本日(2011年6月12日)の東京新聞「こちら特報部」の記事で、八ッ場ダム建設の根拠となる利根川の洪水流量の再計算をしてきた日本学術会議が、国交省の計算を追認すると共に、緑のダム効果に否定的な結論を出したと報じられています。
事態は八ッ場ダムを建設するのか否かという次元を超えた問題に発展してきたようです。
今から400年前、地動説を主張したガリレオ・ガリレイが宗教裁判にかけられ自説を撤回させられた事件がありました。この件はそれに類するような様相を帯びてきたと言ってよいでしょう。つまり、権力が介入して科学的事実を捻じ曲げているのです。「八ッ場ダムを造る/造らない」の問題を超えて、ぜひ多くの皆様の関心を呼びかけたいと思います。
本日の東京新聞の記事には私のコメントも引用されています。ご参照ください。
私のコメントは以下のようなものです。学術会議が自ら行った計算結果を見ても、森林の保水力の向上により洪水流量が低減してきたことが読み取れる。ゆえに日本学術会議は「計算結果に忠実に結論を導くべきである」というものです。
この点、もう少し詳しく解説します。以下の二つの図は日本学術会議の基本高水検討分科会が、去る6月8日に行われた第9回分科会で提出した「資料8」に掲載されているものです。
図4は利根川上流にハゲ山の多かった1959年の洪水の計算値と実測値、図6は同じ植生条件と仮定したパラメータによる分布型モデルでの1998年洪水の計算値と実測値です。点線が計算値で実線が実測値です。棒グラフは降雨量の実測値です。
もし森林保水力の向上による緑のダム効果があるのなら、森林の回復につれて実測値は計算値に比べて低下していくはずなのです。この図を比べると、実際にそうなっています。1959年には計算ピーク流量よりも実測ピーク流量が18%ほど大きいのですが、1998年には実測値は計算値よりも13%ほど低下しています。これは森林保水力の上昇を何よりも雄弁に物語っています。この学術会議の計算結果は、私が森林保水力の向上を実証するものとして東京高裁に提出した意見書と同様のものです。
しかしながら日本学術の結論は、私の結論とは180度反対の以下のようなものでした。同「資料9 回答骨子2(案)」よりいくつか引用いたします。
***日本学術会議、河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会6月8日配布「資料9」より引用***
「森林が成長するとともに、土壌の厚さや貯留機能が長い年月をかけて原生林の時の状態に移行してゆくと推定されるが、洪水流量が小さくなったことを確認できる結果は、これまで得られていない」
「山地森林地帯での植生や土壌の治水上問題となるような大出水への影響では、蒸発散量変化は流出に明確に影響する洪水ピークへの影響は小さく、土壌の影響は確かに大出水の洪水ピークに影響する可能性があるが数十年の放置での土壌発達はわずかである。よって、大出水を予測する場合、戦後から現在までの森林成長によって、少なくとも大きな出水を対象として、流出モデルのパラメータの値を変更する必要はないと判断する。」
***引用終わり****
驚くべき結論です。事は八ッ場建設の是非を超えた重大問題であることが分かろうかと存じます。官僚たちの都合に合うように、計算結果とは異なる結論が強引に導かれているのです。
心ある多くの人々の注目を呼び掛けます。この間、官業学に配置された原子力村の利権構造が問題にされてきました。この問題も同様の構造を持っています。近代の科学的精神と民主主義に対する官僚組織の挑戦と言ってもよいかも知れません。
事態は八ッ場ダムを建設するのか否かという次元を超えた問題に発展してきたようです。
今から400年前、地動説を主張したガリレオ・ガリレイが宗教裁判にかけられ自説を撤回させられた事件がありました。この件はそれに類するような様相を帯びてきたと言ってよいでしょう。つまり、権力が介入して科学的事実を捻じ曲げているのです。「八ッ場ダムを造る/造らない」の問題を超えて、ぜひ多くの皆様の関心を呼びかけたいと思います。
