仕事ですごく忙しくてブログの更新をまったくサボってしまったことをお詫び申し上げます。さて、この間、9月25日に書いた「キューバのソフトパワー」という記事のコメント欄で、オヴニル1さんという方と延々と議論をしておりました。議論の内容がどうこうというよりも、彼の議論の仕方のあまりの非礼さに、私も堪忍袋の緒が切れかかっております。
その議論の中で私は、農業を現行のWTO体制下での貿易自由化の適用外とし、先進国も途上国も小規模な家族経営農業を守らねばならないという趣旨のことを述べました。それに対しオヴニル1さんは、「そこまで今の枠組みでの農業に拘るのであれば,「班田収授法」の復活でも訴えられたらいかがですか?」と揶揄されました。オヴニル1さんは、〈自由貿易体制下で農業の効率化と大規模化を進め、余剰の労働力は2次産業・3次産業に移せばいい。そんなことも分からないのなら、高校の「政治経済」の勉強からやり直したらいかが?〉とまあ、こんな趣旨のことをおっしゃって、私を罵倒いたしました。
そんなこんなで、本日はWTOと農業効率化・大規模化について話題を提供することにいたします。上の写真は両方とも、私が以前にインドネシアのスマトラ島のランプン州で撮影したものです。同じ州内の農業景観の写真ですが、著しい相違が見て取れるでしょう。
上の写真は、アブラヤシのプランテーションの写真です。一つの農場で5000haもの規模があります。5000haの農場すべてがアブラヤシという単一の種によって覆い尽くされており、典型的なモノカルチャー農業です。非常に「大規模」で「効率的」であり、資本主義的農業の行き着く先にある景観だと言えるでしょう。
一方の下の写真ですが、自作稲作農家が所有する水田と地域で共同管理している森林の写真です。この森林、天然林と思うかも知れませんがじつは人工林(といっても果樹園の要素も強い)なのです。この写真の森は、ドリアン、ズク、ココヤシ、砂糖ヤシ、コーヒー・・・・などじつに多様な果樹と樹脂採取用のメランティの樹木が人間の手で植栽されたことによって成立したものです。この写真にもドリアンやズクやココヤシなどが写っています。「モノカルチャー」とは対極にある「多様性」の世界だと言えるでしょう。
現在世界を席捲しているWTOによる農産物貿易の自由化とは、世界的規模において、下の写真のような多様性のある景観を、上の写真のようなモノカルチャー景観に変えていくということを意味しているのです。実際、インドネシアでは現在も、下の写真のように住民が慣習的に利用していた多様性のある農地・林地が、企業に奪われ、上の写真のようなモノカルチャー景観へと強制転換されているのです。プランテーション開発をしようとする企業と住民のあいだの土地紛争は絶えることがありません。
さてオヴニル1さんは、上の写真のような景観が広がる世界に住みたいようです。私は下の写真のような多様性のある世界に住みたいと思っています。
さて、暮らしたいか暮らしたくないかといった情緒的な理由も含めて、WTOの農業自由化に反対せねばならない理由は数多くあります。私は、さし当たって以下の5点を指摘したいと思います。
(1)生物多様性の破壊
(2)エネルギー効率の悪化
(3)物質循環的に持続可能でないこと
(4)人間社会の文化と伝統の破壊
(5)途上国の飢餓の頻発化をもたらす
「大規模化・効率化」を礼賛する主流派経済学のディシプリンで頭の中がゴチゴチに固まっている方と議論をしていると、私はしばしば目まいと頭痛を感じます。基本的に彼らは、自然科学の知識がなさすぎるのです。
さて、ただ今深夜になってきて、明日も仕事があるので、本日はこの辺で筆を置きます。続きは明日。
その議論の中で私は、農業を現行のWTO体制下での貿易自由化の適用外とし、先進国も途上国も小規模な家族経営農業を守らねばならないという趣旨のことを述べました。それに対しオヴニル1さんは、「そこまで今の枠組みでの農業に拘るのであれば,「班田収授法」の復活でも訴えられたらいかがですか?」と揶揄されました。オヴニル1さんは、〈自由貿易体制下で農業の効率化と大規模化を進め、余剰の労働力は2次産業・3次産業に移せばいい。そんなことも分からないのなら、高校の「政治経済」の勉強からやり直したらいかが?〉とまあ、こんな趣旨のことをおっしゃって、私を罵倒いたしました。
