代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

選挙後に最も恐れるべきこと ―改憲の真の狙いは緊急事態条項

2017年10月10日 | 政治経済(日本)
 本日、自民、立憲民主、希望の候補が立候補している東京のある選挙区を通った。立憲民主の候補者の第一声には200人くらい集まり、大いに盛り上がったとのことだった。
 それに対し、希望からは旧民進党時代の仲間が、落下傘の刺客候補として他県から送りこまれている。希望の候補者ご本人がビラを撒いているのを見かけたが、通行人が避けるようにして通っていて、ビラをもらう人もあまりいない様子だった。立憲民主の盛り上がり方と対照的な様子だ。
 踏み絵を踏まされたあげく、自分の本来の地盤からも遠く離されて、落下傘候補として舞い降りたのでは、地元の人から共感してもらえないのも当然であろう。

 立憲民主の支持者の方曰く、「本人も当選できるなんて思ってはいないでしょうけど、〇〇さん(立憲民主)の票を少しでも減らして、自民党を当選させればそれでよいのでしょう」と。
 立憲民主の選挙区に送り込まれた刺客とは、自民に勝たせることのみが使命なのか? しかし、曲がりなりにも旧民主党だった方々が、そのような役割を背負わされて、自分が惨めにならないのだろうか? それにしても、ちょっとかわいそうに思えてしまった。今回の刺客騒動はシャレにもならない。悲劇である。

 さて、立憲民主、共産、社民の「第3極」が善戦したとして70~80議席ぐらいだろうか。
反自民の無所属候補が20くらい取ったとしてもまだ100がせいぜい。改憲発議を阻止するための、3分の1の156議席には遠く及びそうもない。選挙後に希望が分解し、議員の半分くらいが第3極に合流したとしても、まだ足りないのではないか。
 
 ということは、国会で改憲発議を阻止することは難しいと考えた方がよい。国民投票にまで持ち込まれることを想定し、正々堂々と国民投票で阻止する覚悟が必要だろう。

 これを言うと怒られるかも知れないが、私は憲法9条に自衛隊を明記するという問題は、それほど大きな問題とは思えない。安倍改憲で最も問題にせねばならないのは、緊急事態条項の導入だろう。9条改正の問題に目を奪われ、そこが争点にされている間に、ドサクサに紛れて緊急時代条項まで盛り込まれてしまうことが、最も恐るべきシナリオである。緊急事態条項とは、まさに麻生太郎の言う、「あのナチスに手口に学んだらどうかね」のナチスの手口そのものなのだ。

 IWJの岩上安身さんが、民進党の代表選のとき、枝野さんと前原に行った以下のインタビュー記録は必読である。いまは立憲民主党の代表になった枝野さんは、民進の代表選のときから、「『緊急事態条項』はそれこそ論外。政府が『緊急事態』と言ったら、憲法の縛りなく何でもできるようにすると」「まさにナチスがこれをやったんです」と答えておられる。
 
 それに対し前原は、自民党の改憲案を読んでもいないし、緊急事態条項の問題点も、岩上さんに問われるまで何の認識していなかった。こんなアホで二枚舌な政治家が何人集まってもゼロと同じである。国民のためには何の役にも立たない。
 以下の記事をぜひ参照されたい。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/399880
  



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2 コメント

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ネオリベ・ファシズムに対するリベラル・ルネサンスの出現の意義について。 ( 睡り葦 )
2017-10-15 23:35:43

 軍隊の社会的共通資本化、米国軍産複合体の社会的共通資本化、軍需産業の社会的共通資本化・・・と、関さんが提起されたイノヴェーションの問題に触発されて堂々めぐりをしておりますうちに、米軍産系改憲勢力の今次選挙圧勝プロパガンダが突如始まって足もとを掬われてしまいました。

 浮き足立ちながら考えておりましたポイントは、また後刻に報告いたしますが、米系軍産複合体と米国金融資本主義は長期的凋落を深めており、それがゆえの彼らの焦りと、不測の暴発のおそれ、それによる世界の全面的破壊を防ぐためには、軍産の社会的共通資本化の必要性に迫られる、というようなことを考えようとしておりました。

 そこに米軍産系改憲勢力の今次選挙勝利による緊急事態条項の改憲導入という関さんのアラートが鳴り、自民党憲法草案の第九八条と第九九条の文言を、すみません初めて見て、あっけにとられました。
 これは民衆が政治的存在として認識されていなかった古代国家へのほとんど逆戻りと言うべきものであると思えます。
 この草案をつくった人たちは、国民を物理経済的存在のみとしてとらえ、あえて言えば家畜と考えています。