本日の東京新聞の記事には私のコメントも引用されています。ご参照ください。
私のコメントは以下のようなものです。学術会議が自ら行った計算結果を見ても、森林の保水力の向上により洪水流量が低減してきたことが読み取れる。ゆえに日本学術会議は「計算結果に忠実に結論を導くべきである」というものです。
この点、もう少し詳しく解説します。以下の二つの図は日本学術会議の基本高水検討分科会が、去る6月8日に行われた第9回分科会で提出した「資料8」に掲載されているものです。
図4は利根川上流にハゲ山の多かった1959年の洪水の計算値と実測値、図6は同じ植生条件と仮定したパラメータによる分布型モデルでの1998年洪水の計算値と実測値です。点線が計算値で実線が実測値です。棒グラフは降雨量の実測値です。
もし森林保水力の向上による緑のダム効果があるのなら、森林の回復につれて実測値は計算値に比べて低下していくはずなのです。この図を比べると、実際にそうなっています。1959年には計算ピーク流量よりも実測ピーク流量が18%ほど大きいのですが、1998年には実測値は計算値よりも13%ほど低下しています。これは森林保水力の上昇を何よりも雄弁に物語っています。この学術会議の計算結果は、私が森林保水力の向上を実証するものとして東京高裁に提出した意見書と同様のものです。
しかしながら日本学術の結論は、私の結論とは180度反対の以下のようなものでした。同「資料9 回答骨子2(案)」よりいくつか引用いたします。
***日本学術会議、河川流出モデル・基本高水評価検討等分科会6月8日配布「資料9」より引用***
「森林が成長するとともに、土壌の厚さや貯留機能が長い年月をかけて原生林の時の状態に移行してゆくと推定されるが、洪水流量が小さくなったことを確認できる結果は、これまで得られていない」
「山地森林地帯での植生や土壌の治水上問題となるような大出水への影響では、蒸発散量変化は流出に明確に影響する洪水ピークへの影響は小さく、土壌の影響は確かに大出水の洪水ピークに影響する可能性があるが数十年の放置での土壌発達はわずかである。よって、大出水を予測する場合、戦後から現在までの森林成長によって、少なくとも大きな出水を対象として、流出モデルのパラメータの値を変更する必要はないと判断する。」
***引用終わり****
驚くべき結論です。事は八ッ場建設の是非を超えた重大問題であることが分かろうかと存じます。官僚たちの都合に合うように、計算結果とは異なる結論が強引に導かれているのです。
心ある多くの人々の注目を呼び掛けます。この間、官業学に配置された原子力村の利権構造が問題にされてきました。この問題も同様の構造を持っています。近代の科学的精神と民主主義に対する官僚組織の挑戦と言ってもよいかも知れません。
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-14fe.html
もうこの国の沈没は不可避なのでしょうか・・・・・・。
それにしても、先の日本学術会議の「ピーク流量の低減効果は大きくは期待できない」にしろ「大洪水においては顕著な効果は期待できない」にしろ、今回の分科会の結論「土壌の影響は確かに大出水の洪水ピークに影響する可能性があるが数十年の放置での土壌発達はわずかである」にせよ、ひどい文章ですね。およそ科学者の書く文章ではありません。
「大きくは期待できない」「顕著な効果は期待できない」「土壌の発達はわずかである」・・・万事数値抜き。憶測、推測、単なるダム派の希望的観測にすぎません。
私は、利根川の戦後の森林の成長で洪水時のピーク流量は15~25%程度は減っていると主張しています。はたして10%や20%という数字は、「顕著」なのでしょうか、それとも「わずか」なのでしょうか。
私に言わせれば顕著なのですが、彼らに言わせれば「わずか」になるのでしょうか? あまりに曖昧な表現であきれ返ります。
結局、はっきりと緑のダムを否定したいが、否定できないから、曖昧な表現で逃げているだけですね。やれやれ・・・・。