国交省が霞ヶ浦導水事業を盛り込んだ利根川・江戸川の河川整備計画の変更原案を出してきて、本日がパブリックコメントの締切日だった。私は以下のような意見書を国交省に送りました。全文公開します。
※ 利根川・江戸川河川整備計画の変更原案については以下のサイト参照。
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000271.html
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【意見1】(全般に関して)
今回の整備計画の変更は、かなり重要な論点をいくつも含むものです。このような重要な変更が「整備計画」に、なし崩し的に付加されていくことは、河川法第16条の理念を損ないます。河川法にある住民参加のプロセスを取り入れ、公聴会などを開いて住民の意見を聞くべきです。また有識者会議もあわせて開くべきです。
2013年の利根川・江戸川有識者会議の折、大熊孝委員と私は、鬼怒川・小貝川のような支川も含めて利根川水系全体で調整しながら同時に策定すべきであるにも関わらず、なぜ利根川・江戸川の本川ばかり優先して、支川を後回しにするのかと重ねて質問書を出した。結局、国交省関東地整からは何ら回答のないまま、2013年3月に有識者会議を打ち切られてしまいました。今回、鬼怒川においてこれだけ大きな災害を経験したのですから、その点をしっかり反省し、鬼怒川・小貝川の河川整備計画に全力を傾けるべきでしょう。であるにも拘わらず、利根川本川の河川整備計画の変更案が出てきて、しかもその内容が全く不要な霞ヶ浦導水とは、国民感情として理解不能です。
【意見2】「(2)霞ケ浦導水」の記述を全文削除することを要望します。
(5章 61~62頁 霞ケ浦導水事業に関して)
霞ヶ浦導水の名目は首都圏での工業用水や水道用水の確保となっていますが、首都圏の水需要は年々減少して水余りになっており、不要な利水事業であることは言うまでもありません。水余りにより過剰になった設備をダウンサイジングしていくことが今後大きな課題となるというのに、この期に及んで不要な利水施設を追加建設するなど言語道断であると言わざるを得ません。一般の納税者には到底、納得できる話ではありません。
利根川水系にとって喫緊の課題は他にあります。本年度の鬼怒川水害によって、計画高水以下の洪水によっても破堤してしまうような脆弱な堤防が利根川水系にあまた存在することが明らかになりました。導水路以前に、まずはこうした堤防の強化こそが最優先で行われなければなりません。この課題に直面しているにも関わらず、霞ケ浦導水事業のような不要な事業に何百億円もの血税を投入していくことは、社会通念に照らして許されません。不要な新規利水事業は当面凍結した上で、脆弱な堤防の強化のためにその予算を転用するようお願いいたします。
【意見3】住民参加とボトムアップ形式でのリスク情報の収集を
(5章 (8) 地域防災力の向上に関して 79頁 6行から9行目の修正)
5章(8)「地域防災力の向上」の中に、新しく10)災害リスクの評価、災害リスク情報の共有、11)円滑な避難のための対策、12)災害リスクを考慮した減災対策の推進、の三項目が入りました。この三項目の追加については基本的に評価したいいと存じます。
ただ、10)の「災害リスクの評価と共有」に関して、国が災害リスクを想定し、浸水想定を地域住民と共有するとあります。これのみですと、お上が最大想定浸水図を作成し、住民に一方的に知らせるという従来型のトップダウン行政の延長になりかねません。「災害リスク情報の共有」とは、行政と住民とが双方向でリスク情報を交換し、対話を重ねながらリスクに備える心構え共につくっていくことだと思います。
今回の鬼怒川水害においても、自然砂丘が削られたことに対する災害リスクを、地元住民がいちばん心配し、常総市議会を通して築堤を要望していたと聞きます。しかし本格的な築堤の要望は放置されていたと、溢水被害を受けた地元の住民の方々から聞きました。
身近にある災害リスクについては、行政よりも住民の方が敏感に感じとる場合があります。トップダウンの情報提供のみならず、ボトムアップによるリスク情報の収集も盛り込んでいただきたく存じます。
そこで、79頁の6行目から9行目を以下のように修正するよう要望させていただきます。
【原文】このため、単一の規模の洪水だけでなく想定し得る最大規模までの様々な規模の洪水等の浸水想定を作成し、提示するとともに、床上浸水の発生頻度や人命に関わるリスクの有無など災害リスクを評価し、地方公共団体、企業及び住民等と災害リスク情報の共有を図る。
【修正案(下線部)】このため、単一の規模の洪水だけでなく想定し得る最大規模までの様々な規模の洪水等の浸水想定を作成し、提示するとともに、住民からも災害リスク情報を収集し、床上浸水の発生頻度や人命に関わるリスクの有無など災害リスクを評価し、地方公共団体、企業及び住民等と双方向で災害リスク情報の共有を図る。