 おそらく明治維新以前からの長州マインドということなのでしょうが、リベラルな近代法治主義政治の素養や認識がまるでない土侯的感覚そのまま、法律はすべて自分たちが自分たちのために自由勝手につくるものであるという絶対支配意識を素直にこねあげたものとなっています。

 議員改選を停止されて国民のチェックが届かなくなった議会は緊急事態における内閣の専権支配に対してただ翼賛追認のみとなり、他方で司法の牽制チェックと国民の抵抗権がまったく顧みられてはおらず、憲法の停止による内閣の無制限の「立法」と財政支出によってあらゆることができるわけで、戦前のように、デモどころか官製集会以外すべてを禁止したり、日本共産党や社民党を非合法にすることができるわけです。

 2016年05月08日の朝日新聞WEBRONZAにおける木村草太教授と礒崎陽輔氏(自民党憲法改正推進本部副本部長)との対談において、磯崎氏は、この草案は自民党の国会議員の議論によりつくられたものであり、法制的な問題を残している、あくまで「自民党としての目標」を示したもので、最終的に煮詰められた改憲提案ではない、という趣旨のことを述べています。
 すなわち、これは自民党の飾らない本音であると。自民党のファシズム集団への完璧な変質という事態はおそるべきことになっているとあらためて認識いたしました。

 緊急事態条項の改憲導入は、あきらかに法律レベルで対処すべき大規模自然災害はともかく、あきらかに対外戦争と内乱とを想定したものです。大規模自然災害を入れるのは、その機に乗じて起きる「間接侵略」や「反乱」を防止するためのものであろうと思います。

 米国軍産複合体による「有事」の全面参戦、総力戦体制の準備の指示があろうことは明らかでしょうが、同時に自公改憲勢力は国民大衆の批判反発を「反国家思想及び行為=革命内乱」と見なして、強権で予防弾圧することに踏み出そうとしているわけです。
 安保法制の成立によって米国からの改憲要請はなくなった旨を昨年アベ氏から聞いたと、田原総一朗氏が10月13日に外国特派員協会で語ったとのことですが、国民民衆の反発批判に対する恐怖は、国民主権を政治的、経済的、文化的に認めることができない日本の政治支配層グループ=自公維新希望から消えることはないと思います。彼らなりに危機感に駆られてヒステリックにすらなっていると観察します。

 しかし、支配層の最強力のヘゲモニー装置であるマスメディアと御用世論調査業者が、関さんが指摘されるように、50%の投票率のもとでの三割獲得、つまり有権者の15%を固める(= 実質的に買収する)ことによって改憲勢力が圧勝するというプロパガンダを公示直後から一斉に叫び、それによる目を蔽うような獲得議席予想を流すというのはなぜなのでしょうか。
 アベ氏に対する否定の風潮が津波のようになることを防ぐためか、あるいは投票集計結果をその線でアラインメントするためなのか。しかし、アベ氏の行動を見るとなにかがおかしいと言いますか変調を来しています。
 ヤマグチのアベ氏選挙区の状況、異様な第一声シチュエーション、「国難」というニックネームが定着したこと、強敵になるだろうの野党共闘をみごとに粉砕して自公と二元対立の構図をつくるはずだったユリコ&マエハラ希望の想定外に早い墜落・・・

 ともあれ、自民政治の直接的受益者であった公共建設業界は別格として、先般のエコノミスト誌特集の基調にあらわれるように、株式会社による企業社会である日本は否応なく資本主義がデ・ファクト・スタンダードになります。
 支配するものの思想が支配的思想になるのは当然であり、そこに「資本主義=自民党政治」というお約束が基本的にそこに含まれてきたのだろうと思います。

 世論調査はこちらを特定して電話をしてくるわけで、いまの内閣はやはり納得できないということはともかく、自民党以外の政党を支持する、たとえば社会民主党を支持する、日本共産党を支持するというのは、すなわち資本主義を否定することになり、企業や官公署に関連する人はこわくて口に出すことはできないだろうと思います。
 世論調査とは思想調査であり、世論誘導のための支配層の脅迫的武器であるわけです。

 そこにユリコ&マエハラ謀略の思わぬ鬼子として突然巻き起こった、明治期保守リベラルの自由民権政党「立憲改進党」ばりのアンティーク・ネームの「立憲民主党」による旋風、この意義は非常に大きいのではないかと思います。
 いま、二一世紀の自民党はすでに近代資本主義のための政党ではないという認識をひろく確立する必要があります。
 アベノミクスは極端で病的、ある意味で極左的な破滅的経済政策であることをねばりづよくアピールすることが、きわめて効果的ではないかと思います。