そんなこんなで、本日はWTOと農業効率化・大規模化について話題を提供することにいたします。上の写真は両方とも、私が以前にインドネシアのスマトラ島のランプン州で撮影したものです。同じ州内の農業景観の写真ですが、著しい相違が見て取れるでしょう。
上の写真は、アブラヤシのプランテーションの写真です。一つの農場で5000haもの規模があります。5000haの農場すべてがアブラヤシという単一の種によって覆い尽くされており、典型的なモノカルチャー農業です。非常に「大規模」で「効率的」であり、資本主義的農業の行き着く先にある景観だと言えるでしょう。
一方の下の写真ですが、自作稲作農家が所有する水田と地域で共同管理している森林の写真です。この森林、天然林と思うかも知れませんがじつは人工林(といっても果樹園の要素も強い)なのです。この写真の森は、ドリアン、ズク、ココヤシ、砂糖ヤシ、コーヒー・・・・などじつに多様な果樹と樹脂採取用のメランティの樹木が人間の手で植栽されたことによって成立したものです。この写真にもドリアンやズクやココヤシなどが写っています。「モノカルチャー」とは対極にある「多様性」の世界だと言えるでしょう。
現在世界を席捲しているWTOによる農産物貿易の自由化とは、世界的規模において、下の写真のような多様性のある景観を、上の写真のようなモノカルチャー景観に変えていくということを意味しているのです。実際、インドネシアでは現在も、下の写真のように住民が慣習的に利用していた多様性のある農地・林地が、企業に奪われ、上の写真のようなモノカルチャー景観へと強制転換されているのです。プランテーション開発をしようとする企業と住民のあいだの土地紛争は絶えることがありません。
さてオヴニル1さんは、上の写真のような景観が広がる世界に住みたいようです。私は下の写真のような多様性のある世界に住みたいと思っています。
さて、暮らしたいか暮らしたくないかといった情緒的な理由も含めて、WTOの農業自由化に反対せねばならない理由は数多くあります。私は、さし当たって以下の5点を指摘したいと思います。
(1)生物多様性の破壊
(2)エネルギー効率の悪化
(3)物質循環的に持続可能でないこと
(4)人間社会の文化と伝統の破壊
(5)途上国の飢餓の頻発化をもたらす
「大規模化・効率化」を礼賛する主流派経済学のディシプリンで頭の中がゴチゴチに固まっている方と議論をしていると、私はしばしば目まいと頭痛を感じます。基本的に彼らは、自然科学の知識がなさすぎるのです。
さて、ただ今深夜になってきて、明日も仕事があるので、本日はこの辺で筆を置きます。続きは明日。
オヴニル1さんにはぜひとも「ん! -ピークオイル時代を語ろう-」http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/forum2/の方にお出でいただきたいとは思っています。 「なぜ小規模自作農家を守らねばならないのか?」についての説明になると思いますので。
関さんには、「黒字亡国」なり「円デフレ」の本を読んでいただき、感想を書いてほしいなあと。
かつて、共和制、帝政問わず、歴代の指導者が実践してきた政策は、安全と食の確保です。
森林もそうですが、農業ひいては、食についても本来市場化すべきではない重要な社会インフラのひとつだと思います。必要量が確保されてはじめて余剰生産物が市場化されていった流れですが、アメリカのメジャーを中心とする先物取引の餌食にされているような現在、農業形態はどうあであれ、脱市場こそが、本来のあり方ではないかと思う今日この頃です。
人の話ちゃんと聞いてますか?
農業の大規模化は中国の話です.なぜ中国に限った話を世界的に普遍なもとの解釈できるんですかね?あなたは0と1しか数えられないのですかな?
それに私は
「アメリカと路線が対立しているメルコスル連合の主張は,国内産業基盤が整わないうちの全面的な市場開放を時期尚早としているだけです.要するに自由貿易に関して「各国の前提が違うから考慮しろ」「総論賛成,各論反対」と言う事です.」
「南米の件でも述べているように,自由貿易というスキームに魅力を感じつつも,国ごとに個別の事情があるから,画一的な取り決めが出来ないと何度も言っています.」
とも言ってますよ?
