
 その結果、論文は97~99年度に国の科学研究費を受け、当時大学院生だった助手が主に作成した欧州のグリーンツーリズムに関する研究報告が基で、助手が作った図表を出典を示さず勝手に引用したと認定した。
 さらに大学側は問題発覚後、教授が「研究の主たる寄与者は自分」などと主張する文書を学内外に配ったほか、数年にわたり助手に厳しいしっ責や過剰な仕事の押し付けをしたと指摘。「研究成果の搾取、論文作成の妨害、精神的ハラスメントに当たる」と判断した。
 教授は大学側の事情聴取に「出典を示さなかったのは不適切だった」と釈明したが、不正引用や嫌がらせ行為は認めていないという。会見した木谷雅人副学長は「大学教員にふさわしくない行為で誠に遺憾。今後このようなことがないよう規律徹底を図りたい」と述べた。『毎日新聞』12月21日朝刊
<引用終わり>


 とりあえず教授会が最低限の良識を示して、懲戒処分を下したことは評価したいと思います。私は、あの大学が思い上がって完全に自浄能力を喪失しており、「どうせ処分は出せないのだろう」と思っておりました。とりあえずその考えは誤っておりました。その上で言わせてもらえば、停職3ヶ月というのは、処分が軽すぎますね。本当に自浄能力があるのか否か疑わせます。

 その問題の教授は、研究成果を搾取した被害者の助手に対して、追い討ちをかけるように、さまざまな嫌がらせ行為や精神的な迫害を加え、大学に出てこれない状況に追い込んだ上で、「助手が仕事をサボタージュして研究室の運営が困難になっている。学生の指導を自分一人でやらねばならない、いちばんの被害者は自分なのだ」と主張していたそうです。学生の多くも、教授の主張を信じてしまっているとか・・・。

 じつに計画的で手のこんだことです。教授会の側が、計画的に練られた一連の犯行に対して、客観的な事実究明を行なったことに対しては評価したいと思います。
 しかし世間では、これだけ手のこんだ計画的な嫌がらせをした人物に対し、「停職3ヶ月」という軽い処分しか出せなかった京大の見識を疑うのではないでしょうか。

   


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