 つまり、ネオリベラルという名のもとでガン化し、ファシズムに対応するものになったアベノミクス似非資本主義に対して、近代的保守リベラルの資本主義のルネサンスをおこなうべきではないでしょうか。日本共産党が景気回復と成長を訴えているのを知って目を瞠り、なおさらそう思うようになりました。

 支配者に愛されることのない国民である日本の大多数の大衆は言いようがないほどみじめだと思います。愛されようとは思っていない私自身を含めて。
 むろん国民に愛されない支配者は、ナポレオンやヒトラーのようにそれなりに熱狂を湧き起こす独裁者の名にすら値せず、真の意味でどこまでもみじめではありますけれど。

 それはそれとして、不思議なことですが、いま関さんのうしろでクリオがしずかに微笑みを見せつつあるように思います。
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クローニー(縁故)ファシズムは、国民大衆のみならずビジネス(企業)を苦境に追いやるもの。 ( 睡り葦 )
2017-10-21 00:53:49

 関さん、10月07日付けの記事へのMr.T氏コメントに対する10月15日のコメント・バックおよび10月19日の御記事におけるCSISに関する冷静なご指摘ありがとうございました。彼らは見えなくなっていますね。とうとう時代に追い抜かれているのではないかと思います。

 先の投稿コメントのタイトルを「ネオリベ・ファシズム」といたしまして何となくおちつかぬ思いでおりました。が、この間に不意に露呈して今次の強引かつ手前勝手な衆院解散の決定的な動因になった「モリ・カケ」問題と、伊藤詩織さんに対する一連の非道陋劣な仕打ちから、アベ・ファシズムは、低劣な「クローニー(縁故)ファシズム」と呼ぶべきかと思いつきました。

 10月のロイター企業調査が、2017年10月18日の「衆院選は与党議席減で政権維持を、財政再建が課題」というタイトルのロイター記事となっております。
 資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に9月28日〜10月12日に実施し、回答社数は六割の240社程度だったとのことです。

 結果は「与党政権の継続を望む回答が9割超を占めた。ただ、議席数については『過半数は維持しても3分の2は維持できない』結果が望ましいとの回答が48%と最も多く、『過半数割れ』の6%と合わせ、5割超の企業が与党で3分の2を割り込むことが望ましいと答えた」とのこと。

 ロイターのこの種のアンケートですと、企業のいわゆる広報部門ではなく、経営陣の考え方をより深く「忖度」できるIR部門や経営スタッフ部門が回答を担当した企業が多いのではないかと想像します。すわ戦争だ内乱だと緊急事態条項に走ろうとする政治を望むのはごく一部の特殊な業界だけであり、アベ政治の「クローニー(縁故)ファシズム」は、ビジネス環境と社会を破壊するものであるという危機感があらわれているといえるのではないでしょうか。

 驚いてはいけないのでしょうが、「安倍首相の政権運営は目先のスローガンの架け替えだけの目くらまし。退任することが望ましい」(機械関連企業)、「首相の信頼感は元には戻らない」(サービス関連企業)、「問題視されている案件に謙虚に対応してもらう意味で、この程度(3分の2割れ)の議席数が望ましい」(精密機器関連企業)というコメントがあったとロイターの中川泉記者がつたえています。

 アンケート回答担当部門が、自分の一存で具体的なコメントをするとは考えにくいですから、このような趣旨のことを経営トップが社内で口にしているのではなかろうかと想像します。

 「アベノファシズム」が異常なのではなく、いまや自民党自体がまっとうな経済的自由主義としての資本主義をになう政党ではなくなっていること。それを自民党憲法草案が示していること。このことが、今次選挙の結果が如何に強引なことになろうと、ありうる改憲国民投票を前にして、企業人を含めて多くの人々に知れわたってゆくであろうと期待しますし、そうでなければならないと思います。

 自民党憲法草案の本質を示す、SFミステリー作家である津原泰水氏の非常に面白く鋭いツィートを紹介させてください:

 伊藤公紀@Itoh_Kiminori 伊藤公紀さんがリツイート
 津原泰水‏ @tsuharayasumi 10月16日
 自民党改憲草案に目を通した、いちおう日本語のプロとして同案への見解を述べておくと、あれは彼らの、全身全霊、渾身の力作に違いありません。無駄な麗句、論理破綻、自己陶酔臭、世の中を舐めた態度など、投稿者が落選に対して猛烈に抗議してくる公募小説の特徴を、ほとんど備えている。

 ・・・と。自民党の渾身の作品である「自民党憲法草案」を最低のレヴェルのものとして、彼らの猛烈な怒号を排してあえなく落選させなければなりません。「DQN化した」自民党に資本主義はまかせられないと。
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