私は各国の事情に合わせて自由貿易協定対するスタンスは容認してますが?それに何か問題でも?っていうか批判云々以前に本当に人の話聞いてますか?
むしろ「自由貿易協定容認=完全自由化論者」と短絡しているほうが問題でしょう.そのような二者択一的な解釈しか出来ないようじゃお話になりませんね.
>「大規模化・効率化」を礼賛する主流派経済学のディシプリンで頭の中がゴチゴチに固まっている方と議論をしていると、私はしばしば目まいと頭痛を感じます。基本的に彼らは、自然科学の知識がなさすぎるのです。
「大規模化・効率化」結構じゃないですか.そして「持続可能な農業」も結構じゃないですか.私はどちらも否定してませんよ.あなたが短絡しているだけです.要するに,状況によって最適な方法が異なるといっているんです.それに類する事は何度も言いましたよ?全然人の話を聞いていませんね.
そのような二者択一的な解釈は,あなたの大大だーい嫌いなアメちゃんの大統領,ブッシュの初期の論法と一緒ですよ.
ところでいつになったら,中国は農業で内需拡大が可能であり,世界的にデフレが進行しているという証明が出来るのですか?待ちくだびれましたよ.
グリーンランドとかで採取された空気の同位対比の研究とか複数の研究で一致するようですが、毎年の気候が安定している我々の歴史時代のほうがむしろ例外的なのだとか。
すると、今後、温暖化の方向に気候のバランスが移っていくと、気候が現在より不安定化する可能性が結構高そうに思えます。(←これは、単なる「心配」ですが)
突発的な異常気象の備えとしても、そして(杞憂だとよいのですが)「異常気象」が常態化した世界に住む可能性を考えても、多様性の維持は大切に思えますね。
土壌流出とか塩害を考えても、単一作付けによる過度の効率化は持続可能性が低いというかきわめて危険そうです。
いずれ、政策介入は必要そうに思えます。
経済原理に任せると短期的な経済効率に勝るが持続可能性が低いモノカルチャーが進むというか、気候変動に極めて弱い「局所最適解」に落ち着いてしまいそうですから。
(しかし「民主的」利害調整しかしない政府とか、輸出産品を維持したい政府では、短期的な効率性に勝るモノカルチャーを排除する政策は期待できない…?)
解かりやすくご紹介いただきありがとうございます。
経済学も答えがないようなもので、手探りしながら方向性を見つけてゆくものである・・・という趣旨のことをお聞きしたことがあります。正解はないのかもしれませんが方向性を求めることは大切ですね。
さて、横から押し入って、なんでも「証明せよ」という物言いには決して「勝敗はない」と思います。他所でも同じように人の意見の腰折れを狙ったとしか思えないコメントをされている方には論戦をされるだけ無駄であろうと思います。私の気持ちはこれまでです削除されてもOKです(^^)
あなたに言われたくありません。私の言うことを、ご自分の都合のいいように曲解しながら罵倒して、何の謝罪もしないのはあなたでしょう。
>農業の大規模化は中国の話です.
中国もインドネシアと傾向は同様ですよ。
だって、途上国のほぼすべてがWTO発足以来、穀物自給率を減らし、新大陸型の大規模農業構造を持つケアンズ諸国からの輸入依存度を増やしています。途上国は、穀物から作付け転換してコーヒー、綿花、ゴム、アブラヤシなどなど輸出用の商品作物の生産を増やしています。ところが皆が競って生産して、輸出産品の国際価格が、生産過剰で軒並み下落しているので、みな農産物の貿易収支は悪化しているのです。これが自由貿易が途上国農業にもたらした影響なのです。だから途上国の多くが、「自由貿易」ではなく、「公正な貿易」を要求するようになってるんです。
>私は各国の事情に合わせて自由貿易協定対するスタ
>ンスは容認してますが?
中国の農業自由化が、中国の事情にあっていないのです。だから私は、関税引き上げも含めて、しかるべき農業保護政策が必要だと書いたのに、あなたが食ってかかってきたのです。そこで私に噛み付いてきたこと事態、あなたの「スタンス」とやらに反しているじゃないですか。
中国の平均農産物関税なんて、米国の要求で15%にまで減らされてしまったのです。ちなみにEUは20%です。中国の農産物関税の水準は先進国よりも低いところにまで、急激に下げられたのです。これじゃ、暴動が起こってあたり前です。
例えばインドの平均農産物関税は124%です。途上国なんてその程度の関税水準は認められるべきなのです。
中国の農業関税率が15%から、以前の30%に戻るだけでずいぶんと農村は落ち着くはずです。
日本の高度経済成長時には、日本は農業自由化なんかしてませんでした。それが今の中国と当時の日本の違いです。
あなたが中国の現在が当時の日本と同じであるかのようにおっしゃるので、「それは違う」と前にも書いたでしょ。日本の高度成長の当時は、WTOなんてはた迷惑な組織は存在しなかったのです。
さて、私はこれ以上不毛な議論をしたくありません。不愉快きわまりないので、これをもって議論を打ち切らせていただきます。
私なんかと議論しているヒマがあったら、論文の一つでも書くことをお勧めします。論文ではその攻撃的な口調は止めてくださいね。審査に通りませんよ。
私も書かなきゃいけない論文がたくさんあるので、ブログの執筆を減らすことになりそうです。お互い、時間の浪費は避けましょう。
今後オヴニル1さんが何を書いてきても返信しませんのでご了承ください。しつこく書き込んできたら削除させていただきます。
「ん!」を、私のブログからもリンクさせてよろしいでしょうか。しばしば訪れて読むようにいたします。「黒字亡国」は読みました。「円デフレ」はまだです。また機会があったら論じます。
鈴木康夫さま
あたたかいコメントありがとうございました。
cruさま
現在の石油価格を前提にした上での「経済的効率性」という指標は、生態的な最適性とはもちろん乖離しますし、じつはエネルギー効率も非常に悪いという点が大問題だと思います。
こば☆ふみ様
もうオヴニル1さんとの議論はやめることにします。正直、疲れました。
そもそも、自由貿易が経済的利益をもたらすという理論的根拠がないですね。以下のエントリで書いていますが、リカードの比較生産費説は比較優位に基づく国際的分業が経済的利益をもたらすというものですが、自由貿易が比較優位に基づく国際的分業につながるかどうかは別の問題です。自由貿易信者には、まず自由貿易が経済的利益をもたらすという理論的根拠を挙げてもらう必要があると思います。
オヴニル1さんには、ぜひとも、以下のエントリにコメントなりトラックバックで理論的根拠を挙げて貰いたいですが。
http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/20051118/p1
http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/20051223/p1
ええ,その通りですよ.
だから私は散々,国ごとに個別の事情があるから,自由貿易という世界的傾向に乗っかりつつ,国別に独自の判断で対応するのが最適な策だと述べてきましたが?
その過程で,指導力の期待できない国連に頼るのは現実的ではない.現状の枠組みで十分と述べてきましたが?
これは前エントリーでの南米の件で何度も言いましたよ?
>中国の農業自由化が、中国の事情にあっていないのです。だから私は、関税引き上げも含めて、しかるべき農業保護政策が必要だと書いたのに、あなたが食ってかかってきたのです。
農業保護政策はとっくの昔に行なわれています.税の軽減,農業資材への補助が行なわれてますよ?
現実問題として,農村は仮にかつて関税であっても貧乏な状態です.現在の中国の地方は,貧乏にはなっていません,都市に比べての"相対的貧乏"になっただけです.それが農民の都市流入の原因でしょう.
中国が強烈な勢いで農産品の輸出,土地生産性が異常に高くない限り,農民の都市流入は避けられないでしょうね.
関税云々以前に,工業化が進む以上農民の都市流入は避けられない.なら,労働生産性を高めるための大規模化・効率化をした方がマシだということです.
>さて、私はこれ以上不毛な議論をしたくありません。不愉快きわまりないので、これをもって議論を打ち切らせていただきます。
そりゃ不毛になりますね.
あなたは,私を「自由経済礼賛者」という前提で話をしていましたが,そうではなかった.
"幻の私"に対して反論(シャドーボクシング)しているのであれば,話がかみ合うはずありません.